David Hockney. My Window/デイヴィット・ホックニーのiPhone・iPadドローイング最新作品集

アートコンシェルジュ一押しアーティストの作品集をご紹介

1937年イギリス生まれのアーティスト デイヴィッド・ホックニーは60年代から若手のポップアーティストとして台頭し、当時から丸い眼鏡にチェックやストライプのシャツ、カラフルなネクタイといったチャーミングなスタイルで活動してきました。
そんなホックニーもついに80歳を超える高齢になったわけですが、現在もなお旺盛に制作活動を続けており、その最新作品集として先日発売となったのが、この『David Hockney. My Window』です。


ホックニーは時代に応じて様々な表現方法を研究してきたことで知られており、有名になったロサンゼルス時代の開放的な印象のスイミングプールのような絵画作品の他にも、写真でキュビズムを表現したフォトコラージュ、コピー機の複製機能を利用した版画、舞台装置のデザインなど新しいツールや考え方を柔軟に積極的に取り入れて自分流にしてしまいます。

iPhoneを使ったドローイングを初めて完成させたのは2009年の72歳の春で、その後より大きな画面のiPadを使い始め、さらに複雑な色・線・光の表現が可能になりました。

『David Hockney. My Window』には、2009年〜2012年にかけて制作された120のiPhone・iPadドローイング作品が収録されていますが、そのどれもがデジタルのドローイングでありながら、無味乾燥な表現ではなく豊かな抒情性を感じさせます。
 
この作品集の中では窓辺に置かれた植物やそこから見える外の風景といったものが描かれていますが、親しい友人や家族、ビジネスパートナーなどをモデルにその変化を長期間に渡って描き続けたポートレートシリーズや故郷ヨークシャーの自然を描いた他のシリーズなどからもわかるように、対象を見つめ続けるあたたかい視点と実験精神があってこその豊かな表現になっているのです。

色とりどりの朝焼け、薄紫色の朝の空、夜間の印象から春の訪れまで、刻一刻と変化する瞬間のイメージの中で、窓ガラスの水滴、夜遠くに見える光、ボトルやグラスの反射、様々な植物が活けられている花瓶の豊かな表情など心奪われる細部の出来事をいくつも発見することができます。
 

この作品集を発行したのはドイツの有名なアートブックの出版社であるTaschenで、その社長もホックニーのポートレート作品にモデルとして登場するなど以前から親交がある中で、2016年に出版された「David Hockney. A Bigger Book/デイヴィッド・ホックニーのSUMO BOOK」に続いてのコラボレーションとなりました。

全世界で1000部のみのコレクターズエディションにはその全てにサインが入っていて、作品の世界観を引き立てる薄いピンクのBOXケースに入った様子はまるでアート作品のようです。
 
ぜひ手元に置いておきたい1冊です。
 

 
アートコンシェルジュ
森田ゆう奈

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