【第381回】間室道子の本棚 『プレゼント』伊坂幸太郎 江國香織 恩田陸 梨木香歩 町田そのこ 宮部みゆき 米澤穂信/新潮文庫

「元祖カリスマ書店員」として知られ、雑誌やTVなどさまざまなメディアで本をおススメする、代官山 蔦屋書店 文学担当コンシェルジュ・間室道子。
本連載では、当店きっての人気コンシェルジュである彼女の、頭の中にある"本棚"を覗きます。
本人のコメントと共にお楽しみください。
 
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『プレゼント』
伊坂幸太郎 江國香織 恩田陸 梨木香歩 町田そのこ 宮部みゆき 米澤穂信/新潮文庫
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新潮社が毎年夏休みの読書向けに企画している「新潮文庫の100冊」が50周年を迎えるのを記念し、人気作家が夏をテーマに書き下したアンソロジー。

本のタイトルが『プレゼント』であるのがいいなと思う。名うての七人の、まだどこにも見せてない短編・・・。もし入札だったら各社金策に走るであろうし、原稿争奪殺人事件に発展してもフシギじゃない。というわけで本書はまず、依頼を引き受けた時点で作家たちから新潮社へのお祝い品の意味合いがあると思う。

さらに新潮さんはこれを文庫で出しオロシ。「100冊」の50年記念なんだから当然と思う方も多いでしょうが、このメンツのこの内容、急に心変わりしてハードカバー2950円で出してもフシギじゃない。それをこらえてちゃんと文庫化。読者へのおくりもの、というココロイキを感じる。

おすすめは伊坂幸太郎さんの、ホテルを舞台にした「ウッドペッカー荘」。

名前から温泉?民宿?カジュアル?と読者はイメージするでありましょうし、じっさい語り手である青年・尊(そん)くんはそう予想していた。だが森の奥深くに出現したその建物は巨大な直方体で、人間のスタッフは最小限。AIコンシェルジュ、案内ロボット、最新のカメラ、センサーなど、超テクノロジーで管理されている。尊くんの隣には、ここを予約した名探偵・白河ヨフネ。そしてもうひとり、ある男がやってくる・・・。

ラストで読者はやみくもに叫びたくなるだろう。「おきろー」。

おきろおきろおきろおきろおきろ!そう、通常の小説は、作者の考えた結末発表で終わるが、伊坂作品はそのあと猛然とわきおこる読み手のリアクションが醍醐味。物語は終わった、さあ、読者の出番だ、というわけである。

このままではいられないぞ、という心の悲鳴。このあとどうか、明るいほうへ、と身をよじるほど願う。それが本作でもいかんなく発動しちゃう。ああ、伊坂作品を読んだな!という満足感。伊坂さんはこれが初読書だよ、という人にはザッツ・イサカ!としらしめる読み味。

「読んでハッピー!」な話ばかりではない。令和日本の社会問題を源にすえた一編もあるし、善のためにタブーを犯す人は善なのかをつきつけるお話もある。でも誰もがその人らしいカラーで、”いま・ここ”の豪腕をふるっている。

これはまちがいなく、七人の書き手からわれわれへのプレゼントだ。
 
 
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代官山 蔦屋書店 文学担当コンシェルジュ
間 室  道 子
 
【プロフィール】
ラジオ、TVなどさまざまなメディアで本をおススメする「元祖カリスマ書店員」。雑誌『Precious』に連載を持つ。書評家としても活動中で、文庫解説に『蒼ざめた馬』(アガサ・クリスティー/ハヤカワクリスティー文庫)、『母性』(湊かなえ/新潮文庫)、『蛇行する月』(桜木紫乃/双葉文庫)、『スタフ staph』(道尾秀介/文春文庫) 、『プルースト効果の実験と結果』(佐々木愛/文春文庫)などがある。

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