【第390回】間室道子の本棚 『ゴーストの継承』上條一輝/東京創元社
「元祖カリスマ書店員」として知られ、雑誌やTVなどさまざまなメディアで本をおススメする、代官山 蔦屋書店 文学担当コンシェルジュ・間室道子。
本連載では、当店きっての人気コンシェルジュである彼女の、頭の中にある"本棚"を覗きます。
本人のコメントと共にお楽しみください。
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『ゴーストの継承』
上條一輝/東京創元社
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映画宣伝会社の上司・芦屋晴子のプライベートYouTubeチャンネル「あしや超常現象調査」にスカウトされた若手の越野草太。180センチ近い長身でオーラ出まくりの彼女と、存在感薄めの越野のデコボココンビが活躍する完結編が本書である。第一弾はテレパス、第二弾はポルタ―ガイスト。最後のテーマは「ゴースト」だ。
わたしは元来、シリーズものはその巻だけ読んでもイケるのが望ましいと思っている。 でもこの欄377回の恩田陸さんの『傾斜のマリア』評で書いたように、上條一輝さんの本作も、できたらマストで、1作目の『深淵のテレパス』と第2作 『ポルターガイストの囚人』を読んでほしい。「でないとストーリーが理解できないから」ではない。『ゴースト』だけでもお話はわかる。でも怪異と登場人物たちが織りなす関係性の仕上げが本書なのだ。そういう意味では、シリーズの味わいをまとめあげるのは、作者・上條さん以上に読み手のわれわれともいえる。
舞台は品川にある廃業したホテル。そこに『ポルタ―ガイストの囚人』で起きた「関東集団ヒステリー事件」の後遺症に苦しむ人々が集まり共同生活をしている。で、中の誰かが「あしや超常現象調査」にメールを寄越した。「ホテルに幽霊が出る。調査に来ていただけないでしょうか」。
この依頼を皮切りに、シリーズ総決算の超常現象が噴出する。
「関東集団ヒステリー事件被害者の会」の実態と変容、会員のひとりがこっそりやらされている作業、晴子にねちっこく絡んでくる「オカルト界隈ウォッチャー」だという男、その不可解な死。容疑者はなんと晴子!
なにせ現場は気絶した彼女と絶命した男しかいない密室だったのだ。晴子の犯行でないなら、目に見えないもののしわざだとでも?たとえば、そう、ゴースト。
プルーフの宣伝文によれば、もともと「三部作で締める」が頭に置かれていたそうで、それがうかがえるストーリーの練られぶり。『ゴースト』にはオールスターが勢ぞろいするが、「最後だから顔見世的に」ではない。みんな、あの時降りかかったもの、今も引きずられているものにオトシマエをつけるために出てきている。存在の回収性がすばらしい。
あと、わたしは「家族が後ろにある捜査もの」がじつはあまり好きでない。刑事さんは事件を、探偵は依頼を、毎回シンプルに追ってくれればいいのに、「彼/彼女が調査にこれほどのめりこむのは、実は数年前夫を殺した犯人を、行方不明中の母の手がかりを、兄の自殺の原因を、父の無実の証拠を、腕を磨いていつか見つけたいからなんです!」がつくと、とたんにサメる。でも、芦屋晴子が超常現象を集める裏には彼女の家族がいるけど愛とか復讐のためではないの。「だって晴子ってこうだから」という事実というか作用というか・・・。読んでのオタノシミ!
そして本作には、名前は出ていたけど姿が見えなかったアノ人が登場。「え、そういう人だったのか!」に、二重三重に読者はおどろくことになる。乞うご期待。
フィナーレにふさわしい出来上がり。すばらしいシリーズが生まれ、みごと完結した、という感動は、未来の読者に継承されていくだろう。
わたしは元来、シリーズものはその巻だけ読んでもイケるのが望ましいと思っている。 でもこの欄377回の恩田陸さんの『傾斜のマリア』評で書いたように、上條一輝さんの本作も、できたらマストで、1作目の『深淵のテレパス』と第2作 『ポルターガイストの囚人』を読んでほしい。「でないとストーリーが理解できないから」ではない。『ゴースト』だけでもお話はわかる。でも怪異と登場人物たちが織りなす関係性の仕上げが本書なのだ。そういう意味では、シリーズの味わいをまとめあげるのは、作者・上條さん以上に読み手のわれわれともいえる。
舞台は品川にある廃業したホテル。そこに『ポルタ―ガイストの囚人』で起きた「関東集団ヒステリー事件」の後遺症に苦しむ人々が集まり共同生活をしている。で、中の誰かが「あしや超常現象調査」にメールを寄越した。「ホテルに幽霊が出る。調査に来ていただけないでしょうか」。
この依頼を皮切りに、シリーズ総決算の超常現象が噴出する。
「関東集団ヒステリー事件被害者の会」の実態と変容、会員のひとりがこっそりやらされている作業、晴子にねちっこく絡んでくる「オカルト界隈ウォッチャー」だという男、その不可解な死。容疑者はなんと晴子!
なにせ現場は気絶した彼女と絶命した男しかいない密室だったのだ。晴子の犯行でないなら、目に見えないもののしわざだとでも?たとえば、そう、ゴースト。
プルーフの宣伝文によれば、もともと「三部作で締める」が頭に置かれていたそうで、それがうかがえるストーリーの練られぶり。『ゴースト』にはオールスターが勢ぞろいするが、「最後だから顔見世的に」ではない。みんな、あの時降りかかったもの、今も引きずられているものにオトシマエをつけるために出てきている。存在の回収性がすばらしい。
あと、わたしは「家族が後ろにある捜査もの」がじつはあまり好きでない。刑事さんは事件を、探偵は依頼を、毎回シンプルに追ってくれればいいのに、「彼/彼女が調査にこれほどのめりこむのは、実は数年前夫を殺した犯人を、行方不明中の母の手がかりを、兄の自殺の原因を、父の無実の証拠を、腕を磨いていつか見つけたいからなんです!」がつくと、とたんにサメる。でも、芦屋晴子が超常現象を集める裏には彼女の家族がいるけど愛とか復讐のためではないの。「だって晴子ってこうだから」という事実というか作用というか・・・。読んでのオタノシミ!
そして本作には、名前は出ていたけど姿が見えなかったアノ人が登場。「え、そういう人だったのか!」に、二重三重に読者はおどろくことになる。乞うご期待。
フィナーレにふさわしい出来上がり。すばらしいシリーズが生まれ、みごと完結した、という感動は、未来の読者に継承されていくだろう。

代官山 蔦屋書店 文学担当コンシェルジュ
間 室 道 子
【プロフィール】
ラジオ、TVなどさまざまなメディアで本をおススメする「元祖カリスマ書店員」。雑誌『Precious』に連載を持つ。書評家としても活動中で、文庫解説に『蒼ざめた馬』(アガサ・クリスティー/ハヤカワクリスティー文庫)、『母性』(湊かなえ/新潮文庫)、『蛇行する月』(桜木紫乃/双葉文庫)、『スタフ staph』(道尾秀介/文春文庫) 、『プルースト効果の実験と結果』(佐々木愛/文春文庫)などがある。
