及川の部屋Vol.2『ヨーロッパジャズの魅力』
さて、第2回はヨーロッパのジャズをご紹介しましょう。
実は代官山 蔦屋書店では、本場アメリカジャズ同様にヨーロッパ系のジャズが人気なんです。
私自身も、その美しさに魅了されるうちのひとり。
本場アメリカは当然ながらブラック色が強く、グルーヴィーでハイテンション、ジャズのインプロヴィゼーションの醍醐味を芸術性と大衆性の両面で表現します。
一方、ヨーロッパはクラシックの土壌から生まれたジャズとも言えるので、美しいメロディーとサウンドへの追求が感じられる曲が多いように思います。
そういった背景から、日本人にとって聴きやすく、馴染みやすい曲が多いのではないでしょうか。
私の考える"ヨーロッパジャズ"。
それは景色が聴こえてくるところ。
行ったことがなくても、聴きながら目を閉じれば、ヨーロッパの大地に広がる木々や景色が見えてくるような心地よさを感じます。
そこから広がる景色の妄想を、風船のように膨らませてくれる、それがヨーロッパのジャズ。そんなところでしょうか。
抒情的で印象的。
曲にはストーリーがあり、その音色は水彩画よりも力強く、油彩画よりも淡い絵画のよう。
気取らず、無理なく聴けて、想像力を解放してくれます。
ジャズって入り込みにくい。とか、何から聴いていいか分からない。そんな声をよく聞きますが、そういう方へこそおすすめしたいです。
ということで、今回選んだのはこちらの2枚。
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■スウェーデンのE.S.T(Esbjorn Svensson Trio)『Est Live』(左)
エスビョルン・スヴェンソン・トリオという、なかなか覚えにくいグループ名のこの3人組は、スウェーデン発のピアノトリオ。
彼らはジャズを基調としながらも、エレクトロニカやロックの要素を大胆に取り入れていて、全く新しい音楽世界を築いたといわれるほど、斬新な音楽を生み出しました。
こちらは90年代ジャズ・シーンを疾走し、2008年、スヴェンソンの事故死まで伝説を作り続けたピアノ・トリオのライヴ盤。
■イギリス発のジャズトリオ、GOGO PENGUIN 『MAN MADE OBJECT(マン・メイド・オブジェクト)』(右)
マンチェスター出身で、世界中から注目を集めている、アコースティック・エレクトロニカ・トリオ、ゴーゴーペンギン。
グループ名はなんともかわいらしいのですが、彼らの奏でる音楽は猛烈にかっこいい。
ジャズのテクニックに現代の要素を取り入れ、時代に合ったジャズを表現。
電子音を取り入れた進化系ジャズを産み出す彼らが、若者からの人気を誇る理由は、この斬新さにあるのだと思います。
名門ブルーノートからのメジャー・デビュー・アルバム。
このどちらの音楽も、時代に合っているし、型にはまらずいろんな形を作り出していておもしろいです。(共に代官山 蔦屋書店にてレンタル可。)
さて、イギリス、スウェーデンと2枚CDをご紹介して参りましたが、実はイタリアのジャズも今とてもアツいです。
クラッシックやオペラがもとから盛んであったイタリア。
代官山 蔦屋書店にもご来店いただいたことのあるロベルト・オルサーは、イタリアの新進気鋭のアーティスト。落ち着いた雰囲気の青年で、その内面の清らかさが音に表れているように感じます。
なんと彼は牧師の資格も持っているそう!
そのせいか、彼の奏でる抜群の、透明感溢れる深遠なサウンドが、多幸感をもたらしてくれる、そんな1枚がこちら。
■Robert Olzer Trio『THE MOON AND THE BONFIRES』(販売のみ)
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そして興味深いことに去年の暮れから、世間がしっかりとした音楽を追求し始める傾向にあります。
業界もいろいろな音楽を手当たり次第輩出していくやり方ではなく、厳選したきちんとしたものをつくろうという考え方になりつつあり、面白くなってきました。
これだけ情報があふれ、誰でも発信できるというなか、プロフェッショナルが創り出す音楽を求める人が増えてきたということでしょう。
上質な音楽に出会える機会が増えると思うと、わくわくします。
こっそり教えますのでぜひお声掛けくださいね。
ジャズを聴いてみたいけれど、どこから手を出したらいいのかよくわからない...
そんな方へ、代官山 JAZZ トークも開催しています。
そしてこのブログを通して、みなさんに少しでもジャズを知ってもらえたら大変嬉しく思います。
代官山 蔦屋書店 音楽フロア
ジャズ・コンシェルジュ
及川 亮子