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【クリエイターインタビュー】蔦屋書店×イラストレーター 粟津泰成「魂を揺さぶるアナログの力を信じたい」

蔦屋書店とゆかりがあるクリエイターやアーティストへインタビューする連載の第1回目は、氷室京介オフィシャルファンクラブの会報誌『KING SWING MAGAZINE』表紙や雑誌、CDジャケット等で活躍するイラストレーター・粟津泰成さん。
人物の何気ない表情や仕草からインスピレーションを受け、その感覚を大事にしたドローイングを展開している。
クリエイティブや、代官山 蔦屋書店での過ごし方などについて話を聞いた。

 



“その人らしさ”を描きたい


イラストレーター・粟津泰成さん

粟津さんがイラストレーターとして活動を始めたのは10年前。当時から変わらずに興味を持っているモチーフは“人”だ。
「昔から、人というものに興味があるんです。特に、隙があるような、決まりすぎていない人を描いてみたくなる。描き方や色彩などは、その人によって変えています」
色鮮やかな生命力にあふれた水彩画、静謐さを感じさせるモノクロ作品、水墨画のように躍動感を感じさせる作品まで、世界中の老若男女が多彩な作風で描かれる。
 
 
「Amy Winehouse」 「the monochromatic world」




なかでも今、興味を惹かれるモチーフは中高年の男性だという。粟津さんの作品は輪郭を描かずに色合いや濃淡だけで描きあげるものが多いが、「シワを描きすぎず、どのように省略して表現するかが面白いんです。高齢の方になるほど、年の重ね方や生き方がそこに現れますから」と話す。

粟津さんのパソコンには、写真集や『VOGUE』等のファッション雑誌、ネット等から「ピンときた写真」が数百枚とストックされている。カテゴライズは、「横顔」「全身」「黒人の女性」「中年男性」、さらには身体や顔の角度、仕草……etc. 細やかな視点から、人の表面的な美しさや格好良さだけではなく、生き様も含めて描き込むための、探究心が伝わってくる。
 
 
 

原点は、氷室京介とビートルズだった
 

この10年間で一番印象的だったクリエイティブは?と尋ねると、「氷室京介さんの会報誌の表紙と、L'Arc-en-Ciel(ラルク・アン・シェル)のCDジャケット(『EVERLASTING』)ですね」との回答。

中学生時代はヒムロック、高校生時代は洋楽ロックと、ロックに親しんできただけに、「音楽関係のクリエイティブがしたいという気持ちが大きかったので、お話をいただいたときはすごく嬉しかった」と笑う。

「特に会報誌のお話は、ちょうど2016年に氷室京介さんが無期限休止を発表した後のラストライブ『KYOSUKE HIMURO LAST GIGS』に行った後にいただいたので、思わず『えっ!?』って。びっくりしましたね」


今年7月には代官山 蔦屋書店で、氷室京介の会報誌『KING SWING』の写真や粟津さんの表紙原画を展示する「KYOSUKE HIMURO KING SWING EXHIBITION 2019」が行われた。粟津さんのライブペインティングも実施。

9月27日からスタートした「We Love The Beatles in DAIKANYAMA TSUTAYABOOKS」フェアでは、描き下ろしのビートルズアートを展示しているが、ビートルズもまた、粟津さんの原点だったという。

「高校1年生の時からギターをはじめて、ポール・マッカートニー好きの友達の影響で、バンドでビートルズのコピーをしていたんです。ポールのライブにも行きました。僕が好きなのはジョージ・ハリスン。60年代から90年代にかけての洋楽ロックをよく聴くようになったのは、それからです。今も仕事をしながら聴いています」
 
 


アビイ・ロード発売50周年を記念した「We Love The Beatles in DAIKANYAMA TSUTAYABOOKS」フェアでは、各メンバーを描いたビッグサイズのイラストをメインに、ビートルズの“裏側”を展示している(10月17日まで)

今回の展示のテーマは、「ビートルズの裏側」。レコーディング風景や日常の会話、ポールとジョン・レノンのやりとりなど、イラストから“ビートルズの生き様”がリアルに伝わってくる。レコーディングの音や、生活音なども聞こえてきそうだ。
   
 
 
ジョン・レノン

「テレビや雑誌のカメラの前で笑っているビートルズも好きですが、僕がより魅力的だなと思うのがレコーディング風景や日常の何気ない瞬間を捉えた写真や映像です。それらを描いた作品を雑多な感じで展示をすることで、より“生身のビートルズ”を伝えたい」

メディアや大衆のイメージによって“つくられたビートルズ像”ではない。あくまで人間らしいビートルズを描きたいというところが“人”好きの粟津さんらしい。
 
 

デジタルではなく、アナログの力を追求したい
 

今後は油絵や抽象画等の新しい画風も追求したいと話す。

「今後は作風をガラッと変えるということもやっていきたい。特に厚塗りの油絵は、今の僕の作風とは真逆。真逆だからこそ挑戦してみたいんです。銀座 蔦屋書店で個展をされていた、画家の井田幸昌さんの油絵にも感銘を受けました」

CG等でデジタルも取り入れていく可能性を尋ねると「基本はアナログです」と即答した。

「原画の威力はすごい。人の魂を揺さぶることができる原画という形で作品を残したいという気持ちが強いんです」


制作風景


例えば、「KYOSUKE HIMURO KING SWING EXHIBITION 2019」でも展示した、イラストにアクリル板を乗せ、そこにカラーインクを垂らすことで立体感を生み出す作品は、「原画を見て初めて、その影や色合いなどが伝わる。デジタルでは表現できない」と粟津さん。この手法の作品は、「We Love The Beatles」フェアに展示する作品にも取り入れている。

展覧会も、リアルな場とのコラボレーションを考えている。

「静かな環境にあるお寺や古民家などで展覧会をするのも面白そうですね。それらで展示をするなら、僕が普段会っている人や、すれ違う人をモチーフにしてみたい。展示する場所から新しく作品も生まれるということもあり得そうです」

来年には個展を予定しているという。どんなクリエイティブが展開されるのか楽しみだ。



代官山 蔦屋書店での過ごし方

最後に、今回で2回目となる展示を行う代官山 蔦屋書店での普段の過ごし方を聞いてみた。

「制作のインスピレーションを得るために、日常的に立ち寄っています。チェックするのは、ファッション写真集や画集ですね。スターバックスコーヒーで豆乳ラテを飲んだり、ラウンジ『Anjin』でローストビーフを食べたりして、ひと息つくのもお気に入り」


「幼少期から青春時代を過ごしたふるさとに近い、自然を感じられる環境がデフォルト。朝から夕方まで制作活動をしたら、夜は1時間ほど家の近所の緑道を散歩します。頭を空っぽにしていたほうが、ひらめきがあるんです」(粟津さん)

粟津さんは、心をメンテナンスすることもクリエイティブで大切にしているという。粟津さんの代官山 蔦屋書店でのひとときは、心地良いリズムを突き詰めたライフスタイルの先にあった。
 

 


【プロフィール】
粟津 泰成 (AWAZU Yasunari)
1982年生まれ。兵庫県出身。東京都在住。
2008年より活動の場を東京に移しイラストレーターの活動を開始。広告、雑誌、装丁、CDジャケットなどのクライアントワークを主軸に、個展などの作品展示なども定期的に行い幅広いジャンルで活動している。
2009年 グループ展「APARTMENT」 (MONKEY GALLERY/代官山)
2010年 個展「YASUNARI AWAZU EXHIBITION "PRESENSE"」 (MIKISSIMES GINZA/銀座)
2015年 個展「YASUNARI AWAZU EXHIBITION "TRICE"」 (LE MONDE/表参道) 2017年 個展「YASUNARI AWAZU EXHIBITION[projection]」 (OMOTESANDO ROCKET/表参道)
2018年 企画展「LAMY × YASUNARI AWAZU × KYOSUKE HIMURO [KING SWING COVER ART EXHIBITION]」 (代官山 蔦屋書店/代官山)

 http://www.awazu-illust.com


【フェア】
「We Love The Beatles in DAIKANYAMA TSUTAYABOOKS」

代官山 蔦屋書店3号館 2階 音楽フロア
2019年10月17日(木)まで
 
 
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