【ARTIST NEWS】キャラクターのぬいぐるみを解体、ひとのかたちに縫い合わせ、モチーフとすることで人の価値観の違いを浮き彫りにする 駒嶺ちひろの個展「はらわたのいどころ」を開催
日本を代表する文化のひとつ、アニメや漫画。今や世界中の人々に影響を与え、誰かの人生の価値観の核となっている場合も少なくありません。駒嶺ちひろもまた、アニメや漫画の物語に救われ、生きてきたといいます。
駒嶺は、人々が物語をとらえるときに起きる受け取り方のちがいを、物理的に現出させるアーティストです。広く知られたキャラクターのぬいぐるみを解体し、新たなかたちとして再び縫い合わせ、それをモチーフとして平面に描くという表現行為を重ねることで、価値観の異なる人間のありようを描き出しています。異様にも映る作品の姿は、よく見ると見知ったキャラクターの再構成されたものであることに気づきます。そのいびつさによって、ひとつの物語に対して起きる、それぞれの価値観の多様さを表現しています。
本展は「はらわたのいどころ」と題され、怒りという感情に焦点が当てられています。これは、怒りを感じる臓器が、肉体的に、また精神的にどこに存在するかを探る試みです。また、ひとそれぞれの怒りを感じるポイントの違いを明らかにする行為でもあります。今回の展示では、新作をふくむ平面作品と、その元となった立体作品23点が展示されます。駒嶺ちひろの世界に触れ、違和感を味わったとき、鑑賞者自身の価値観も浮き彫りにされることに気づきます。
私は人の持つ価値観ごとに人間を描き分けることに興味があります。
よく友達とアニメや漫画等の話をしている時、物語の捉え方の違いが露になり、それによってお互いの思想の異なりから自身の生き方をかけた熱戦(バトル)が繰り広げられることがあります。
価値観の違いは時に自身の見ている世界の拡がりに繋がります。一方で自身の信じる物語の息を殺しておく事を生存戦略にする場面は日常生活を送るうえで珍しくありません。
私はそういう生き物としての人間の肖像を描きたいのです。
2023年8月4日 駒嶺ちひろ
本展覧会タイトルの「はらわたのいどころ」というフレーズは「腸(はらわた)が煮え繰り返る」と「虫の居所が悪い」を掛け合わせて私が作った造語です。
どちらも腹が立つ際の勘所に関係する言葉で、今回展示するShape of men シリーズの目的である「価値観ごとに異なる人々の肖像を描く」というテーマを掘り下げてくれるキーワードでもあります。
精神的なはらわたはどこにあるのか。それは、ただ肉体的な内臓の位置を示すばかりでなく、本の中で遭遇する物語やテレビから流れる社会のニュース、他人と自分の考え方の違いに触れることで腹を立てたり納得したり、居心地が悪くなったりする際に感じる自身の勘所を、身体から拡張された自らの肖像の内臓として考える試みです。
2023年8月1日 駒嶺ちひろ
2017年 愛知県立芸術大学美術学部美術科油画専攻 卒業
2020年 東北芸術工科大学院工学研究科芸術文化専攻芸術総合領域 修了
2019年 いつかどこかへ飛んでゆく(画廊跡地/東京)
2021年 おおおままごと(GALVANIZE gallery/宮城)
2022年 冬の夏休み(naru gallery/愛知)
2020年 ルイジトコトナリ ― 類似と異なり(はじまりの美術館/福島)
2023年 オオサカアートフェスティバル2023(大阪府立江之子島文化創造センター/大阪)
2023年 A4 WALL MATSUYA GINZA(松屋銀座/東京)
2021年 muni Art Award 2021 池永康晟、井浦歳和審査員賞
2023年 オオサカアートフェスティバル2023 入選
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