【ARTIST NEWS】コムロタカヒロが『TAKAHIRO KOMURO Sculptures』の刊行記念展として、銀座 蔦屋書店で4年ぶり2度目の個展「Tempest」を開催
Vortex以降私の中で代表作となった木彫のDragonシリーズに加え、最新作であるSphinxシリーズなど、大型の木彫作品がひしめき合うダイナミックな展覧会になるかと思います。
彫刻を作るということは、精神的にも肉体的にも経済的にもとても厳しいものがあり、尚且つ美術においては絵画に比べてマイナーなメディアでもあります。そのような逆境をあえて選んで生きてきたのは、シンプルに立体が、彫刻が好きで好きでたまらないからなんだと、出来上がったばかりの作品集を眺めながら再認識しています。本展にてVortex(渦)からTempest(嵐)へと発展した成果をお見せできればと思います。
ぜひ、当個展に足をお運びいただき、作品と同じ空間を楽しんでいただければと思います。また宜しければ作品集を手に取って眺めていただければ幸いです。
前回のAtriumでの個展「Vortex」から4年ぶりとなる今回の個展は、Vortex(渦)から始まり、そこからより発展したものをお見せするという意味で、渦から嵐へという意味を込め、タイトルをTempestとしました。Tempestは10代の頃にハマり、大きな影響を受けた「Magic the gathering」のシリーズの名称でもあり、記憶に残っている言葉です。また当個展は約100点の彫刻作品を収めた初の作品集『TAKAHIRO KOMURO Sculptures』の出版に合わせた展覧会でもあります。今回発表する新作の木彫シリーズは翼が生えているキャラクターが多く、そういった意味でも風の属性、四大シンボルの大気が一つのテーマです。
前回の個展「Vortex」で発表した2.5mの大型の木彫作品《Magic dragon》は以降私の中で代表的な作品となり、そこから150cmの木彫のドラゴンシリーズが派生しました。今回はその最新作であるDragonシリーズの3体を展示する。この3体で150cmのDragonシリーズは10作目となり、一つの区切りを迎えます。
《Dog dragon》は犬の頭部をモチーフとしたドラゴンです。犬種は特定のものではなく、色々な要素を含むが色はドーベルマンを意識しました。また、中世の宗教画や本の挿絵などに登場するドラゴンは抽象的な姿を表現するために様々な動物のパーツの合成でしばしば表現されるが、そのようなイメージの中に犬の頭部のような顔のドラゴンもあり、そのイメージも影響を受けています。犬というのは狼とは違って、より人間にとって親密な存在であるからこそ、逆にホラーやモンスターのモチーフとして登場することも多い存在です。
《Bat dragon》は吸血コウモリがモチーフ。ドラゴンとしてはだいぶ珍しい顔の印象ではないでしょうか。コウモリがモチーフであるが故に頭部はなるべく奥行きを短くし、目の位置は正面寄りとしました。肉食系のコウモリの特徴である大きな耳と豚のような鼻が特徴です。配色はビンテージソフビの怪獣などでお馴染みの肌色系にブルーを合わせました。翼の形と耳の形が造形的にリフレインしているのも着目してほしいポイントです。
《Savage dragon》は水牛に似たような骨格をしたドラゴンです。また怪獣ゴモラのフォルムもどこか彷彿とさせる後方へ反った角が特徴的です。Savageということで残忍で強そうなドラゴンです。配色はくすんだ緑に反対色の血のような赤を合わせ、強烈な印象を与えるカラーとしました。
次は新シリーズの謎めいた卵の殻を被った生物《Egg yolky》が群れで出現します。これは日本のアニメのカリメロ、海外作品のバーバパパ、M&M'Sなどのキャラクターに影響を受けています。胴がなく、頭から直接手足が生えた姿は、幼児が最初に描く人の絵も連想する、最小限の要素で可愛らしさを表現したものです。また、卵は生命の誕生、子供、未来、希望を意味し、卵の殻を破って強く生きようとするエネルギーも表現しています。
その奥にはまた新シリーズのコウモリのキャラクターの4体の彫刻が並びます。まずはスタンダードなコウモリの木彫。これは私のスタジオに10年ほど前に迷い込んできた小さなコウモリが着想のヒントになっています。その時初めてコウモリを間近でじっくり観察し、飛んでいる時の印象よりずいぶん小さく、フワフワな体毛やつぶらな瞳など、その可愛らしさが強く印象に残っており、今回作品として登場することになりました。このようなカートゥーンの動物のキャラクター造形では凹凸を極力減らしたものが多いですが、そうならないように、毛の流れ一つ一つまで立体として心地よい形となるように追求しました。また、ビンテージのおもちゃのような塗装の掠れ感も取り入れています。目の表情は映画ネバーエンディング・ストーリーのすぐ寝てしまうコウモリのイメージから、少し眠たそうな目をしています。タイトルは《Sleepy bat》。
その隣は少しホラーなイメージの頭が骸骨の《Skull bat》。頭変えは昔のソフビやアクションフィギュアでよく使われる手法で、頭の造形を変えることで全く違う新しいキャラクターを生み出すもので、その技法を踏襲しています。体は《Sleepy bat》と全く同じデータです。頭部の骸骨は頭蓋骨の横幅を大きく横に増やして、顎は小さく、鼻も潰れた形にして、少しファニーな印象となるようにしました。可愛らしい《Sleepy bat》に対して、こちらは骸骨の頭であることで不気味でありながらどこか笑えるユーモラスな表現を目指しました。
最後は奥に2体並んだ《Sphinx》シリーズ。《Sphinx》は前から取り組みたいと思っていたモチーフであり、これらはKira(キーラ)とZoe(ゾーイ)のSphinxの姉妹をイメージした彫刻です。彫刻作品としてはエジプト、ギザの大スフィンクスが有名ですが、今回のスフィンクスは古代ギリシャの民話を起源とする大理石製の翼の生えたスフィンクスの彫刻や映画ネバーエンディング・ストーリーの南のお告げ所の門番のSphinxを意識して構築しました。スフィンクスの彫刻の多くは座っているか両足を曲げて腹を地面につけている状態が多いが、当作品は両足とも立てて自立をし、どこか遠い視線、あるいは次の餌食となる旅人を探しているような、そんなポーズを選びました。頭部の顔のイメージは日本の一昔前のアニメの少女のテイストを入れています。Kiraの髪型は少し猫耳を連想するような両サイドのトップがやや尖った形をしていて、Zoeは髪を結い上げて羽飾りのような形になっています。全体の形態はパーツごとに分断されたソフトビニールフィギュアの特徴的なフォルムに納め、分断されたパーツごとに意味性の異なるモチーフに変化するようになっています。これは神話の異形の怪物のイメージが既存の動物のパーツの寄せ集めで描写されていることを参照し、ソフビの特性に重ね合わせて表現しています。
1985年東京生まれ。2011年東京藝術大学大学院美術研究科修士課程彫刻専攻終了。現在東京を中心に活動。
80~90年代に量産されたフィギュアやアニメ、SF、ファンタジー、ホラー映画に影響を受け、主にソフトビニールフィギュア特有の質感、フォルムを視覚言語とした木彫作品を中心に展開している。
発行|カルチュア・コンビニエンス・クラブ
発売|美術出版社
価格|7,200 円+税
発売日|2023年12月28日(木)
仕様|216ページ、 A4
ISBN|978-4-568-10572-8 C0071
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作品名|Cosmic dragon #1
サイズ|W42 × L23 × H50 cm
制作年|2023年
素材|Soft vinyl
エディション数|30
価格|298,000円(税抜・作品集つき価格)
エントリー受付期間|2023年12月28日(木)11:00~2024年1月7日(日)24:00
「OIL by 美術手帖」詳細ページ|https://oil.bijutsutecho.com/special/263
時間:11:00~20:00 ※最終日のみ18時閉場
サイズ|20 cm×17cm×23cm
エディション数|15
制作技法|偏光塗料で仕上げたブロンズ彫刻
制作年|2023年
※詳細はArteの公式ウェブサイトにてご確認ください。
会場展示作品は、12月29日(金)11:00より店頭にて販売開始いたします。展示作品のオンライン販売はございません。
※プレセールスの状況により会期開始前に販売が終了することがあります。