浦和蔦屋書店の本棚Vol.27 『白鷺烏近なんぎ解決帖』田中啓文/光文社

フェア
2023年09月14日(木) - 10月14日(土)
『白鷺烏近なんぎ解決帖』田中啓文/光文社

小気味いい気味いい語り、愉快な人物、風変わりな依頼と意外な解決法、人情味あふれる結末で落語のように楽しめる作品、それが『白鷺烏近なんぎ解決帖』です。田中啓文先生の文章は軽妙でわかりやすいので、時代小説や落語に馴染みがない方でも間違いなく楽しめるでしょう。

また連作短編なので、通勤やふらりと入った喫茶店のちょっとした時間の読書に最高にジャストフィットします。つまり万人におすすめできる作品です。

 時は江戸時代、大阪の土佐堀川に浮かぶボロボロの小さな屋形船で暮らす男がいる。白鷺烏近という。彼はかつて侍だったが、殿様の逆鱗に触れ牢屋に入れられてしまう。

それが原因で親に勘当され浪人の身となった。金も仕事もない彼は船の前に「ご無理ごもっとも始末処」という看板を掲げ、依頼者が持ち込む無理難題を解決する。以上が本作のあらすじです。鷺を烏と言いくるめる才をもつ烏近のもとには、川の流れを逆にしろ、人魚の肉を手に入れろ、座敷童を呼び戻せといった具合に無理難題が持ち込まれます。

そもそも解決できるはずのない無理難題ですが、それを知恵と機転で見事に乗り切るのが痛快です。そして登場人物が愉快な者ばかりです。ひょうひょうとした切れ者だけど人情もある烏近。「はあっ、ありがたい」が口癖の子悪党、ありがた屋の与市兵衛。手妻使い(手品師)のお紺。烏近が思いを寄せる天真爛漫な小夜姫。みな曲者達ですが嫌味な感じがしません。サクッと読めてパッと面白い。そしてなんといっても読後感が最高なハッピーかつゴキゲンな一冊です。田中先生にはぜひ続編を書いて頂きたいです。
 

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