【第5回】今井義浩の本棚『monk: Light and Shadow on the Philosopher's Path』(Phaidon)刊行記念

京都哲学の道に佇む、1軒のレストランmonk。

提供しているのは、彼自身の目で選び抜かれた食材を新窯で調理した、シンプルな料理ですが、食べ手の「五感」に訴え、心に残る時間をも届けています。

毎日畑に足を運ぶことで感じる、自然の偉大さや四季の移ろい。

日々、目にする全ての美しいもの。哲学。パッション。

今井氏が影響を受け、自身の料理に映し出す"源"となっている本15冊を、ご本人のコメントと共に味わっていただきます。(全5回)
 

【13冊目】宮沢賢治:存在の祭りの中へ/見田宗介/岩波書店

 
小説家と料理人。ジャンルは違えど、村上春樹が仕事に対するスタンスを記したこの本には大きな力をもらいます。群れず、シーンから距離を置き、ひたすら自分の井戸を掘り続けること。深く、長く仕事をするには、フィジカル、そして自分をどのような状態にキープするかが重要であること。文体とジャズのインプロビゼーションに関する描写は私が考えるmonkの料理や店の在り方にもそのまま当てはまりますし、個人の自我を超えたもっと普遍的な広がりがある仕事を通して何かを伝えたいという思いも、私がいつも願っている事です。
 
 

【14冊目】職業としての小説家/村上春樹/新潮社

 
ベルギーのデザイナー/古美術収集家であるAxel Vervoordt。彼の作り出した空間/インテリアの写真集。花屋みたての西山さんに教えて頂きました。
静寂の中に、古物と自然、光と陰、そしてところどころに現れる火が絡み合う。”間"の捉え方、彼が捉えたオリジナルの"侘び”。monkの内装を考える上でも、そして料理の在り方を考える上でも大きなインスピレーションをもらった本です。
 
 

【15冊目】FAVIKEN 4015 Days, Beginning to End/Magnus Nilson/PHAIDON

 
スウェーデンの伝説的なレストラン、FAVIKEN。この本はそのオープンから最後の日までを、溜息の出るような美しい写真とシェフ自身の言葉で語っています。一線を走り続けることと自身の生活、一皿一皿にかけている膨大な想い、深い洞察と思索。リアリティとウィットに富んだ彼のエッセイを読んでいると、レストランを経営することは人生そのものだということを改めて実感します。逆に言えば、人生そのものを燃やし続けた彼だからこそ、時代を変えるような仕事の軌跡を残すことができたのかもしれません。
 

【プロフィール】
今井 義浩 (いまい・よしひろ)
1982年茨城県生まれ。
エンボカ京都シェフを経て、料理写真集"CIRCLE"を出版。
その後フリーランスの料理人として旅をしながら料理を作る。
2015年末、京都にて自店"monk"をオープン。
2021年、Phaidon社より"monk: Light and Shadow on the Philosopher's Path"を出版。
 
 
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【関連フェア】monk~五感に訴える「追求されたシンプルな味」

料理コンシェルジュ
田中

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