【六本木ホラーショーケース -ARTICLE-】#002 傑作の精神を受け継いだ『エスター ファースト・キル』

“活きのよいホラー映画、ご紹介いたします”

【六本木ホラーショーケース】
六本木 蔦屋書店映像フロアがお贈りするホラー映画紹介プログラム。
ホラー映画を広義でとらえ、劇場公開作品を中心にご紹介し、そこから広がる映画人のコネクションや文脈を紐解いていきます。
 
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今回ご紹介するのは、2023/03/31㈮公開『エスター ファースト・キル』です。
(C)2021 ESTHER HOLDINGS LLC and DC ESTHER HOLDINGS,LLC. All rights reserved.
『エスター ファースト・キル』
2022 | 監督:ウィリアム・ブレント・ベル
 
 
映画『エスター』を皆さまは覚えていますでしょうか?
不気味な少女を正面から捉えたポスタービジュアルが印象的なスリラーホラーです。
2009年公開ですが、21世紀のホラーベストなどを挙げる際に必ずと言っていいほどタイトルが挙がる作品ではないでしょうか。
この作品の、まさかの続編が13年ぶりに製作されました。
それが『エスター ファースト・キル』です。
 
前作からしばらく経ってからの続編は最近増えてきており、別に珍しいことでもありませんが、ことこの作品に限っては“まさかの”という思いがよぎります。
それは前作『エスター』が、どんでん返しの名作として知られた作品だからです。
ネタバレを書くような無粋なことはしませんが、作中のとある展開に当時の観客は大いに驚き、それによって語り継がれる作品となりました。
エスターというキャラクターが00年代を代表するホラーアイコンとなった所以もここにあります。
それ故に、続編のハードルがグッと上がってしまいました。
同じ手は通用しないし、全く別の話をしてもそれは『エスター』ではなくなってしまうでしょう。
 
もう一つは、主演の問題です。
『エスター』でタイトルロールを演じたイザベル・ファーマンは、当時10歳であの恐るべき役を演じていました。
彼女のルックスや演技力によって印象付けられたエスターというキャラクターは、他の誰かが代わりを出来るものではなくなっています。
しかも、キャラクターの特性上、13年というブランクは致命的な不安要素として作用してしまいかねません。
 
しかし、『エスター ファースト・キル』はものの見事にこれらの不安を吹き飛ばす快作となっています。
もちろん前作とは違った展開を用意しつつ、紛れもなく『エスター』の続編としてその名に恥じない驚きを提供してくれます。
さらに驚くべきは、本作は続編でありながら前日譚となっていることです。
主演のイザベル・ファーマンは撮影時23歳にして、前作より若いエスターを演じています。
近年、CG技術の発展によりディープフェイクなどで俳優の顔を入れ替えることは比較的簡単になってきましたが、今作ではそれを使わず、伝統的な撮影トリックとメイクだけで乗り切ったと言います。
その執念を確認するためだけでも鑑賞に値すると思います。
 
監督を務めたウィリアム・ブレント・ベルは、『デビル・インサイド』で注目され、『ザ・ボーイ』シリーズなどを手掛けています。
ホラー的ハッタリをドキュメンタリータッチで描き、真実味を持たせることに長けた監督ですが、同時に家族間の問題を作品にうまく取り込んできました。
『エスター』はまさに入り込んできた“新たな家族の一員”を描いた作品なので、ピッタリの人選ではないでしょうか。
 
【六本木 蔦屋書店のオススメ:鑑賞前後に観たい作品】
 
『サプライズ』
2011 | 監督:アダム・ウィンガード
 
もちろん前作『エスター』は予習として観ておくべき作品です。
ただそれだけではオススメとして芸がないので、もう一作。
アダム・ウィンガードの出世作『サプライズ』です。
インディーズ・ホラームーヴメントである“マンブルゴア”の文脈から登場したアダム・ウィンガード。
彼は『サプライズ』でホームインベージョンムービーを型として利用しつつ、鮮やかに裏切っていくメタ的な構造破壊を行っています。
その精神は『エスター ファースト・キル』にも宿っているように思えます。
あまり語りすぎるとネタバレにも繋がりますので、一度ご鑑賞頂き、新世代のフィルムメーカーたちがどのようにホラージャンルと向き合っているかをお確かめください。
 

過去の【六本木ホラーショーケース -ARTICLE-】記事はこちら
 
 

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