【ダイレクターズ】『毒娘』

【ダイレクターズ】
六本木 蔦屋書店 WATCH PLANがお送りする日本映画紹介プログラム。
2024年に公開される日本映画の中から、映画監督という切り口で厳選したオススメ作品を紹介していきます。
 
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ダイレクターズ第五弾は、4/5㈮公開の内藤瑛亮監督『毒娘』です。
 
ポスター画像
(C)「毒娘」製作委員会2024
 
『毒娘』
2024 | 監督:内藤瑛亮
 
2024/4/5(金)より
全国公開
 
 
オリジナル脚本作品
『毒娘』は内藤瑛亮監督によるオリジナル脚本作品です。
オリジナルというモノが、どれほど貴重で意義のあることかは様々な場で度々語られてきたことですが、ここでも簡単に触れたいと思います。
一つの映画を製作するにあたり、複数の出資元が作品の色々な権利を分け合う形で進める“製作委員会”という方式が定着して久しくあります。
リスクを分散できるというメリットがある一方で、どうしても小回りが効きづらく挑戦的な企画が通り辛いというデメリットも。
多くの出資者の首を縦に振らすには、既に他のメディアで実績を出している原作モノや一定数の観客を想定できるIP作品が手堅いというのも想像出来ます。
故にオリジナル作品を発表できるということは、それだけ認められた才能であるという証左だと言えるでしょう。
 
今作は、内藤監督がとあるネット掲示板に書かれた出来事を目にし、そこからインスパイアされた物語を映画化したという経緯があります。
そして、映画の中で重要な役割を担う“ちーちゃん”というキャラクターを、「悪の華」「血の轍」で知られる漫画家・押見修造さんがデザインし、そこから実写として立体的な人物に落とし込むという手法が取られています。
両氏の過去作を追いかけていると、そのコラボレーションがどれほど素晴らしい化学反応を起こすのかは、火を見るよりも明らかといったところでしょうか。
事実、映画の前日譚となる漫画「ちーちゃん」の連載が週刊ヤングマガジンでスタートし、確かな手応えによる広がりが生まれています。
 
フィルモグラフィを振り返る
内藤監督のフィルモグラフィを振り返ると、いくつかのラインのようなものが見えてきます。
映画美学校で映画製作を学び、初等科の卒業制作として撮った短編『牛乳王子』が学生残酷映画祭でのグランプリをはじめ、国内外の映画祭で評価されました。
いじめで自殺した中学生が復讐のために蘇り、大暴れするスプラッター作品です。
ここに監督の全てがあると思えるほど、後に表出していく様々な要素が短い時間に詰め込まれています。
その後、実際に起こった事件を元に撮った『先生を流産させる会』が、そのインパクトあるタイトルともに注目を浴びます。
子どもの加害性を描く姿勢は『許された子どもたち』でも引き継がれ、実録路線として監督のシグネチャーとなります。
鶴田法男監督、白石晃士監督と共にホラー映画連続公開企画に『高速ばぁば』で参加し、ジャンル映画ファンにその名を知らしめました。
実は原作モノも手掛けており、『パズル』『ライチ☆光クラブ』『ミスミソウ』など熱狂的な原作ファンが存在する難しい題材を見事な映画化へと導く手腕を発揮しています。
中々際どい描写も出てくる作品ですが、エンターテイメントにするという商業映画が持つ使命をバランス良く達成しており、その職人的な感覚も内藤監督の強みだと感じます。
 
そして、『毒娘』では『牛乳王子』から各方面へと伸びていったラインが改めて集約された作品となっています。
 
【六本木 蔦屋書店のオススメ:鑑賞前後に観たい作品】
 
ポスター画像
(C)押切蓮介/双葉社 (C)2017「ミスミソウ」製作委員会
 
『ミスミソウ』
2018 | 監督:内藤瑛亮
 
押切蓮介さん原作のコミックを映画化した作品。
いじめを発端としたとある事件を機に、復讐の鬼となる少女を描いています。
赤をキーとしたビジュアルイメージは『毒娘』とも重なるところです。
田舎の町と都市部の一軒家という舞台の違いが、作劇にどのような影響を与えているのかを見比べるのもいいかもしれません。

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