【六本木ホラーショーケース -ARTICLE-】#021  新世代に恐怖を植え付ける『エイリアン:ロムルス』

“活きのよいホラー映画、ご紹介いたします”

【六本木ホラーショーケース】
六本木 蔦屋書店映像フロアがお贈りするホラー映画紹介プログラム。
ホラー映画を広義でとらえ、劇場公開作品を中心にご紹介し、そこから広がる映画人のコネクションや文脈を紐解いていきます。
 
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今回ご紹介するのは、『エイリアン:ロムルス』です。
 
ポスター画像
(C)2024 20th Century Studios. All Rights Reserved.
 
『エイリアン:ロムルス』
2024 | 監督:フェデ・アルバレス
 
 
皆さん、『エイリアン』という作品はご存じでしょうか?
1979年に製作されたSFホラーの金字塔的作品です。
そして、アイコンとしても最も有名なキャラクターの一人?一体?と言えるでしょう。
およそ半世紀の間で無数のパロディやオマージュ、便乗作品が作られましたが、正式なナンバリングタイトルとしては『エイリアン』『エイリアン2』『エイリアン3』『エイリアン4』の4作です。
前日譚である『プロメテウス』『エイリアン:コヴェナント』を加えると6作になります。
ある種、お祭りのような企画であった『エイリアン VS プレデター』『AVP2 エイリアンズ VS. プレデター』を正史に加えるかは意見が割れるところではあります。
フランチャイズ作品として、5~7年ごとに続編が製作されているというペースは、決して早いとは言えません。
また『エイリアン4』のあと、『プロメテウス』の間には15年もの期間が空いています。
結局、『エイリアン:コヴェナント』以降に製作が噂されていた『エイリアン:アウェイクニング(仮)』も中止となってしまい、またシリーズ冬の時代へと突入してしまいました。
この中止には様々な要因が絡んでいますが、権利元である20世紀フォックスがディズニーに買収されるという一大変革が起き、様々な企画が見直しを迫られたという状況も大きく影響しているでしょう。
ただ、ディズニー傘下となった後もフランチャイズのポテンシャルを見限られたわけではなく、試行錯誤の中で遂に実を結んだのが『エイリアン:ロムルス』です。
時系列としては、第一作目の『エイリアン』と第二作目の『エイリアン2』の間に位置するストーリーにはなりますが、リブートという側面も間違いなくあります。
これまでのシリーズ作品にオマージュを捧げた演出やイースターエッグ的なネタなどオールドファンを喜ばせるような仕掛けがいくつも散見されますが、それだけではなく新たなファンにゼノモーフの恐怖を植え付けるという挑戦も行っています。
 
『エイリアン』というシリーズはその成り立ちからして特殊でした。
数々のジャンル映画に携わっているダン・オバノンが温めていた企画が元となり、そこに各方面の才能が集まり出来上がった奇跡の作品と言っても過言ではありません。
その中には、この『エイリアン』というシリーズが半世紀経った現在まで影響力を持つ事となる大きな要因となったクリーチャーデザインを手掛けたH・R・ギーガーもいます。
第一作目の監督は、リドリー・スコットです。
今でこそ巨匠として名が知られた監督ですが、当時はCMディレクターを経て、『デュエリスト/決闘者』で長編映画デビューを果たしたばかりの新人でした。
そして、第二作目『エイリアン2』はジェームズ・キャメロンです。
『タイタニック』『アバター』シリーズなどの稀代のヒットメーカーですが、彼も『エイリアン2』の前に低予算SF『ターミネーター』をヒットさせたばかりの若手でした。
エイリアンシリーズは若手監督をフックアップする登竜門的な役割も果たしています。
第三作目はあのデヴィッド・フィンチャーの長編映画デビュー作となります。
この作品自体には監督本人もあまり納得のいかない結果となったと述べていますが、その後の活躍はご存知の通りです。
共通点としては、ビジュアルに強烈なこだわりのある監督たちが選ばれており、第四作目『エイリアン4』の監督ジャン・ピエール・ジュネも『アメリ』など独特の世界観を構築する人物です。
これだけこだわりの強い監督たちがバラバラの方向性で紡いでも、一貫したエイリアンというシリーズを保てるのは、やはりクリーチャーデザインの秀逸さが成せる業と言えるかもしれません。
ただ、シリーズを遡った『プロメテウス』と『エイリアン:コヴェナント』はリドリー・スコットの興味が明らかにアンドロイド(というかマイケル・ファスベンダー)に移っており、モンスターパニック的な恐怖を求めると肩透かしを食らってしまう可能性もあります。
なので、シリーズの要素を満遍なく取り込みつつも、正しくSFホラーとしての恐怖を取り戻させたフェデ・アルバレス監督の手腕は評価に値します。
 
【六本木 蔦屋書店のオススメ:鑑賞前後に観たい作品】
 
 
『ドント・ブリーズ』
2016 | 監督:フェデ・アルバレス
 
盲目のおじいさんの家に盗みに入ったら、元軍人だった、というシンプルだが魅力的なプロットで人気を博した作品です。
視覚以外の感覚でターゲットを知覚し、容赦なく襲ってくる生き物から逃げ切るという骨格は、まんま『エイリアン』を想起させます。
この暗闇追いかけっこが得意なフェデ・アルバレスを監督に起用した時点で、制作サイドの意図は明確だったと言えるでしょう。

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