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【第135回】間室道子の本棚 『モダンラブ さまざまな愛のかたち ニューヨーク・タイムズ掲載の本当にあった21の物語』ダニエル・ジョーンズ編/桑原洋子訳 河出書房新社

「元祖カリスマ書店員」として知られ、雑誌やTVなどさまざまなメディアで本をおススメする、代官山 蔦屋書店 文学担当コンシェルジュ・間室道子。
本連載では、当店きっての人気コンシェルジュである彼女の、頭の中にある"本棚"を覗きます。
本人のコメントと共にお楽しみください。
 
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『モダンラブ さまざまな愛のかたち ニューヨーク・タイムズ掲載の本当にあった21の物語』
ダニエル・ジョーンズ編/桑原洋子訳 河出書房新社
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大ヒットした『モダンラブ』の第二弾。

通常、二冊目は一冊目より弱くなりがちだがこのシリーズに心配はない。タイトルに添えられた「ニューヨーク・タイムズ掲載の本当にあった21の物語」が変わらず示しているように、本書は投稿者に実際起きたことだからだ。「マンネリ」や「枯渇」はないのである!

サブタイトルは「さまざまな愛のかたち」。前作も、「いくつもの出会い、とっておきの恋」という副題ながら男女の恋愛に限定されない家族愛や隣人愛が収録されていたけど、今回はより広い。ボーダーレスはここまで来てるんだな、とド肝を抜かれる話が盛りだくさんだ。

一話目の「僕の恋人は、僕の娘の母親です」のアーロンはおそらく五十代初めの男性。二十五年前、海外での英語教師を経て国に戻った彼は、生活安定の足しにとドナープログラムに参加し精子を提供する。一回の謝礼は四十ドル。一年たって辞めたあとはほぼ忘れていた。

しかし世の中にインターネットが出現する。そして「23andMe」(トゥエンティスリー・アンド・ミー)の登場。唾液を送るだけで、登録者同士の祖先や血縁の情報をくれる会社である。湧き上がる好奇心と、生まれた子はどうなったんだろう、という思い・・・。

で、驚いたことに息子がいた。珍しい名前だったのでネット検索するとすぐに出てきた。大学四年生で地理学を専攻しており、顔が自分に似ている。連絡を取ってみると、仰天する返事が・・・!

さらに数か月後、「23andMe」上にあらたな血縁者があらわれる。十一歳のアリス。彼女の母・ジェシカと元パートナーはアーロンの精子を使い、それぞれ一人ずつ子供を産んだが―そう、ジェシカはレズビアンだった―その女性とは別れ、現在は男性と交際していた。そしてなんやかんやで、このコラムのタイトルどおりのことが起きるのである!!

日本のテレビや小説ではまだ「どうやって生まれたか」とか、「本当の親じゃない」とか、「離婚した妻が再婚することになり、パパが二人いては子供が混乱するからもうあなたには合わせないと元妻に言われた」とかが「すんごい秘密」「すんごい苦悩」だ。そして世界でこんなことやってる国ってもはや日本ぐらいなのに、「家族の根源を揺るがす」という理由で夫婦別姓が認められていない。

冒頭で「ド肝を抜かれる」って書いたけど、私たちはいつまで、世界ではもう当たり前になっていることで驚くんだろう、私たちは何を恐れ、何を守ろうとしているんだろう。しみじみ自分の国の家族や愛のありかたを考えさせられる一冊で、第一弾と合わせて猛プッシュ!!!
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代官山 蔦屋書店 文学担当コンシェルジュ
間 室  道 子
 
【プロフィール】
雑誌やTVなどさまざまなメディアで本をおススメする「元祖カリスマ書店員」。雑誌『婦人画報』、電子雑誌「旅色 TABIIRO」、朝日新聞デジタル「ほんやのほん」などに連載を持つ。書評家としても活動中で、文庫解説に『タイニーストーリーズ』(山田詠美/文春文庫)、『母性』(湊かなえ/新潮文庫)、『蛇行する月』(桜木紫乃/双葉文庫)、『スタフ staph』(道尾秀介/文春文庫)などがある。
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