【第160回】間室道子の本棚 『吉本ばななが友だちの悩みについてこたえる』吉本ばなな/朝日文庫
「元祖カリスマ書店員」として知られ、雑誌やTVなどさまざまなメディアで本をおススメする、代官山 蔦屋書店 文学担当コンシェルジュ・間室道子。
本連載では、当店きっての人気コンシェルジュである彼女の、頭の中にある"本棚"を覗きます。
本人のコメントと共にお楽しみください。
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『吉本ばななが友だちの悩みについてこたえる』
吉本ばなな/朝日文庫
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「友達がいない」よりも「その関係に悩んでいる」という人のほうが多いはず!これはタイトルどおりの本で、私の考えでは、こういう「相談もの」の、専門医ではない作家やタレントさんの回答って、「笑いに変え型」「寄り添い型」「あたりさわりなし型」になりがち。ばななさんは正面から行く。
一問目の「仲がいい友だちに素敵な恋人ができたり出産したりイキイキ仕事していたりすると、心から祝えない時がある。大切な友だちを妬んでしまう」というお悩みについての、「妬んだ段階で、そもそも仲がいい友だちじゃないのでは」という答えにシビれた。
そして嫉妬にかられた時の対処法として「”今わたし、妬んでいるな”と自分をわかってやり、気持ちを終わらせる」「彼女に優しくされると腹立つとかあいつを見返すとか、相手に前のめりにならないこと」と話す。
「社会人になったら学生時代の友人と疎遠になり、一人でいることが多くなった。新しい友だちを増やしたいけど、作り方を忘れてしまって」という人には、「<一人で過ごしたくない>というのと<友だちが欲しい>を混ぜちゃいけない」と答える。
「距離を縮めるだけが友だちではない」「自分にとって不自然なことをしない」「人間関係を固定しようと思い過ぎない」など、読んでいて晴れ晴れが山盛り。はらはらもある。
「長年の男友だちに交際を申し込まれた。大切な親友と思っていたのに裏切られたようでショック」という女性に、「相手の好意に気づいていなかったはずがない。本当は感じていて、彼の気持ちを利用していたところは全くないと言い切れるのでしょうか」と切り込む。どきどきしちゃう。そのあと、ばななさんはていねいに「“男の親友だから”という自分の側の欲求だけで相手に甘えていたところもあるのではないでしょうか」「好意に甘えるという土台で人間関係を作って、それが破綻したとき相手を責めてしまうことは、してはいけない」と畳みかける。
本書には「厳しすぎ!」という声も寄せられたそうだけど、私は、こんな回答ができるなんて、ばななさんはどういう人生を、とその深さに思いを馳せ、頭を垂れたくなった。無傷の人にこんなことが言えるはずがない。それでもなお、フラットな口調がすごいと思うし、「私は二〇代から最前線で戦っていたから」という言葉が自慢も気負いもなくあっさり出てくることに打たれた。
「ママ友問題」や「友だちが自殺してしまった」など、シリアスの極致も出てくるけど、ばななさんの、寄せられた相談への心の開きっぷりが読みどころ。
友だちだけでなく、会社、家族に息苦しさを感じている人、あとぜんぜん悩みのない方も、 本書を読むと、ものすごく心の風通しがよくなると思う。
一問目の「仲がいい友だちに素敵な恋人ができたり出産したりイキイキ仕事していたりすると、心から祝えない時がある。大切な友だちを妬んでしまう」というお悩みについての、「妬んだ段階で、そもそも仲がいい友だちじゃないのでは」という答えにシビれた。
そして嫉妬にかられた時の対処法として「”今わたし、妬んでいるな”と自分をわかってやり、気持ちを終わらせる」「彼女に優しくされると腹立つとかあいつを見返すとか、相手に前のめりにならないこと」と話す。
「社会人になったら学生時代の友人と疎遠になり、一人でいることが多くなった。新しい友だちを増やしたいけど、作り方を忘れてしまって」という人には、「<一人で過ごしたくない>というのと<友だちが欲しい>を混ぜちゃいけない」と答える。
「距離を縮めるだけが友だちではない」「自分にとって不自然なことをしない」「人間関係を固定しようと思い過ぎない」など、読んでいて晴れ晴れが山盛り。はらはらもある。
「長年の男友だちに交際を申し込まれた。大切な親友と思っていたのに裏切られたようでショック」という女性に、「相手の好意に気づいていなかったはずがない。本当は感じていて、彼の気持ちを利用していたところは全くないと言い切れるのでしょうか」と切り込む。どきどきしちゃう。そのあと、ばななさんはていねいに「“男の親友だから”という自分の側の欲求だけで相手に甘えていたところもあるのではないでしょうか」「好意に甘えるという土台で人間関係を作って、それが破綻したとき相手を責めてしまうことは、してはいけない」と畳みかける。
本書には「厳しすぎ!」という声も寄せられたそうだけど、私は、こんな回答ができるなんて、ばななさんはどういう人生を、とその深さに思いを馳せ、頭を垂れたくなった。無傷の人にこんなことが言えるはずがない。それでもなお、フラットな口調がすごいと思うし、「私は二〇代から最前線で戦っていたから」という言葉が自慢も気負いもなくあっさり出てくることに打たれた。
「ママ友問題」や「友だちが自殺してしまった」など、シリアスの極致も出てくるけど、ばななさんの、寄せられた相談への心の開きっぷりが読みどころ。
友だちだけでなく、会社、家族に息苦しさを感じている人、あとぜんぜん悩みのない方も、 本書を読むと、ものすごく心の風通しがよくなると思う。