【第8回】間室道子の本棚 『ガール・イン・ザ・ダーク 少女のためのゴシック文学館』 高原 英理 著、編/講談社
「元祖カリスマ書店員」として知られ、雑誌やTVなどさまざまなメディアで本をおススメする、代官山 蔦屋書店 文学担当コンシェルジュ・間室道子。
本連載では、当店きっての人気コンシェルジュである彼女の、頭の中にある"本棚"を覗きます。
本人のコメントと共にお楽しみください。
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『ガール・イン・ザ・ダーク 少女のためのゴシック文学館』
高原 英理 著、編/講談社
* * * * * * * *
私の偏見だが、「暗闇に少年が一人でいる」。
ここから思うのは
「彼はいじめや虐待などで心身に傷みを抱えている、または世界征服をたくらんでいる」。
過去に触れてきた作品がほぼこのどちらかで、
つまり「闇の少年もの」は社会派かホラーしか思いつかないのである。
それに比べて「暗闇に少女が一人いる」。
これは豊かだ。彼女は笑みを浮かべているかもしれない。
その笑みは、安堵、ほくそ笑み、アルカイック・スマイルまでいろいろ。
泣いているとしたら理由は悲しみ?くやしさ?もしかすると嘘泣きかも。
無表情もいい。そうなら闇から出た彼女はなにをするだろう?
というわけで少女の闇から立ち上がる物語は、社会派、ホラーのほか、ファンタジー、
青春小説、ミステリー、純文学、なんでもござれである。
また、「少女」は必ずしも年少者を差さないと思う。
これも私の偏見だが「中二の心を持った42歳男性」。
たいていの人が「気持ちわるっ」となるだろうし、
いたら会社や家庭の中でうまくやっていけてないんじゃないかと思う。
でも「中二の心を持った42歳女性」は容易にイメージできるし、じっさいいる。
彼女たちは何食わぬ顔でばりばり働いたりご飯をつくったり電車に揺られたりしながら、
時を見計らって「14歳の自分」を開放している。
こんなことを考えたのも、
本書『ガール・イン・ザ・ダーク 少女のためのゴシック文学館』を読んで、
いったいこのひとは何歳なのかなあ、と思ったものがあったからだ。
ストレートに「小学生」と書かれていて、その年齢じゃないと成立しない作品もある。
一方、私が最も気に入った立原えりかの「トゲのある花束」には、
語り手である女性と、音楽会にいた少女と、男が出てくる。
このうち、本書のキイワードである少女のゴス性、
つまり「西洋由来のダークな意匠」であり「残酷」「耽美」「可憐」。
これを発揮するのは、音楽会の少女ではなく語り手なのだ。
彼女は、「うんとお金持ちになったら」と無邪気に語るけど子供とは限らない。
人は何歳でもお金があったら何をするか、夢見るからだ。
また語り手は男を「若い男」と言っている。
おそらく20代の青年なのだが、語り手の女性が10代の場合、
自分より少し上をこうは呼ばないと思うのである。
彼を「若い男」と言うなら、少なくとも自分は30代。
いや、いっそのこと語り手は老女である、と想像するとこのお話は深まる。
本書にはこんな、「少女」が何人か隠れている。
あなたのお気に入りは誰で、どんな世界を見せてくれるだろうか?
ここから思うのは
「彼はいじめや虐待などで心身に傷みを抱えている、または世界征服をたくらんでいる」。
過去に触れてきた作品がほぼこのどちらかで、
つまり「闇の少年もの」は社会派かホラーしか思いつかないのである。
それに比べて「暗闇に少女が一人いる」。
これは豊かだ。彼女は笑みを浮かべているかもしれない。
その笑みは、安堵、ほくそ笑み、アルカイック・スマイルまでいろいろ。
泣いているとしたら理由は悲しみ?くやしさ?もしかすると嘘泣きかも。
無表情もいい。そうなら闇から出た彼女はなにをするだろう?
というわけで少女の闇から立ち上がる物語は、社会派、ホラーのほか、ファンタジー、
青春小説、ミステリー、純文学、なんでもござれである。
また、「少女」は必ずしも年少者を差さないと思う。
これも私の偏見だが「中二の心を持った42歳男性」。
たいていの人が「気持ちわるっ」となるだろうし、
いたら会社や家庭の中でうまくやっていけてないんじゃないかと思う。
でも「中二の心を持った42歳女性」は容易にイメージできるし、じっさいいる。
彼女たちは何食わぬ顔でばりばり働いたりご飯をつくったり電車に揺られたりしながら、
時を見計らって「14歳の自分」を開放している。
こんなことを考えたのも、
本書『ガール・イン・ザ・ダーク 少女のためのゴシック文学館』を読んで、
いったいこのひとは何歳なのかなあ、と思ったものがあったからだ。
ストレートに「小学生」と書かれていて、その年齢じゃないと成立しない作品もある。
一方、私が最も気に入った立原えりかの「トゲのある花束」には、
語り手である女性と、音楽会にいた少女と、男が出てくる。
このうち、本書のキイワードである少女のゴス性、
つまり「西洋由来のダークな意匠」であり「残酷」「耽美」「可憐」。
これを発揮するのは、音楽会の少女ではなく語り手なのだ。
彼女は、「うんとお金持ちになったら」と無邪気に語るけど子供とは限らない。
人は何歳でもお金があったら何をするか、夢見るからだ。
また語り手は男を「若い男」と言っている。
おそらく20代の青年なのだが、語り手の女性が10代の場合、
自分より少し上をこうは呼ばないと思うのである。
彼を「若い男」と言うなら、少なくとも自分は30代。
いや、いっそのこと語り手は老女である、と想像するとこのお話は深まる。
本書にはこんな、「少女」が何人か隠れている。
あなたのお気に入りは誰で、どんな世界を見せてくれるだろうか?