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【第6回】絵本通信『さいごのゆうれい』を読んでスタッフ3人で座談会を開きました

瀬野尾:『さいごのゆうれい』は「かけがえのない5年生の夏休み」を田舎のおばあちゃんの家で過ごすっていう身近な設定ですよね。
それに加えて「下がりゆくソックス」みたいな誰でも共感のユーモアも混ざってて、とても入りやすいって思ったんです。 でもそこで出会うのはゆうれいだし、その後の展開は迫力あって決して手の届く範囲だけの物語ではないんですけど。

石山:主人公のハジメの生きている世界はほとんど僕たちの住んでいる日本と変わらないけど、悲しみや後悔のない世界。
SFのような設定でありながら斉藤倫さんの詩人としての比喩表現だったり心地よい文章のリズムもありつつ、ハジメの「冒険」が進んでいく。いろいろな要素が混ざり合って、ワクワクしながら読みました。

岸田:SFやファンタジー、児童書というジャンルの境界線まで、何の違和感もなく行ったり来たりできているのがすごいですよね。
読み終わった後、何か新しいジャンルを見つけたような不思議な気持にもなる。
今後、色々な方に読まれて、もしかしたら「この本は○○というジャンルの先駆けになった本だ。」なんて事になってもおかしくないですよね。

石山:まえがきで大きなテーマを提示しながら、登場人物の過去と一緒にどんどん謎が解き明かされていくところに惹き込まれました。
間違いなく子どもの読書にむけて書かれた本なんだけれど、読んでいる間はそういうことを全く意識しなかったです。純粋に面白い本を読んだというふうに思いました。
絵本を読んだときに、これは絵本としてどういう面白さがあるんだろうって考えることがありますけど、『さいごゆうれい』に関しては、児童書としてはどうなんだろうということを思わなかった。それはたぶん、この本が有無を言わせず、児童書で、そういう児童書としてちゃんと完成度のたかいところで成立している本は、大人が読んでも、これは子ども向けだとかそんなことを感じることなく、ただただ物語に没頭して楽しめるからなんじゃないかと思いました。

瀬野尾:その冒頭の部分なんですけど、ここ読んで「うわ、斉藤倫さん天才」って思ったんです。
「じだい」についての話が、偶然なんだろうけどまさに「今」っていう実感がすごくあって、この感覚が『モモ』に通じるものがあるというか。『モモ』は20年前に読んでも今読んでも「これ今の話」って思わされちゃう、だから「これ今の話」ってなるのはひょっとしたら普遍的な要素が入っちゃってるんじゃないかと。そしたらこの本、もう(後世に)残っちゃう。

石山:古くなるところもないです。
10年後に読んでそういう時代だったんだってところがない。古臭くなる表現やものがないからずっと読めますね。
あと、この本は斉藤倫さんの比喩含めた描写を想像する楽しさがすごくありました。ゆうれいの世界と人間の世界をロールキャベツで表現するのもそうだし、風にゆれる草と水草を楽器に例えたり、普段想像したことのないものを想像できた。

岸田:言葉だけでも想像力が働くんですが、私のおすすめポイントはツチカさんとの画のコラボレーションですね。この画がついてると斉藤さんの比喩表現がより一層わかりやすい。
人間の世界とゆうれいの世界で絵のタッチが描き分けられていることで、またぐっと文章が引き立つんですよ。
ツチカさんの絵で幽霊の世界が私たちの今いる世界に似てるのは、私たちの世界が「かなしみやこうかい」がある世界だからですかね。物語を読む上で画の力って大事。私の中では、斉藤さんの書籍はいつも「挿絵はこの人しかいない!!」という人が抜擢されてるんですよ。今回も素晴らしいタッグですよ。テーマが大きい分、ツチカさんの画でよかった。重々しくならずに済んでるのかもしれない。
斉藤さんが書く文章が、毎回ぴったりな絵を引き寄せてるんですね!!すごい!!

石山:すごく描きこまれた風景にシンプルな線で登場人物がいてコントラストになってる。
リアルな世界にキャラクターと一緒に読んでいる僕らも入り込んでいるような不思議な感覚になりました。

瀬野尾:田舎の風景とかすごくきれいでしたね。
普通のこと言いますけど、西村さん漫画家さんなのでふとした仕草とかものすごくうまいなって。それにテキストのユーモア要素もちゃんと拾ってくれてますよね。

岸田:ユーモアといえば、私の一番気に入ってるのは網でハジメを捕まえるところ笑。あの場面のシュールさと、登場人物たちの気持ちとリンクした絵がなんとも言えないです。
あとネムちゃんの扉から顔を出して首かしげてるところが素晴らしいです。
私はゆうれいさんにお会いしたことないですけど、きっとネムちゃんというゆうれいはこういった行動をするんだな……と、この絵で妙にネムちゃんの存在に納得させられました。
 
 

瀬野尾:物語のなかでハジメが回想するのは、かなしみやこうかいがない「大幸福じだい」のできごとなんですけど、ある程度生きていればこのかなしみやこうかいって、誰もが心のなかに抱えているものですよね。それが結構刺さる物語でもあると思うんです。

岸田:確かに、駆け引きなしにこのテーマ扱えるのはすごいです。
それをさらりと持っていけてるところが更にすごい。
あとやっぱり斉藤さんのいいところっていうか、最後の部分の比喩は素晴らしかったです。眺めてる飛行機、乗ってる飛行機、着陸した飛行機の、この一節があるが故、物語が終わっても、その後の希望が強いというか。

瀬野尾:テーマが重くもあるけれど、最後まで読めば読み終わった後は暖かさが残るってことですよね。
斉藤倫さんの作品は読後感が格別だと思っていますが、今回も期待を超えて、むしろやられた感すらありました。
私たちは大人目線でしか読めないのかもしれないけど、実際の小学校5年生はどう読むんだろうって。すごく聞いてみたいですね。
 
 
 
『さいごのゆうれい』
斉藤倫・作/西村ツチカ・画/福音館書店
 
(Yahoo!ショッピングへ遷移します)
 
 

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瀬野尾
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