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及川の部屋Vol.3『北欧ジャズピアニスト、LARS JANSSON(ラーシュ・ヤンソン)の魅力』

北欧ジャズの巨匠といえばこの人、ラーシュ・ヤンソンについて今回は語ります。
彼の出すアルバムは決まって、代官山 蔦屋書店のお客様より毎回ご好評をいただいており、多くの人に愛されているジャズピアニストといえるでしょう。
まずは、彼のリリースしているアルバムの中から4枚ご紹介します。

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■More Human(販売のみ)
胸を打つ美しく清らかなメロディーで人気の高いオリジナル作品から、ラーシュ自身が厳選した15曲を改めてレコーディングした、注目の初セルフ・カヴァー集。
 
 
おすすめ曲:15.Hope

■Everything I Love(販売のみ)
北欧の巨星、ラーシュとオーヴェ・イングマールソン(サックス)が10年ぶりに再会。斬新なアイデアに溢れる瑞々しい作品。カルテット編成なので、ラーシュのピアノが、また一段と新鮮に聴こえてきます。
 
おすすめ曲:11.Giving
 
■What’s New(レンタル可)
ラーシュの唯一のスタンダード集。やはり、当たり前のスタンダード演奏とは一線を画していて、彼ならではの美しいメロディライン、開放的な美意識で卓越した才能を発揮しています。
 
おすすめ曲:4.What’s New

■Facing The Wall(販売のみ)
 
おすすめ曲:1. Prelude To A Restless Mind.
 
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聴いていると、やはり他のピアニストとの違いを感じます。
北欧全体のイメージとしては、内に秘める何か籠るものを感じる曲が多いけれど、ラーシュ・ヤンソンはどんなCDをつくっても、ジメッとすることがなく、いい意味でカラッとした開放感があるのです。

メッセージ性の強いジャズというより、押しつけの無い大人のジャズ。
日本文化でもある禅の精神を愛していることもあってか、肩の力を抜いて聴けて、少しばかりユーモアも感じられる。それがラーシュのオリジナリティだと思います。

彼との出会いは20年前―。
初めてラーシュのHOPEという曲の演奏を聴き、涙が出たのを覚えています。
思い入れがあるアーティスト以外、泣くことなんてなかなかないのですが、当時聞いた時の感動と、心が洗われたようなあの感じは、今でも忘れられません。

そこから10年以上日本で数々の仕事をご一緒させて頂いたという縁があってか、今回Anjinでのコンサートを開催できることとなりました。
(さすがラーシュ、すでに満員御礼です。)
これだけ大物になった今でも、人と人とのつながりを大切にしている人間性は本当に素晴らしいと思います。

今となっては思い出話として語れますが、当時冷や汗ものだった、ペダル折れ事件。
とあるコンサート当日―。
朝一で調律師が調律の作業を始めます。
私が信頼を寄せている、ベイゼンドルファーを調律できるという、日本でも数少ない資格をもつ彼が、青ざめてこう言いました。

『ペダルが折れています...。』

聞けば前日はロックコンサートが行われており、激しい演奏に伴い折れてしまったそう。そしてそのまま翌日を迎えてしまったのでは、との事でした。
フルコンサートで使用する一番大きなピアノになるため、ちょっとやそっとじゃ代替は見つかりません。

苦肉の策で調律師が取り出したものは、なんと、割り箸。

それを挟み込み、添え木のようにしてペダルを踏めるようにし応急処置を施しました。
とはいえ本番、この割り箸が折れてしまってはどうしよう…
そんな不安がぬぐえない状況で、本番を控えたラーシュが言った一言は、『大丈夫だよ。』でした。(笑)

本番はというと、無事成功。
割り箸が挟まっているので、ペダルを踏むときに音が出てしまうのですが、なんとその音さえも曲の一部にしてしまうという、素晴らしいコンサートとなりました。

この時私は、ラーシュの事をいろんなピアノを弾いてきた百戦錬磨のピアニストだと思いました。
ほかの楽器は持ち運べても、ピアノだけは持ち運ぶことは難しく、会場にあるピアノを使用する事も多く、いろんなピンチを乗り越えてきたのではないでしょうか。

同じようなエピソードを、マイルスのサイドメンを務めたケイ赤城さんから聞いたことがあります。
とある村での演奏で、調律したことのないようなピアノを前に、唖然としていると、マイルスが言った一言。
『かっこよく弾きなさい。』

大物と呼ばれるミュージシャンたちには共通点があるようです。
誰に対しても垣根を作らず、むしろ親切。
保守に走ることなく若い人と交流し、新しいことへどんどん挑戦したいという好奇心が強い。
ピンチをチャンスに変え、成功に導く。
そうして波が波を伝っていくように、周りへと広がり、音に乗ってこちらへ伝わってくる。

ジャズとは、変化していくものです。
昨日と同じバンド、同じ曲、同じ機材で、今日演奏した曲が昨日と同じではいけない。
即興で音を楽しむ。
そしてその変化を楽しむ。
それがジャズ。

スタンダード曲とよばれる、60年も前の曲が演奏され続けているのも、その曲を忠実にそして完璧に演奏するのではなく、毎回新しいアイデアで取組み、聴き手を楽しませるスタイルがジャズにはあるからです。
奏でる人によって曲調が変わるから、知っている曲でも、より新鮮に感じるのです。

その代わり、聴き手側も厳しいです。
毎回変り映えのしない演奏を聴き、途中で席を立ってしまう時もあるほど。
マンネリは許されないのです。

クラッシックやジャズは高いテクニック、芸術性があり、愛され続けてきました。
ただ、クラッシックにはなくてジャズにあるものは大衆性。
だから100年以上たった今も敷居を上げることなく生き残ってきたのではないかと思うのです。
 
さて、少々長くなってしまいましたが、なにはともあれラーシュ・ヤンソン、聴いてみてください。
 
桜の開花宣言が発表され、春の輪郭がくっきりと見えてきましたね。
そんなこの季節にぜひ聴いて頂きたい曲ばかりです。
 
 
ジャズを聴いてみたいけれど、どこから手を出したらいいのかよくわからない...
そんな方へ、代官山 JAZZ トークも開催しています。
次回は3月26日に開催です。
http://real.tsite.jp/daikanyama/event/2017/03/jazz-vol38-1.html

そしてこのブログを通して、みなさんに少しでもジャズを知ってもらえたら大変嬉しく思います。



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及川 亮子
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