【第4回】代官山映画オヤジの部屋『フォードVSフェラーリ』

『フォードVSフェラーリ』、これぞ男磨き映画の決定版!

映画の楽しみ方は千差万別。よく女性誌などで"恋愛指南になる映画"だとか"人生を豊かにする映画"といった特集記事を見かけますが、実は映画オヤジにはあまり響かないのです。【映画の骨格】である【1スジ、2ヌケ、3ドウサ】がきちんとしている作品がオヤジの好物です。要するに、まずは物語が観客を引き付けるものであるか、そしてそのお話がどのような映像で映し出されるか、最後に演じている俳優が輝いているか、です。

2019年度作品で、その3大要素をすべて兼ね備え、素晴らしい作品になったのがマット・デイモンとクリスチャン・ベイルの2大スター共演、ジェームズ・マンゴールド監督作品の『フォードVSフェラーリ』(以下『FvsF』)です。今回は待望のパッケージ発売を記念してご紹介いたします。

冒頭に記した女性誌的文言に当てはめるなら、これこそ最高の“男を磨くために最適な映画”と言えるでしょう。フォードという巨大企業の中で、理想の車でル・マン24時間耐久レースに挑む2人の男の友情と葛藤を描いています。もっと言うなら葛藤というより闘いです。企業VS企業はタイトル通りですが、それ以上に個人VS組織、そして男VS男です。大きな壁に挑む男たちはなんと美しいのでしょう!

本編を見ていただければ、これこそ男が惚れるタイプの映画と断言できますが、映画オヤジは基本的にストーリーの紹介はしません。更に車のことについてもよく知りませんので、車好きの方の見かたとも異なるでしょうが、まず知ってほしいのは、この映画を作ったジェームズ・マンゴールドという職人監督の事です。

彼はキャリア35年のベテラン監督です。1997年のシルベスター・スタローンの『コップランド』で注目されます。2005年には『ウォーク・ザ・ライン 君につづく道』でリース・ウィザースプーンにアカデミー賞主演女優賞を獲らせます。『3時10分、決断のとき』という2007年の西部劇では、ラッセル・クロウとクリスチャン・ベイルを使って、男の決闘(西部劇ですからガン・ファイト)を描きました。そして、アメコミ映画の監督もマーベル・スタジオから請け負い2017年に『LOGANローガン』を発表しました。

『FvsF』でクリスチャン・ベイル演じるケン・マイルズというドライバーには妻と子供がいて、映画は家族の絆も描きます。監督のキャリアを見渡せば、すでに夫婦の映画としての傑作『ウォーク・ザ・ライン~』があり、父と子供という図式については『LOGAN』(見事な応用編です)で提示して、アメコミ映画の枠を越え評価されました。そして、『コップランド』は腐敗した警察組織に立ち向かう郡保安官の物語と、すべてが監督の得意とするテイストが『FvsF』に内包されているのです。そういった意味では、この映画はマンゴールド監督の集大成とも言えるでしょう。

主役の二人以外で、一言だけ。息子のピーター・マイルズ役のノア・ジュープという子役の名前は憶えておきましょう。『ワンダー君は太陽』『クワイエット・プレイス』と話題作に出演、この作品でも見事な演技を見せて本当に将来が楽しみな男の子です。映画の楽しみは、こうした新しい才能に出会うことでもあるのです。

そう言えばクリスチャン・ベイルだって『太陽の帝国』でデビューした時は、まだ13歳でした。そこから我々は彼の活躍をもう30年以上に渡って追っかけていることになります。長く俳優を見続けることは映画ファンにとって最大の醍醐味(監督も然り)なのです。

それはマット・デイモンでも同様です。彼は年齢を重ね本当に素晴らしい俳優になりました。この映画でのキャロル・シェルビー役はケン・マイルズに比べると地味な分だけ、実は映画俳優的には損なのですが、それを敢て受け止める側に立てる年齢になったのだなぁ、と長く見てきて感慨深いものがありました。

今回はパッケージ発売の案内でもあるのですが、本当はこの映画は、まずは映画館で見ていただきたい作品です。それもIMAXのような大きなスクリーンであれば、後半のレースシーンで、更に満足度が上がります。アカデミー賞では音響編集賞と編集賞の2部門を受賞しましたが、その効果は正にその後半に大きく発揮されます。簡単にソフトで映画が観られる時代にはなりましたが、映画館で見てこその作品を作り続けていくことが出来ているのが、実はハリウッドの底力なのです。

でも、現在の社会状況は映画館鑑賞を許してはくれませんので、ここは外出を我慢して【お家でエンタメ】として、この『フォードVSフェラーリ』をご覧ください。代官山 蔦屋書店のオンラインストアでお申込みいただければ、ご自宅まで配送させていただきます。また、今回はTSUTAYAオリジナル特典のステッカーの他にも、代官山 蔦屋書店でご予約いただいたお客様だけに【代官山 蔦屋書店オリジナル特典ステッカー】が特典として付きますので、この機会に是非お申込みください。(2020年4月30日 9:00まで予約受付中)
 

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代官山 蔦屋書店 映像担当コンシェルジュ
吉 川  明 利
 
【プロフィール】
小学校6年で『若大将』映画に出会い、邦画に目覚め、中学3年で『ゴッドファーザー』に衝撃を受け、それからというもの"永遠の映画オヤジ"になるべく、映画館で見ることを基本として本数を重ね、まもなく47年間で10000本の大台を目指せるところまで何とかたどり着く。2012年より代官山 蔦屋書店映像フロアに勤務。

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