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【第5回】代官山映画オヤジの部屋『TENET』

クリストファー・ノーラン監督は、究極の【映画オタク】である!

2018年、映画『2001年宇宙の旅』の製作50周年記念イベントとして、70㎜フィルムによる上映が全世界で実施されました。

残念なことに現在の日本の映画館では、70㎜フィルムが掛けられる映画館はすでになく、やむなく上映場所は京橋にある国立映画アーカイブとなり、スクリーンの 大きさには不満が残りました。
しかし、その後IMAX仕様でのデジタル上映もTOHOシネマズを中心にして実施され、多くの観客があらためて『2001年』の魅力を堪能しました。
その仕掛人こそが、クリストファー・ノーラン監督でした。スタンリー・キューブリック監督への愛を公言し、更にフィルムの力を信じ、映画はフィルムで撮ることと見ることにこだわる、今では絶滅危惧種とも言うべき監督です。
 
『2001年』好きは、『インターステラー』を見れば明白です。
また『インセプション』で見せた後半のアクション・シーンは明らかに『007』でした。

その後、彼は『007』好きを声高に叫び、シリーズの次回作を監督させて欲しいというコメントが様々なメディアに載るようになりました。で、結局ノーラン監督は、そのキューブリック好きとスパイ映画好きを、合体させた映画を自分で作りゃいいんだ、と産まれたのが『TENET テネット』と言う訳です。
こうした自分の趣味嗜好を優先させて、映画製作をしていながら決して独りよがりの自己満足作品にしないところが彼のもっとも凄いところ。

では、『TENET』のどこが、キューブリック的なのか?ということになりますが、これは後半に繰り広げられる【市街戦】です。これは明らかに『フルメタルジャケット』です。登場人物たちの近くに寄るキャメラ、地を這うようなアングル、すべてが『フルメタル~』からの影響が見て取れました。そして、話を追って行くと途中で置いてけぼりを 食い、"凄いんだけど、なんかよく分からなかった"という声が聞かれましたね。
話のプロットは世界の滅亡を目論む悪を倒し、地球の平和を守るエージェント、というスパイ映画のパターン、ただそれだけです。だから難しく考えることはないのです。ノーラン監督はすでに前半に、この映画の見方を教えてくれています。
"考えるな、感じるんだ"というセリフです。
あまりにも有名な『燃えよドラゴン』の名セリフです。
そして、実はカンフー・アクションばかり語られがちですが『燃えよドラゴン』もスパイ・エージェント映画という共通点もあるのです。

こうして感じる映画、究極の体感系映画の元祖こそ『2001年』だという事実にたどり着き、これまたキューブリックに戻ってくるという訳です。
【市街戦】も、無事決着し、男同士の会話で"これが美しき友情の終わりだな"というセリフが出てきてビックリしました。
これは名作『カサブランカ』のラストシーンのハンフリー・ボガートとクロード・レインズの"これが美しい友情の始まりだな"を拝借しています。
このように本当にノーラン監督は、究極の【映画オタク】なのですね。

でも、よく考えると彼は優秀で律儀なビジネスマンでもありました。『TENET』に登場する、彼がリスペクトしたこれらの作品『フルメタルジャケット』も『燃えよドラゴン』も『カサブランカ』も、すべてワーナー・ブラザース映画なのです。
マーケティング戦略重視で製作している会社では決して作ることは不可能な、自分の映画を自由に作らせてくれるワーナー・ブラザースに感謝を示していると見るのは、あながち間違ってはいないと思うのですが、いかがでしょうか?
 

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代官山 蔦屋書店 映像担当コンシェルジュ
吉 川  明 利
 
【プロフィール】
小学校6年で『若大将』映画に出会い、邦画に目覚め、中学3年で『ゴッドファーザー』に衝撃を受け、それからというもの"永遠の映画オヤジ"になるべく、映画館で見ることを基本として本数を重ね、まもなく49年間で10000本の大台を目指せるところまで何とかたどり着く。2012年より代官山 蔦屋書店映像フロアに勤務。
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