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【ブログ meganegoshi】
マルセル・デュシャンと日本美術展
こんなにたくさんのデュシャン作品が東京に?!
しかも日本美術と接続するの?

前日の台風の暴風の音でなかなか寝付けず…
少し寝不足で迎えた朝ですが、10月1日は待ちに待った「東京国立博物館・フィラデルフィア美術館交流企画特別展 マルセル・デュシャンと日本美術」の内覧会! 気合いを入れて家を後にします。


 

台風一過で、まあ暑い。上野公園が一気に夏休みの雰囲気に戻っておりました。台風で落ちた葉っぱや枝で遊ぶ子どもたちを横目に東京国立博物館へ。

マルセル・デュシャン(1887-1968)は20世紀の美術に衝撃的な影響を与えた美術家です。物が持つ本来の用途や機能を剥奪し、意味を置き換え作品化する「レディ・メイド」という作品概念を提唱し、この概念から生み出された《泉》は、みなさんも1度は見たことがあるかもしれません。

「デュシャンと日本美術」展はフィラデルフィア美術館のデュシャン・コレクションで構成する展覧会が自館以外で開催されるはじめての機会で、それらを日本美術品と比べて見ることのできる今までに無い斬新な切口の展覧会!なぜ、こんな貴重な展覧会が実現できたのか。フィラデルフィア美術館と東京国立博物館の長い交流があったからこそとのこと。まさに、東京国立博物館だからこそ実現できた展覧会ですね。

 


「マルセル・デュシャンと日本美術」展会場入口。中央の作品は《自転車の車輪》1964(レプリカ/オリジナル1913)


写真は展覧会入口で、ギャラリートーク中の松嶋雅人さん。東京国立博物館の研究員でデュシャンと日本美術展の仕掛け人です!

これまでに「黒田清輝」展「びょうぶとあそぶ」展「なりきり日本美術館」、東京国立博物館以外でも「俺たちの国芳 わたしの国貞」展などをプロデュース。著書には『あやしい美人画』(東京美術)、『細田守 ミライをひらく創作のひみつ』(美術出版社)。さらに調査研究以外にも細田守監督作品への設定協力をされるなど、様々な角度や視点から美術館/博物館を紹介する機会をたくさんプロデュースされていらっしゃいます。そして、今回はデュシャンと日本美術というかけあわせ。
松嶋さん!いつも、ハッとする視点を投げかけてくれてありがとうございます!

本展は「第1部 デュシャン 人と作品」「第2部 デュシャンの向こうに日本がみえる。」の2部で構成されています。

まずはデュシャンの部屋から。
展示はデュシャンの絵画の部屋「画家としてのデュシャン」から幕を開けます。
左に見えるのは《チェス・ゲーム》(1910、油彩、カンヴァス)。この時からすでにチェスが主題になっているのですね。そうそう、デュシャンは1921年に自らの天職が芸術からチェスにかわったと言っているほど、プロのチェスプレイヤーのようにチェスに没頭していたのですよ。


「画家としてのデュシャン」の部屋展示風景。
左の作品: 《チェス・ゲーム》(1910、油彩、カンヴァス)
右の作品:《デュムシェル博士の肖像》(1910、油彩、カンヴァス)


この絵を少し進むと《階段を下りる裸体 No.2》が見えてきます。実は、今回の展覧会で、私が一番見たかった作品です。というのも、とても個人的な想い出にのっとってしまうのですが…。デュシャンというと《泉》が真っ先に思いつく人が多いかもしれませんが、私のデュシャンとの出会いは《泉》ではなく、この絵でした。

幼稚園とかの頃でしょうか。結城昌子さんの『ひらめき美術館』(小学館)という絵本を愛読していたのですが、そこにこの絵が載っていたのです。ダ・ヴィンチの傑作「モナ・リザ」にはじまり、ゴッホ、ゴーガン、モネ、ルノワール、ピカソ、ダリ、ミロとかいろいろのっているのですが、一番、目と心に残っているのが《階段を下りる裸体 No.2》でした。なんだか知らないけど、妙に心がざわつく絵だなあ、だけど好きだなと思いながら、絵本の中で楽しんでいました。そんな絵と日本で対面できる日がくるなんて感動です。

その後、「第2章 ’芸術’でないような作品をつくることができようか」と「第3章 ローズ・セラヴィ」「第4章 《遺作》欲望の女」と展示は進みます。第2章では、デュシャンが絵画をやめた後のデュシャンの行く先を追っています。瀧口修造と東野芳明が監修して1980年に制作された東京大学駒場博物館蔵の《彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも》(通称《大ガラス》)や、《泉》(レプリカ 1950/オリジナル 1917)もこの章で見ることができます。 第3章では、自らの分身として「ローズ・セラヴィ」と名付けた女性になりすまし、ダジャレなどの言葉の実験を試みた作品や、それとほぼ同時期に没頭していたチェスに関する資料も。そして、デュシャンの部屋の最終章では、デュシャンの最後の作品《与えられたとせよ 1.落ちる水 2.照明用ガス》(通称《遺作》)を映像で見ることができるとともに、アイディアノートなどが展示されているので、デュシャンが遺作を製作するまでの軌跡に触れることができます。

そして、日本美術の部屋へ。
入ってすぐのところは、壁が真っ黒です。よーく目をこらすと、黒い壁の前に長次郎の黒楽茶碗《むかし咄》が展示されています。何でしょう、この気持ち。見るやいなや手にとって包みたくて仕方のない衝動にかられます。覗き込むとスーって吸い込まれてしまいそうでした。利休の薄暗い茶室でも、きっとこの展示室のように、周囲にとけこみながらも、すごい存在感を放っていたのでしょう。

その隣には、千利休作と伝えられる《竹一重切花入 銘 園城寺》が、すくっと立っていました。なぜ竹の花入れに、黒楽茶碗?
この章のタイトルは「400年前のレディメイド」。千利休は精巧に作られた器ではなく手捏ねで作られた黒楽茶碗を茶室に持ち込み、床には既存の花器ではなく竹を花入れに見立てて飾りました。この利休の美意識と、身の回りのものの意味と用途の変換は、デュシャンのレディ・メイドの概念と通ずるところがあるのかもしれません。

そのほかに、日本美術の部屋は「日本のリアリズム」「日本の時間の進み方」「オリジナルとコピー」「書という‘芸術’」という章立てで展示されています。


「デュシャンの向こうに日本がみえる。」の展示風景


展示されている作品も粒ぞろいですが、デュシャンを通じてみることで、それまでと違った顔が見えてくるはずです。
なぜ日本美術の部屋はこの章立てなのか、なぜこの作品が選ばれているのかを考えながら見ることで、松嶋さんがデュシャンから何を抽出したのか、デュシャンがわたしたちにどんなメッセージを送っていたのかがよりわかるかもしれません。

デュシャンの作品がそうであるように、本展は鑑賞という行為を超えて考察をせざるをえない、みなさんの知的好奇心を掻き立てる展覧会といえるでしょう。

銀座 蔦屋書店では本展の開催記念フェアを11月11日まで開催中です。本展の図録はじめ、デュシャン関連本、ヴィトゲンシュタインの言語ゲーム、黒瀬陽平さんのデュシャン/ゲーム論が掲載されている『ゲンロン8』、デュシャンを意識しているというアランさん作のボードゲーム「ゾンビマスター」などなどご用意しております。展覧会とあわせてぜひ、おたのしみください!
 

【展覧会情報】
東京国立博物館・フィラデルフィア美術館交流企画特別展
「マルセル・デュシャンと日本美術」
会期:2018年10月2日~12月9日
会場:東京国立博物館 平成館 特別展示室第1室・第2室
住所:東京都台東区上野公園13-9
電話番号:03-5777-8600(ハローダイヤル)
開館時間:9:30〜17:00(金土、10月31日、11月1日 〜21:00) ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月、10月9日 ※ただし10月8日は開館
料金:一般 1200円 / 大学生 900円 / 高校生 700円 / 中学生以下無料
WEBhttp://www.duchamp2018.jp/
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【関連フェア情報】
東京国立博物館・フィラデルフィア美術館交流企画特別展
「マルセル・デュシャンと日本美術」展 開催記念
ARE YOU READY (MADE)?
マルセル・デュシャンと考える。
会期:2018年9月24日~2018年11月11日
WEBhttps://store.tsite.jp/ginza/event/art/3456-1625270925.html
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