【菅原敏 詩集『かのひと 超訳 世界恋愛詩集』×五人の陶芸家】池田優子×エミリー・ディキンソン「愛される1時間」編

5人の陶芸家が、詩集『かのひと 超訳 世界恋愛詩集』から一遍の詩を選び、その詩にインスパイアされ制作した作品を、銀座 蔦屋書店BOOK(文具)にて展示販売いたします。(3月20日(火)~)
発売を記念し、エミリー・ディキンソンの「愛される1時間」を選んだ池田優子さんにインタビューを行いました。

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ここ最近、一段とコンセプチュアルな表現に挑む池田さんが今回こだわったのは釉薬。焼き上がりの発色を想像しながら、数日かけて数種類の釉薬をペイントするように施していきます。ひとり想像力を駆使して色を重ねる作業は、生涯のほとんどを自宅で過ごしたディキンソンが、詩作に没頭する姿と重なります。甘く官能的な空気を纏った器は、全ての理性を投げ打ってしまう、「恍惚の一瞬」を捉えたかのよう。池田さんのディキンソンへの深い敬愛も感じられる、オマージュともいえる作品です。

-なぜこの詩を選んだのですか?
池田:エミリー・ディキンソンが気になる作家だったのでおのずとこの詩にも興味を持ちました。原文からはもう少し簡潔で静かな印象を受けますが、菅原さんの超訳により、さらに甘く切なく静かではげしい…そんな詩になっていたところにも惹かれました。

-この詩をどのようにイメージ(器)に転換されたのか教えてください。
池田:菅原さんが超訳されたこの愛の詩を器に転換する際に焦点を当てたかったのは、やはり愛し合う時間そのものでした。愛し合う時のどうしようもない充足感、生まれて良かったと思う程に満ち足りた、そんな愛の1時間を器で表現してみたいと思いました。

-ディキンソンについて、何か思い入れやエピソードがあれば教えてください。
池田:引きこもりの元祖のような彼女の人生にはやはり興味を抱いてしまいます。もともと私は少し偏ったひとに惹かれるのです。外の世界を見ずに家にこもり詩を書き続けた彼女。その果てしない想像力におののき、そのひたむきさには愛おしさを感じます。

-今回、詩から器を作ってみて、いかがでしたか?率直な感想を教えてください。
池田:お話頂いた時にはワクワクしました。焼きあがったうつわがまとう空気感のようなもの。それをいつもよりさらに追いかける時間でした。

-ありがとうございました。

【プロフィール】
池田 優子 (いけだ ゆうこ)
1973年大阪府生まれ。プラットカレッジ(米)サンディエゴ校グラフィックデザイン科修了。帰国後、独学で作陶を始める。柔らかく繊細な曲線と、ニュアンスのある色使いが特徴。和と西洋が同居するようなデザインは、アートピースのような存在感を放つ。

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構成:銀座 蔦屋書店 石谷

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