【本のBATON Vol.17】土地の持つちからと不思議|Beauty & Healthコンシェルジュ 佐藤

 土地の持つちからと不思議

 

土地の持つちからや不思議さに、どうしようもなく惹かれ続けます。心の中の記憶。
浅い部分の記憶はすぐに掘り起こされ、いつでも取り出せるけど、自分自身でも忘れていたような記憶が、土地を通して鮮明に呼び起こされることがある。

街、場所、お店、…いつかここにあったものと、今はもうないもの。その不確かさと確かさが、頭と心の空白にいつも語り掛けてきます。

 

『ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス』 滝口 悠生/著 新潮社
 
人生にいくつかある、忘れようのない記憶。それらがつながり、今の体験と混ざり合うとき、大きな閃光のような激しい激情が目の前に現れる。 日々の光景と言葉は積もり、自分を解放するカウントダウンは知らず知らずのうちにはじまっている。
 
 
『なつかしい時間』 長田 弘/著 岩波書店
 
長田弘さんの詩には五月がたくさん出てくる。いろんな場所に生命力があふれる季節。緑のうつくしさ、太陽の光のやわらかさ、風のここちよさ。
大地と心と体が繋がりやすい気候。「なつかしい」と感じる心の背景には場所や土地が密接に関わっている。
 
 
『あわいゆくころ』 瀬尾 夏美/著 晶文社
 
住んだことのない、訪れたことのない土地にも人がいるという当たり前の事。壊れてしまった土地の記憶と生きていく覚悟、離れて生きていく覚悟。心の傷が掘り起こされる瞬間には、なにもかもを竜巻のように巻き込む激情が隠されている。そのあとの凪のような内観。激情。内観。その土地にあったことの上に生きる人たちを、知る事、目を逸らさない事。
 
 
『本を抱えて会いにいく』 橋本亮二/作 十七時退勤社
 
言葉を交わした瞬間。今この場所で起こっている事なのに、もう次の瞬間には過去になっている。確かにあった出来事。振り返ると小さなとても小さなピースの一つ。そう思える事に、人が生きていく事に対しての果てしない許しを感じる。信じる。そうして生きていく。街、本屋、人、場所、言葉。
 
 
『公園へ行かないか?火曜日に』柴崎 友香/著 新潮社
 
『高校生のころ、授業中はいつも小説を書く用のノートを教科書の下に広げていて、なにか落ち込むことがあったのだと思うがそこに「共感する」と百回くらい書いたことがあった。その時考えていたのは、人の気持ちがわかることは、誰かと同じになることは絶対に、絶望的に絶対ないのだから、できることはただ共感することだけだというようなことだった。』
この文章に、どれだけ自分の心が救われたかわからない。
 
 
プロフィール:Beuaty&Healthコンシェルジュ 佐藤
1985年福岡生まれ大阪育ち。小学生の頃、図書室のブラックジャック、江戸川乱歩に夢中になり、外で活発に遊びながら本にも夢中になる。食べる事、手や頭を動かすことに興味があり調理の仕事へ。自然食や欧風料理の調理場を経験した後、子供の頃に助けてもらった本に携わる仕事がしてみたいと思い立つ。大阪・心斎橋の「アセンス(実用書担当)」、「スタンダードブックストア(文学・デザイン・アート・ファッション・カルチャー担当)」を経て同社へ。本に携わる中で、日々の作業を積み重ねていく事の意味、お客様に本を届けるために考え抜き、企画する事の難しさや楽しさ、それらが伝わる瞬間の喜びを知る。たった一冊でいいから、ずっと共に生きていける本と出会ってほしいという思いはもちろん、本屋には人とのかけがえのない出会いがあることを知る。本と人、二つの軸が、取り組んでいく全ての事に対する信念。大阪の本屋を盛り上げたいという志も、静かに燃やし続けている。
 
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