浦和 蔦屋書店の本棚Vol.5『三体Ⅱ』劉 慈欣/早川書房
待ちに待った三体続編が刊行です。壮大なスケールと次々飛び出すアイディアで大きな話題を呼んだ三体、当店HPにて“傑作”と紹介しましたが、期待をさらに超えてくる“超傑作”といっても過言ではありません。第一部も間違いなく面白かったのですが、本作を読み、本当の三体はここからだ!!と興奮を塗り替えられました。
以下で本作を紹介しますが、第一部の顛末のネタバレを含むので、未読の方は今すぐ『三体』を読んで下さい。新しい世界が待っていますから。
前作では三体文明と地球文明のファーストコンタクトが描かれました。そこで明らかになったのは侵略のため三体文明の艦隊が動き出し、約400年後に地球へ到達するという事態です。本作ではついに両者が激突することになります。当然迎撃の準備をするのですが、そこには大きな問題が立ちふさがっています。三体が地球へ送り込んだこの極小のスーパーコンピューター、智子(ソフォン)の存在です。まず素粒子実験の妨害により物理学の基礎研究の発展が妨害されてしまい科学技術の飛躍が望めません。もう1つが監視です。通話会話紙面などのあらゆる情報が三体側にリアルタイムで筒抜けになってしまいます。この絶望的状況で地球が打ち立てる対抗策が“面壁計画”(ウォールフェイサー・プロジェクト)。智子の監視に対して唯一隠すことができるもの、それが思考です。選ばれた面壁者(ウォールフェイサー)は莫大なリソースを使い作戦を立案しますが、その真意を自分以外の他社に読み取られてはなりません。対して三体側に与する地球人の組織からは面壁者の計画を読み取ってその計画を打ち砕くための破面人(ウォールブレイカー)が送り込まれます。4人の面壁者が如何にして三体文明と対峙していくのかが物語の大筋です。
前作でも突出していたエンターテインメント性は本作でさらに磨きがかかります。なんといっても面壁計画というアイディアです。希望を託されたヒーロー。時に崇拝され時に中傷されながらの孤独な闘い。もてる知をすべて費やす頭脳戦。作戦の宇宙規模のスケールと外連味。果てしない広がりを見せる時間・空間。圧倒的敗北と絶望。やがてたどり着く宇宙の残酷な真理。読んでいる最中、カッコよさに何度ため息がもれたことか・・・。劉慈欣先生の博識とストーリーテリングがいかんなく発揮され、何が起きているのかとハラハラ読み進めるとアッと驚く種明かし。これを次々と畳みかける怒涛のスペクタクル。どの切り口からでも滅法面白いので、読後の感想をいろいろな人と語り合いたくなる作品です。前作を読み終わった時にも思ったことですが、やはり続編が気になって仕方ない最高の小説です。次回はどんな世界を見せてくれるのか・・・。
文芸担当:唄