浦和 蔦屋書店の本棚Vol.10『中原中也詩集』中原中也
詩を読まれたことはありますか?
詩は世界中どこの国にもあり、その国々の言語の美しさを隅から隅まで味わうことのできる特別な文学です。日本の著名な詩人としては、谷川俊太郎、高村光太郎、宮沢賢治、金子みすゞ、萩原朔太郎などが挙げられます。
今回は「詩の魅力」を、上記の詩人たちにも引けを取らないであろう、詩人・中原中也の遺した作品とともにご紹介させていただきます。
詩には何が必要か。
私は言葉の滑らかさだと思っています。
黙読と音読、そのどちらでもするすると読める、気持ちの良い日本語が詩の醍醐味ではないでしょうか。
中原中也の作品の一つ『サーカス』には、
「ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん」
という一節があります
正直、意味はよくわかりません。
しかし、実際に声に出して読むと
水が流れるように、さらさらと言葉がでてきませんか?
意味もわからないのに、なぜか口ずさんでしまう。そこに詩の魅力が隠されているのだと思います。
詩の楽しみ方は他にもあります。
それは純粋に文を読んで、その先の物語を考えることです。
同作者の『春日狂想』という作品の一節に
「愛するものが死んだ時には、自殺しなけあなりません」
というものがあります。
強烈な一文ですが、この一文だけで詩の中の物語が想像できる人も多いのではないでしょうか。
短い詩の中から、続きの物語、あるいはそこに至るまでのストーリーを想像(創造)するもよし。またある時は、気に入った一節を見つけ、その語感を味わうもよし。
詩の楽しみ方は千差万別、無限大に広がっています。
そして今回ご紹介する詩集に収録される中で、私が最もおすすめする作品は、「一つのメルヘン」というものです。
たった4連で構成された本作の中には、幻想的な世界を構築するすべてが詰まっています。
この詩を読んで、私がどう思ったかはあえて語りません。
詩を読んで感じたこと、考えたことを胸に秘めておくのもまた、
詩の楽しみ方の一つだと思っているからです。
詩という文学は、私という読み手の心に素敵な秘密を運んできてくれました。
たった一節、されど一節。
あなたの心に美しい秘密をもたらす、そんな詩を見つけてみませんか。
文芸担当:細矢