浦和 蔦屋書店の本棚Vol.15 『三体』劉 慈欣

商品紹介
2021年01月03日(日) - 01月31日(月)

昨年12月より始まった「浦和蔦屋書店の本棚」。

今月、遂に一周年を迎えることとなりました。

いつもご覧いただき誠にありがとうございます。

 

今回は一周年を記念して、

「浦和蔦屋書店の本棚」記念すべき第一冊目の本、

劉慈欣(リウ・ツーシン/りゅう・じきん)の『三体』が持つ魅力をいま一度、

そしてSFへ苦手意識を持つ方へ向けて、SFというジャンルへの接し方をご紹介いたします。

 

改めまして、今回『三体』を紹介させていただく私は、第一回目を執筆した担当者と違い「SF初心者」です。

『三体』を読むまでは、SF小説自体ほとんど読んだことがありませんでした。

唯一読んだことがあるものといえば、星新一先生の作品ぐらいです。

そんな私が初めて挑戦した本格長編SF『三体』。

SF初心者の目線から、その魅力をお伝えさせていただきます。

 

*今回改めてご紹介するにあたり、作品のあらすじは「浦和蔦屋書店の本棚 Vol.1」に掲載されているので省かせていただきます。ご了承ください。

 

はじめに私からみた本作の魅力ですが、第一に「読みやすい」ということが挙げられます。

正直、本作の事はSF+翻訳文学という読みづらく重そうなイメージから敬遠していました。けれどいざ読み始めてみると、意外な程すらすらと読み進めることができました。その理由は、簡潔で理解しやすい翻訳文です。「読みやすい」ことは、物語を読むうえで何よりも大切な事の一つではないでしょうか。

次に「国内文学では類を見ない壮大なスケールの物語」が二つ目の魅力として挙げられます。世界中?いいえ、地球そのものが巻き込まれる展開は圧巻の一言です。

最後に、本作には実際にあった歴史を基にした人間ドラマが物語に織り込まれており「文学としての面白さ」も兼ね備えている点が、登場人物に深みを与えながら純文学的魅力も創り上げています。

 

以上が本作の魅力なのですが「そうは言っても、SFって難しそう」と思う方もまだまだいらっしゃるかと思います。

でも大丈夫。

私もいわゆる文系人間なので、理系の分野はさっぱりです。

SFに登場しそうなイメージのある物理学や量子力学など微塵も理解できません。

私の物理学に対する理解に至っては中学生の時に止まっています。

そのことも相まって、これまでSFというジャンルを敬遠し続けてきました。

しかし実際にSF作品を読んでみると、SF小説に登場する科学は作家独自の「空想科学」であることに改めて気づかされました。

SFファンの方は「何を当たり前のことを」と思うかもしれません。

しかし、現実の科学が理解できなければSFというジャンルは楽しめないと思っていた私にとって、「空想科学」というモノは現実の科学を理解してなくても楽しめるということが衝撃だったのです。

悪魔の実・影分身の術・斬魄刀・呼吸法・精神と時の部屋・魔法少女etc…。

よくよく考えてみれば、幼いころからマンガやアニメの世界で慣れ親しんだ彼らも、言い換えれば「空想科学」の世界の住人なのです。

現実の科学はわからなくても、作品に登場する独特な設定や固有名詞を、作中の説明だけで十分に楽しんできた経験が皆さまにもたくさんあると思います。

本作も同じ。

本作ならではの「空想科学」は、作中でしっかり説明してくれます。

だから大丈夫。

読めばわかる、読まなければわからない。

単純にそういうことだったのです。

「空想科学」はファンタジー、ファンタジーは「空想科学」なのです。

ファンの方々からは怒られそうですが、

SF小説もファンタジー小説も、いっそ全部同じジャンルだと思うことにしています。

現実の科学が理解不能な私は、そう思い込むことでSFへの苦手意識をなくすことにしました。

SF小説もファンタジー小説の一種だと捉えると、不思議と身近に思えてきませんか?

 

 

今回の「浦和蔦屋書店の本棚」では、SF初心者の目線からみた『三体』の魅力と、私流のSFというジャンルへの接し方をお伝えさせていただきました。

SFが好きな方には、「読みやすい」「これまでにないスケール」「純文学的魅力」という三拍子が揃った傑作SF『三体』に、是非とも挑戦して頂ければと思います。

そしてSFへ苦手意識を持つ方には、ご紹介させていただきました私個人のSFへの接し方・考え方がSFという一大ジャンルを理解する一助になることを願っております。

 

P.S. 『三体』が持つ面白さは「浦和蔦屋書店の本棚 Vol.1」でより深く紹介されていますので、こちらも併せてご覧になっていただければと思います。

 

文芸担当:細矢

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