【222通信】Vol.1 サリーン・チェンと齋藤拓実①


222の記念すべき1回目の展示はサリーン・チェンと齋藤拓実。

[プロフィール]
サリーン チェン Sarene Chan
Art Director / Graphic Designer / Illustrator。1990年香港生まれ。香港理工大学デザイン学科卒業。現地では新聞社でデザイナーとして勤務しながら、フリーランスイラストレーターとしても活動。‘16 年香港ヤングデザインタレント賞を受賞。‘17 年来日し㈱キギに入社。
 
齋藤拓実
Graphic designer / Art director/ Coffee people 1993年新潟県出身。東京造形大学卒業。石岡怜子デザインオフィス、J.C.SPARKを経て、2019年に独立。独立と同時にAllright所属。個人レーベルRough主宰。
 
【ふたりを選んだ理由について】
222の企画が持ち上がった時、高田唯が齋藤拓実を打ち合わせに誘った経緯があり、初回展示は手探りだし、話の流れがわかる彼がいいね、とひとり目は即決。
もうひとりは齋藤拓実が声をかけて、サリーンに決定。
と、もともと知り合いだった二人だけれど、社員として働くサリーンと、フリーランスの齋藤拓実という働き方の違う組み合わせだったから、どう進んで行くのか、どんな内容になるのか私たちも興味津々だった。
本当は展示をすることが決まった時点でふたりと対話がしたかったけれど、初回の慌ただしさでそれが叶わなかった。残念。
設営を終えたふたりと行った対話を、展示風景とともに前編・後編2回に分けてアーカイブしました。



【8/17設営後の対話:前編】
何が大変だったか、というのではなく、設営までの準備期間に何を感じたのかを言語化してほしい。二人の間の印象的だったやりとりなどもぜひ教えて欲しいと言う前段があり、対話はスタート。
※高田舞・以下 舞) 
※齋藤・以下 齋) 
※サリーン・以下 サ) 
 
舞) 展示の話の前に聞きたいことがあって。普段生活していて、今、自分がやりたいことはやれているなと満足している?
それともまだまだ?どういう状態?自分自身の満足度を教えてください。

齋) 全然日常には満足していないですね。
嬉しいこともあるし、楽しい仕事もちょこちょこ来るようになったし、This one(日本グラフィックデザイン協会のアワード出品作品の中から選考委員が最も興味を持った作品1点に、自由にコメントを寄せるもの)に選んでもらって嬉しかったけど、目標としているところにはまだ全然至ってないなと思います。
新しい仕事をやったときに悩むこともまだまだあるし、満足はしていないです。
でもちょっとずつ進んでる気もするからそこは単純に喜べるかなあ。
 
舞)  どういうのが満足という状態?感覚?
 
齋) (満足というのは)継続的なことだと思っていて。
やりたい表現も全然やりきれていないし、やりきった感覚も今はまだないです。
そこを感じられたら満足するのかもしれないけれど、やりきること自体そもそもないのかなとも思います。
デザインしてうまく行ったなと感じた瞬間は満足はするんですけど、2、3日たったらさあ次、みたいな。きっとこれからもその連続だろうから、満足するって一瞬のことだけかなと僕は感じます。
だから、いつこの質問をされても今満足してるかといったらしてないって言いそう。笑
とはいえ全く満足してないわけじゃない。というちょっとめんどくさいタイプな気がしますね。色々動いて、感じて確認してると安心します。なので一瞬でも仕事がなくなると落ち込みます。
 
舞)  仕事があることがモチベーションなんだ?


 
齋) 割とそうかもしれないです。
落ち込んでて妻になんでそんなに落ち込んでるの?って言われて気づく、みたいな。

サ) 満足っていう気持ちってなんなんだろうって今はまだ考えているところです……。
そもそも、自分がどこまでいけるのか、何ができるのかがずっと探りたいことで。日本に来たのもそんな理由が大きいです。
香港にいたときは新聞社で働いていたんですね。
そこではちょっと違う分野のデザインと、イラストとかをやっていたんですけれど、描いたイラストをデザイナーさんに渡したら、たまに違う世界観ができてしまったりして。
だから自分がグラフィックまでできたらどうなるんだろうって、それを知りたくて日本のグラフィック業界にやって来ました。
そして、この世界に入ってここまで進んで来て、頑張ればこなせるかも、となんとなくわかってきたんだけれど、これ(グラフィックデザイン)が私の全部なのかいまはまだ(わからない。というか)全部だと思ってないし、ずっとこういう方向で進むべきなのか、それでいいのかも今はわからなくて。
なので、デザインさえできれば満足とは言えないかもしれない。
そもそも他のことも色々できるだろうし、やりたいとも思うので。
ただ今は時間をここ(デザイン)にかけないと成長できないのかなとも思っています。
そう思いつつ、たくさんの時間をここだけにかけなきゃいけないことに対しての不満(焦り?)もある……。
ので、難しいですね。モヤモヤします。笑
 
舞) 今の環境だと、かな?
 
サ) はい。なので、満足しているようで、不満もあります。
 
舞) 二人の立場が違うこともあるのかな?フリーと社員の違いというか。
 
サ) KIGIにいることはとても満足なことです。
ただ、同世代のデザイナー達を見てみると、同じような道をみんな歩いている気がして。
何歳までにこういうことをやって、何歳までにこういう仕事をやって、
こういうブランドと仕事をやったら自分の力を証明できる、みたいな流れがルールみたいになっちゃってないかなって。
ルールの通りにできたらみんなと同じで安心。でも同じくできたからって……満足かな?
というのは今まさに感じていることなんです。

後編に続く
 



222(ツーツーツー)とは?
代官山 蔦屋書店の建築・デザインコンシェルジュとして日々企画展を運営する古屋涼子、グラフィックデザインのかたわら多くのイベントや企画展/個展を開催してきたAllrightの髙田唯/髙田舞を中心としたプロジェクトチーム。ロゴは平山昌尚。このブログでは、222でキュレーションした展示における様々な対話をアーカイブしていきます。
Instagram:https://www.instagram.com/222_two.two.two/

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