【第4回】今井義浩の本棚『monk: Light and Shadow on the Philosopher's Path』(Phaidon)刊行記念

京都哲学の道に佇む、1軒のレストランmonk。

提供しているのは、彼自身の目で選び抜かれた食材を新窯で調理した、シンプルな料理ですが、食べ手の「五感」に訴え、心に残る時間をも届けています。

毎日畑に足を運ぶことで感じる、自然の偉大さや四季の移ろい。

日々、目にする全ての美しいもの。哲学。パッション。

今井氏が影響を受け、自身の料理に映し出す"源"となっている本15冊を、ご本人のコメントと共に味わっていただきます。(全5回)
 

【9冊目】一日一花/川瀬敏郎/新潮社

 
花人、川瀬敏郎さんが2011年から2012年にかけて、一日一日花をいけ、言葉を添えられた写真集。それぞれの花の美しい表情と、研ぎ澄まされた川瀬さんの一言一言に、はっとさせられます。静謐に、日々重ねられるその仕事は、一瞬で移ろいゆく季節そのものを讃える詩であり、祈りのようです。美しいとはどういうことか、私にとって日々の仕事で大切にするべきことはどういうことか、その揺るぎない指針の一つとなっている本。
 
 

【10冊目】陰翳礼讃/谷崎潤一郎/中央公論新社

 
谷崎潤一郎が描写する羊羹や椀物。そのゾクゾクするような美しさと色気。料理に対する瞑想的という表現。今回「Light and Shadow」をメインテーマに私の本を執筆するにあたり、この陰翳礼讃の存在は常に頭にありました。谷崎は哲学の道周辺を愛し、自身の墓所もmonkのすぐ近くの法然院に定めています。夜中によく通るその門前には、吸い込まれてしまいそうな深い闇が今も存在しています。執筆中、その闇は通奏低音のようにずっと私の中を流れていました。
 
 
 

【11冊目】緒方 野趣と料理/緒方俊郎/青幻舎

 
京都の日本料理店、「緒方」。私は残念ながら未だ伺う事ができていないのですが、この本を通して緒方さんの仕事と哲学に触れ、圧倒されています。ここまで削ぎ落とせるかというシンプルな一皿一皿、それは揺るぎない技術と食材への信頼、そして深い哲学と自信があるからできること。このような厚みのある本物の仕事を前にした時、自分自身の青さに言葉を失い、同時にまだまだ先は長い、深い事に嬉しくもなります。最近出会った料理本の中で一番感動した一冊。
 

【プロフィール】
今井 義浩 (いまい・よしひろ)
1982年茨城県生まれ。
エンボカ京都シェフを経て、料理写真集"CIRCLE"を出版。
その後フリーランスの料理人として旅をしながら料理を作る。
2015年末、京都にて自店"monk"をオープン。
2021年、Phaidon社より"monk: Light and Shadow on the Philosopher's Path"を出版。
 
 
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料理コンシェルジュ
田中

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