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【第3回】絵本通信 『怪物園』のできるまで―その1 Cozfish祖父江慎さん、藤井瑶さんにインタビュー取材してきました!

字のない絵本『Michi』、「の」でつながる不思議な世界を描いた絵本『の』に続き、福音館書店からjunaidaさんの新刊『怪物園』が刊行されました。
前作『の』で、junaidaさんの唯一無二な作品世界を、すみずみまで凝らされた工夫によって、本の「形」や「印刷」で表現してみせたのが、今作『怪物園』でもブックデザインを担当する、コズフィッシュの祖父江慎さんと藤井瑶さんです。
『怪物園』の、そしてjunaidaさんという作家の魅力に、ブックデザインという視点を入り口にして迫るべく、刊行間近の11月下旬、中目黒のコズフィッシュ事務所にお邪魔して、お二人にお話をうかがいました。
 
祖父江慎さん(祖父江)・藤井瑶さん(藤井)


祖父江:それでは『怪物園』とjunaidaさんのことについてのお話会がはじまります。
私がADの祖父江と申します。そしてこちらがダラララララン、デザイン担当の、

藤井:コズフィッシュの藤井と申します。

――お二人が、junaidaさんとお仕事をされるのは、『の』につづいて2度目ですよね。

祖父江:そう。『の』ではじめてお仕事したときに、びっくりしたんです。junaidaさんのラフってもうかなり丁寧だからね。もう出来上がってるのかと勘違いするぐらい丁寧。

藤井:本のサイズにあわせてラフを描かれるので、ページ数含め、こういう本を作りたいという全体像がすでに出来上がっているんです。

祖父江:絵本の絵って普通は、本の仕上がりのサイズよりも、130%とか少し大きめに描くんですけど、junaidaさんは仕上がりと同じサイズ、原寸で描くんです。しかも下書きの段階ですでに原寸で、それに、なんとなくここに人がいます、木が生えてますとかじゃなくて、きっちり描かれてたりする。

藤井:下書きの段階で、完成形のイメージにかなり近いところまでもっていくんですよね。

祖父江:多分絵を描きつつ、作品の全体の構成、流れも同時進行しているタイプで、あんまり物語と絵とが分離してない人なんだなと思います。



藤井:本になることを前提に描かれている方だなと感じます。絵があります、これを本にしたいんですけどどうしましょう、ということじゃなくて、本という構造も含めて、junaidaさんの頭の中にもう全部がある感じ。

祖父江:そうですね。流れとか絵の順番とかを常に考えている。あと、こういう絵が描きたいから、ここに置いてみようみたいな感じのグラフィック的な観点からの物語作りもしているんじゃないかなあ。
 


「いつ」でも「どこ」でもなく

藤井:『怪物園』は、絵の上に文字が乗るというのがjunaidaさんの絵本としては初めてなんですよね。

祖父江:『Michi』も『の』も、もちろん絵本ではあるけれども、ぱっと見たときに、分かりやすく従来の絵本と差分があったんです。『怪物園』はいかにも絵本らしいっていう姿をしているけれど、じつは、内容の差分が大きいんじゃないかなって気がします。だから視覚的には、よく見る絵本の形にしたいっていうことで、絵の上に字を初めて乗せるっていうことになったんですね。

藤井:なので、デザインもいわゆる絵本らしさを意識して、書店に並んだときに一般的な絵本に紛れるように考えました。

――一般的な絵本らしさに紛れるためのデザインとは、具体的にどんなものですか。

祖父江:タイトルの大きさですとか、書体とか。このタイトルは、藤井さんがわりとありがちなイメージの明朝体をちょっと加工してつくったんですね。
 
藤井:王道っぽい、クラシカルなところを出しつつ。細部に手を加えてます。タイトルと著者名がセンター揃えでど真ん中に来るというのも、普段あまりやらないんですけど、怪物園の場合はそれが似合ってしまう珍しいケースでした。



祖父江:この絵本は、時代感もわからない感じなんで、今風というとちょっと違うけれど、過去の絵本ぜんぶをこうまとめて、ちょうどいいあたりっていうのを探った感じね。タイトル文字のこの色もそうだよね。どんな色ですと、一言で言えないような明るいオレンジ色も。

藤井:白だと冷たい印象によりすぎてしまって。

祖父江:絵本がすごい元気だったころ、60年代的なニュアンスが感じられるんですよ。それとあとやっぱり、この黒い表紙っていうのもね、今あんまり見ないけれども、60年代は、けっこう黒い表紙っていうのも、なんかいいものとしてあったね。

藤井:不思議なたたずまいの本ですよね。junaidaさんという著者の名前とも相まって、いつの、どこのものかわからない感じになる。でも、絵は色鮮やかだし現代的。


色も物語

――怪物たちが怪物園から抜け出してしまう場面が印象的で、蛍光インクを使っているのかなと思ったのですが。



祖父江:って、つい見えますが目の錯覚です。原画には、印刷では出ないような色が使われてたんだけど、普通に4色で刷ったら、意外にも特色使ったかのように見えてしまう不思議さ。これはびっくりしましたね。初校の時から驚いたよね。きれーって。

藤井:これは今回、製版で最後までねばったポイントです。正確に原画の色を再現しているわけではないんですが、原画から受ける印象、夜の月の光の怪しさだったり、なんとなく青がぼうっと光ってるような印象は原画にかなり近いんじゃないかと思います。

祖父江:暗いのに青が光ってる感じがする。どっちもいいんですよ。原画もいいし印刷もいい。いい絵っていうのはね、どう変換されてもいいのかも知れないね。注意してないと、印刷したときに色が変な転び方するけども、すてきだなと思う絵って、それなりのルール下で製版されると、どんなふうになっても「いいな」っていう部分は残ってくれる。

藤井:実は蛍光インクは、子どもたちの場面に使っていて、前半の怪物たちの場面にはあえて入れていないんです。でも、後半子どもたちと怪物の世界が交わり始めるところで、初めて怪物たちのところにも蛍光ピンクが入るんです。

祖父江:ここの怪物たちが全員正面向いているところから、蛍光ピンクが使われてます。それで、怪物たちの色味がここで急に変わって、鮮明になるんです。色も、物語の展開と連動している。


王道の絵本の佇まいを目指しながら、フォーマットに乗るのではなく、物語を造本でも表現しようとする創意工夫と、デザイナー視点の絵本の見方に圧倒されっぱなしです。
 

キッズコンシェルジュ
瀬野尾 真紀
 
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