【ギャラリーEN ウォール】井上りか子 個展「楽園の人々 / Folks in Paradise」

アート
2025年05月10日(土) - 06月03日(火)

《20241223》380×455mm / 油彩・ステンレス / 2025

 

  • ・概要

作家 井上りか子による個展「楽園の人々 / Folks in Paradise」を店内のGALLERY EN ウォールにて開催します。本展では、井上が2024年から新たに取り組んでいる「対話プロジェクト」に基づく新作シリーズ約12点を展示します。「対話プロジェクト」とは、作家と参加者が1対1で様々なテーマについて語り合う試みです。

井上はこれまで、ヨーロッパ、東・東南アジア、南北アメリカなどを旅する中で、人種や宗教、文化の違いによって引き起こされてきた戦争の歴史と、言葉が通じない他者との間に生まれる共感や慈しみの感覚について思索を重ねてきました。そして、主に絵画作品を通じて、人間がつくり出す世界に存在する痛みや哀しみ、愛情や許しなどについて表現してきました。悲惨な歴史的出来事から、ばかばかしいホームビデオのような日常の一場面まで、平坦かつ等価に捉えられた井上の絵画には、世界で起こるあらゆる出来事をある種のドライな距離感で見つめる作家の視点が表れています。本プロジェクトは、SNSやニュースといった不特定多数を対象とした観察から、個人対個人というミクロな関係性に目を向け、その対話の中で交わされた言葉を引用し、再構成することで作品に昇華しています。展覧会タイトル「楽園の人々」は、「現代において人類はすでに“楽園”に到達しているのではないか」という、ある対話の中で交わされた言葉に着想を得ています。

今回の対話の対象者は、いずれも現在の日本に暮らす人々であり、世界の中でも比較的生きやすいと思われる現実の中に生きる私たち自身の姿が映し出されているのかもしれません。

 

《20250112》295×415mm / 油彩・木製パネル / 2025

 

  • ・本展によせて

私たちは、言葉という記号を通じて、どこまで他者を理解できるのでしょうか。 ある日、ある時間に、他者と共有された思考、概念、そして言葉。それらは、その瞬間には確かに「存在」していたものの、やがて変化し、あるいは忘れられていくものでもあります。 人と人との間に起こる考えの違いや衝突は、対話においてごく自然に生じることです。それは対話を通じて解きほぐされることもあれば、どれだけ言葉を尽くしても互いに理解しきれないこともあります。また、一つの単語でさえ、解釈や受け取り方の違いによって齟齬が生まれることもあります。これはソシュールが言語の恣意性について語った通り、言葉と意味の関係が絶対ではないことを示しています。

ソシュールが「物事は言葉によって立ち現れる」と述べたように、私もまた、人の思考は言語化されることで初めて輪郭を得て、そしてそれを他者と共有したとき、この世界に存在したことになると考えます。 本作では、私と他者との対話の中で実際に発せられた言葉を素材とし、それらを再構成したテキストを媒体に配置しています。こうして表示された言葉(シニフィアン)は、観る人にそれぞれ異なる意味(シニフィエ)を想起させます。 美術史においてワードアートは主に英語で表現されてきました。しかし現代においてフォントにより書かれた言葉であれば翻訳アプリでその意味を知ることが可能になっているため、今回はあえて翻訳アプリが読み取れるようにフォントを反映させるためにスクリーンプリントを活用しました。

差異と重なりのなかに、私たちが生きるこの世界の複雑さが浮かび上がるのではないか——本作は、そのような問いを投げかける試みでもあります。そして本展は、そのようにして得られた個々の視点を通じて、私たちの「生」そのものについて考察することを目的としています。

(井上りか子)

《20250119》205×310mm / 油彩・木製パネル / 2025

 

  • ・作品販売について

展示作品は5月10日(土)10:00より、店頭にて販売します。また、一部の作品はアートのオンラインマーケットプレイス「OIL by 美術手帖」でも、5月12日(月)11:00から6月3日(火)23:59の期間ご購入いただけます。

\オンラインストアで購入する/

販売期間|5月12日(月)11:00 ~  6月3日(火)23:59まで
 
 
  • アーティストプロフィール

井上 りか子 / Rikako Inoue

1997年、東京都生まれ。2021年、武蔵野美術大学 造形学部 油絵学科 油絵専攻を卒業。

主な展示歴

<個展>

2022 「魂は皮を剥いた桃のように」 biscuit gallery(東京)

2020 「悲しみにくちづけを」 LOKO GALLERY(東京)

2019 「シュランムフィッシュ」GALLERY b. TOKYO(東京)

<グループ展>

2024 「grid3」biscuit gallery(東京)

2023 「grid2」biscuit gallery(東京)

2022 「grid」 biscuit gallery(東京)

2021 「15th Art Award Tokyo Marunouchi」丸ビル1階マルキューブ(東京)

2021 「Z_01」銀座six6階アートウォールギャラリー(東京)

<受賞>

2022 「第25回グラフィック1_Wall」長崎訓子選

2020 「第9回FACE2021」椿玲子審査員特別賞

2019 「第55回神奈川県美術展」大賞

2018 「第47回シェル美術賞」藪前知子入選

<奨学金>

2019 「守谷育英会美術奨励賞」

 

  • ・展覧会情報

井上りか子 個展「楽園の人々 / Folks in Paradise」

会期|2025年5月10日(土)~6月3日(火)

5月21日(水)、22日(木)は店舗を休業しています

時間|10:00~20:00 

会場|京都岡崎 蔦屋書店 GALLERY EN ウォール

主催|京都岡崎 蔦屋書店

入場|無料

お問い合わせ|075-754-0008(営業時間内)

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