今年の6月に一般社団法人more treesより、代表で建築家の隈研吾がデザインを手がけた新作「KODACHI」が発表されました。京都岡崎 蔦屋書店のフェアではKODACHIのほか、隈研吾が過去に手掛けたプロダクト「TSUMIKI」や書籍もご紹介しております。
ぜひ店頭にてご覧ください。
□KODACHI誕生について
2007年、音楽家 坂本龍一が森林保全団体「more trees」を創立しました。
2023年、坂本が逝去。その遺志を継ぎ、代表に就任したのが坂本の40年来の友人でもある建築家 隈研吾です。
坂本が森に遺した静かな旋律は“おとづれ”(音連れ)となって隈のもとへ。
音と建築、異なる表現で自然と向き合ってきたふたりは今なおかたちをかえて対話を続け、KODACHIという棚が生まれました。「棚」という漢字の右側にある朋は「友、仲間」を意味します。
それが「木」と組み合わさることで、棚は崖に沿い木材で棚のように張り出して作った道、「かけはし」を意味するものとなりました。気候変動、森林破壊、生物多様性の喪失——かつてない速度で自然のバランスが崩れ、地球の未来が不確かさを増すいま、人と自然を、都市と森を、そして現在と未来をつなぐ「かけはし」となりたい。KODACHIは、そんな祈りを暮らしの片隅に息づかせていきます。

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木々の中に浮かんでいるような棚をデザインした。
以前デザインしたTSUMIKIの断面を縦に伸ばして柱とし、
それを棚板のエッジに沿ってランダムに配置することで、
棚の上に置かれた「もの」が柱によって見えたり隠れたりする…
そんな森の中で「かくれんぼう」をしているような、
楽しげな風景を生み出したいと考えた。
―――デザイナー:隈研吾―――

■隈研吾(くまけんご)
1954年生。1990年、隈研吾建築都市設計事務所を設立。以来、「自然と技術と人間の新しい関係を切り開く建築」をテーマに、世界50カ国以上でプロジェクトを展開。
代表作に「V&A Dundee(スコットランド)」「竹屋(中国)」「根津美術館」「高輪ゲートウェイ駅」などがある。2015年には森林保全団体more treesのオリジナルプロダクト「TSUMIKI」のデザインを手がけ、2023年より同団体の代表に就任。2024年には、ノーベル平和賞のためのインスタレーション制作をmore treesが担当するなど、建築を超えて木や森と社会をつなぐ活動にも取り組んでいる。
(photo: ©Designhouse)
□想像力をかき立てるKODACHI
2005年6月25日(水)に誕生したKODACHIは単にモノを安置する家具ではなく、使い手の想像力を呼び覚ます"小さな森”です。天地や前後を入れ替えても美しく成立する柔軟さと、ランダムに配置された柱が象徴する遊び心。
何を置くか、どこに置くか、どう組み合わせるかといった使い手のアイディア。デザインと想像力を掛け合わせることで、多様な風景を立ち上げることができます。
素材には、反りや収縮の少ない北海道産の化粧合板を採用。脚部には“つみきの三角”を想起させるデザインが施されています。

□プロダクトの特長:苗木の植樹
KODACHIを1個ご購入につき、TREES FOR SAKAMOTOを通じて高知県梼原町の森に1本の苗木が植えられます。梼原町は、坂本龍一がmore treesを立ち上げた2007年当初から活動を共にしてきた、いわば原点の地。同時に、木材を活かす独創的な隈研吾建築が生まれるきっかけとなった梼原町は、隈の原点ともいえる場所です。「梼原という特別な場所に呼びよせられ、惹きつけられ、木の使い方を学んでいった」(隈)
坂本と隈、ふたりの森への祈りが重なる地に、KODACHIが苗木を届けます。KODACHIを迎えることが国産材利用を通じた林業や木材産業の活性化を後押しするとともに、植樹によって日本の森を育てることにつながります。
□more treesとは
一般社団法人more trees(モア・トゥリーズ)は、 音楽家 坂本龍一が創立し、建築家 隈研吾が代表を務める森林保全団体です。加速する森林破壊と地球温暖化の危機的状況に行動を起こすために、坂本龍一、細野晴臣、高橋幸宏、中沢新一、桑原茂一の5名が発起人となって、100名以上の賛同人とともに2007年に設立されました。「人類は森とともにありました。森が崩壊したところでは文明が滅んでいきました。今、世界中で森林が崩壊しています。これは人類文明全体の滅びへの警告と言えるのではないでしょうか。」
坂本の創立メッセージはこうはじまります。人類にとって欠かすことのできない森を大切にしていきたい。後々の世代へと受け継いでいきたい。立場や考え方の違いを超えてポジティブに響く「more trees」という名のもとで、私たちの活動ははじまりました。