【展覧会】上野裕二郎の個展「TransformedLegacy」を5月18日(土)より開催。中国の神話「龍生九子」を、独自の解釈と気迫溢れる筆のストロークで表現する。
展示・展覧会
2024年05月18日(土) - 06月10日(月)
京都 蔦屋書店では、上野裕二郎の個展「Transformed Legacy」を、2024年5月18日(土)~6月10日(月)の期間に5Fのエキシビションスペースにて開催します。
▼概要
▼作品詳細
概要
上野裕二郎は、東洋思想の「気」の思想をベースとして、東アジアで伝統的に描かれてきた龍や虎、鳥などの生き物をモチーフに描くアーティストです。それらを取り巻く目には見えないエネルギーや揺らぎを、具象と抽象を織り混ぜながら、鮮やかな色彩と筆のストロークで表現しています。
本展では、中国神話から、龍が生んだとされる姿形の異なる九匹の子を表す「龍生九子」をモチーフに、上野が独自の解釈で描いた連作を発表します。また、江戸時代の絵師、岸駒(がんく)と岸岱(がんたい)が描いた虎図から着想を得た新作「虎の子渡し」や、京都にルーツがある鵺(ぬえ)や麒麟(きりん)をモチーフとした作品など 、上野がテーマのひとつとする古典の再解釈を提示した作品約15点を展示します。
作品詳細
※作品左から
「龍生九子 ー饕餮ー /The Nine Sons of the DragonーToutetsuー」
「龍生九子 ー狴犴ー /The Nine Sons of the DragonーHeikanー」
「龍生九子 ー蚣蝮ー /The Nine Sons of the DragonーHakaー」
サイズ|各H1455×727mm
素材|キャンバス、アクリル、油彩
制作年|2024年
「龍生九子 ー饕餮ー /The Nine Sons of the DragonーToutetsuー」
「龍生九子 ー狴犴ー /The Nine Sons of the DragonーHeikanー」
「龍生九子 ー蚣蝮ー /The Nine Sons of the DragonーHakaー」
サイズ|各H1455×727mm
素材|キャンバス、アクリル、油彩
制作年|2024年
アーティストステートメント
西洋美術における大きな関心事の一つが「存在の表現」だったとすれば、対照的に、東洋では古来、物質と精神が不可分であり、すべてが流動的かつ相互に影響を及ぼし合うという「気」の思想が育まれてきました。
私は絵画制作を通じて、実在・非実在の生き物をモチーフに、それらが持つ「気」や外界との相互作用、そして物質と精神の観念的な流れに迫ることを表現の主題としています。「気」は世界の構成要素を陰と陽で説明する思想と密接に関連しており、私の作品では、陰と陽のようないくつかの対立概念(東西、過去と現在、具象と抽象、存在と非存在など)を取り入れています。
こうした表現を追求する上で、私は自己の感覚を解放する手段として筆勢に着目し、それを重層的に重ねていく手法を取っています。私は筆さばきで対象の気韻生動を捉えるという東洋絵画の伝統を参照しつつ、素材や技法面では西洋絵画の文脈を踏襲し、歴史や文化を継承しながら新たな表現として提示することを意図し制作しています。
「龍生九子」連作では、中国神話を題材に、龍が生んだとされる九頭の特徴の異なる生き物を独自の解釈で捉え直しました。これらの生き物は歴史を通じて建築や刀剣などの装飾としても用いられてきたモチーフであり、そうした背景を踏まえつつ、掛け軸のような大きさのタブローとして展開しています。
また、「虎の子渡し」の作品では、江戸時代後期の画家である岸駒とその息子の岸岱の「虎図」に着想を得ています。ちなみに「虎の子渡し」とは中国の故事で、虎の母親が三匹の子ども(うち一匹は豹で、豹は虎の仲間と考えられていた)を一匹ずつ対岸まで渡す際、子どもたちを一匹ずつにしておくと豹が虎を食べてしまうため苦労したという説話です。
このように、本展覧会で は、私の問題意識のひとつで ある古典の再解釈と絵画的応用に焦点を絞る内容となっており、特に東アジ アの故事や古典絵画に基づ く作品を中心に展開しています。
私は絵画制作を通じて、実在・非実在の生き物をモチーフに、それらが持つ「気」や外界との相互作用、そして物質と精神の観念的な流れに迫ることを表現の主題としています。「気」は世界の構成要素を陰と陽で説明する思想と密接に関連しており、私の作品では、陰と陽のようないくつかの対立概念(東西、過去と現在、具象と抽象、存在と非存在など)を取り入れています。
こうした表現を追求する上で、私は自己の感覚を解放する手段として筆勢に着目し、それを重層的に重ねていく手法を取っています。私は筆さばきで対象の気韻生動を捉えるという東洋絵画の伝統を参照しつつ、素材や技法面では西洋絵画の文脈を踏襲し、歴史や文化を継承しながら新たな表現として提示することを意図し制作しています。
「龍生九子」連作では、中国神話を題材に、龍が生んだとされる九頭の特徴の異なる生き物を独自の解釈で捉え直しました。これらの生き物は歴史を通じて建築や刀剣などの装飾としても用いられてきたモチーフであり、そうした背景を踏まえつつ、掛け軸のような大きさのタブローとして展開しています。
また、「虎の子渡し」の作品では、江戸時代後期の画家である岸駒とその息子の岸岱の「虎図」に着想を得ています。ちなみに「虎の子渡し」とは中国の故事で、虎の母親が三匹の子ども(うち一匹は豹で、豹は虎の仲間と考えられていた)を一匹ずつ対岸まで渡す際、子どもたちを一匹ずつにしておくと豹が虎を食べてしまうため苦労したという説話です。
このように、本展覧会で は、私の問題意識のひとつで ある古典の再解釈と絵画的応用に焦点を絞る内容となっており、特に東アジ アの故事や古典絵画に基づ く作品を中心に展開しています。
上野裕二郎
__________
現代美術史家、キュレーター、ディレクターの沓名美和氏が本展に寄稿されています。
上野裕二郎、生命を描く画家
ー抽象と具象のはざまでー
瑞々しくほとばしる色彩。アクリルと油絵による躍動感溢れるストロークは、まるで色鮮やかな波がうねりを上げるように荒々しく、そして伸びやかだ。
上野裕二郎が描くのは、龍や虎、鳥など、古代から東洋で描かれ続けてきた動物たちの姿だが、その表現は具象と抽象のはざまを行き来しているかのように自由自在だ。動物たちの姿は、まるで身体の構成要素が原子レベルに分解されていくかのように輪郭がほどけて抽象化されてゆくのにもかかわらず、眼差しは鋭く、深い知性をたたえて見るものに個の存在を印象付ける。そこに描かれているものを上野自身は「気」と呼ぶ。
古来、絵画は目に見えないものを見える形にする装置であった。とりわけ農耕民族として自然と共生し、万物に神性を見出す日本的な価値観においては、四季や時間の移ろいを花鳥の姿に、嵐や雷を神の姿に、そして神の姿を動物に表すことで、見えざるものと対話をしてきたといえるだろう。上野の作品に見え隠れするこうした東洋のアニミズム的な試みは、上野自身が日本の伝統文化が息づく京都で生まれ育ち、大学時代を中国由来の文化が根付く沖縄で過ごしたことも、決して無関係ではないだろう。
具象と抽象を自在に行き来するように、対極にあるものを織り交ぜて新たな表現に導いていくのが上野裕二郎の絵画の特徴だ。
技法的にはアクリル画や油画に日本画らしい線の表現やたらし込みを織り交ぜ、現代芸術に北斎や岸駒、画龍を得意とした陳容など古典絵画の画題や構図を巧みに取り入れることで歴史的なダイナミズムが生じていく。そこに、動物を通して想起される野生と神性、柔と剛、古代と現代、陰と陽といった対極の要素が幾層にもレイヤーとなることで作品は解釈の多様性と奥行きをもって私たちの前に現れるのだ。本展ではこれまで上野が行ってきた古典の再解釈をあらためてテーマとして掲げ、中国の竜生九子の故事を題材に、龍の子でありながら龍になれなかった九匹の霊獣を描いた「龍生九子」連作や、江戸時代の絵師、岸駒と岸岱の虎図から着想を得た「虎の子渡し」など、龍と虎を題材とした気迫漲る大作が披露される。
人間であれ動物であれ、この世に生まれ落ちたすべての生き物が等しくたった一つだけ持っているもの、生命。目には見えないけれど、確かにそこにある生命の拍動を、大気を震わせるエネルギー(気)を、そして生きるということの苦しみと喜び、嘆きと咆哮を上野の絵筆は描き続ける。生きとし生けるものたちの気迫に目を凝らすその姿は、アーティストというよりもむしろ、古代より神に仕えその声に耳を澄ませてきた巫(かんなぎ)のようでもある。
上野裕二郎が描くのは、龍や虎、鳥など、古代から東洋で描かれ続けてきた動物たちの姿だが、その表現は具象と抽象のはざまを行き来しているかのように自由自在だ。動物たちの姿は、まるで身体の構成要素が原子レベルに分解されていくかのように輪郭がほどけて抽象化されてゆくのにもかかわらず、眼差しは鋭く、深い知性をたたえて見るものに個の存在を印象付ける。そこに描かれているものを上野自身は「気」と呼ぶ。
古来、絵画は目に見えないものを見える形にする装置であった。とりわけ農耕民族として自然と共生し、万物に神性を見出す日本的な価値観においては、四季や時間の移ろいを花鳥の姿に、嵐や雷を神の姿に、そして神の姿を動物に表すことで、見えざるものと対話をしてきたといえるだろう。上野の作品に見え隠れするこうした東洋のアニミズム的な試みは、上野自身が日本の伝統文化が息づく京都で生まれ育ち、大学時代を中国由来の文化が根付く沖縄で過ごしたことも、決して無関係ではないだろう。
具象と抽象を自在に行き来するように、対極にあるものを織り交ぜて新たな表現に導いていくのが上野裕二郎の絵画の特徴だ。
技法的にはアクリル画や油画に日本画らしい線の表現やたらし込みを織り交ぜ、現代芸術に北斎や岸駒、画龍を得意とした陳容など古典絵画の画題や構図を巧みに取り入れることで歴史的なダイナミズムが生じていく。そこに、動物を通して想起される野生と神性、柔と剛、古代と現代、陰と陽といった対極の要素が幾層にもレイヤーとなることで作品は解釈の多様性と奥行きをもって私たちの前に現れるのだ。本展ではこれまで上野が行ってきた古典の再解釈をあらためてテーマとして掲げ、中国の竜生九子の故事を題材に、龍の子でありながら龍になれなかった九匹の霊獣を描いた「龍生九子」連作や、江戸時代の絵師、岸駒と岸岱の虎図から着想を得た「虎の子渡し」など、龍と虎を題材とした気迫漲る大作が披露される。
人間であれ動物であれ、この世に生まれ落ちたすべての生き物が等しくたった一つだけ持っているもの、生命。目には見えないけれど、確かにそこにある生命の拍動を、大気を震わせるエネルギー(気)を、そして生きるということの苦しみと喜び、嘆きと咆哮を上野の絵筆は描き続ける。生きとし生けるものたちの気迫に目を凝らすその姿は、アーティストというよりもむしろ、古代より神に仕えその声に耳を澄ませてきた巫(かんなぎ)のようでもある。
販売について
展示作品は、5月18日(土)11:00より会場にてエントリー受付を開始します。
エントリー期間|5月18日(土)11:00~5月26日(日)20:00
※プレセールスの状況により受付開始前に販売が終了することがあります。
エントリー期間|5月18日(土)11:00~5月26日(日)20:00
※プレセールスの状況により受付開始前に販売が終了することがあります。
アートのオンラインマーケットプレイス「OIL by 美術手帖」では、5月27日(月)11:00~6月10日(月)17:00の期間に販売します。
※プレセールス、会場販売の状況により開始前に販売が終了することがあります。
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プロフィール
上野裕二郎/Yujiro Ueno
1996 京都府生まれ
2019 沖縄県立芸術大学 美術工芸学部 絵画専攻 油画 卒業
2021 東京藝術大学大学院 美術研究科 芸術学専攻 美術教育研究室 修士課程 修了
2019 沖縄県立芸術大学 美術工芸学部 絵画専攻 油画 卒業
2021 東京藝術大学大学院 美術研究科 芸術学専攻 美術教育研究室 修士課程 修了
【主な受賞・入選 / 助成等】
2023 澳門藝術博物館(マカオ)作品収蔵
2021 第69回 東京藝術大学卒業・修了作品展 2021【早暁賞】(作品買上)
2020 TURNER AWARD 2020 入選
2020 LIQUITEX THE CHALLENGE 2020 【リキテックス賞 大学部門】
2020 第7回 未来展 ―美大の競演―(推薦作家展)/日動画廊
2019 TURNER AWARD 2019 入選
2019 2019年度 三菱商事アート・ゲート・プログラム奨学生
2019 第6回 未来展 ―美大の競演―(推薦作家展)/日動画廊
2023 澳門藝術博物館(マカオ)作品収蔵
2021 第69回 東京藝術大学卒業・修了作品展 2021【早暁賞】(作品買上)
2020 TURNER AWARD 2020 入選
2020 LIQUITEX THE CHALLENGE 2020 【リキテックス賞 大学部門】
2020 第7回 未来展 ―美大の競演―(推薦作家展)/日動画廊
2019 TURNER AWARD 2019 入選
2019 2019年度 三菱商事アート・ゲート・プログラム奨学生
2019 第6回 未来展 ―美大の競演―(推薦作家展)/日動画廊
【個展】
2023 上野裕二郎個展「Evoke the Invisibles」日本橋三越本店コンテンポラリーギャラリー/東京
2023 ART MACAO 2023 命運的統計学「Synergistic Rhythms」澳門塔石藝文館/マカオ
2023 上野裕二郎個展「Clash of Two Spirits ―天地の鬩ぎー」銀座 蔦屋書店 GINZA ATRIUM/東京
2022 上野裕二郎個展「New Scope of Paintings」ギャラリー四季彩舎/東京
2022 上野裕二郎個展 日本橋三越/東京
2021 上野裕二郎個展「Surge/渦動」 銀座 蔦屋書店 アートウォール/東京
2021 上野裕二郎個展 東京アメリカンクラブ フレデリックハリスギャラリー/東京
2018 上野裕二郎個展 沖縄県立芸術大学 企画展示室/沖縄
その他、グループ展等多数
展覧会詳細
上野裕二郎個展「Transformed Legacy」
会期|2024年5月18日(土)~6月10日(月)
時間|11:00~20:00 ※最終日のみ18:00まで
会場|京都 蔦屋書店 5F エキシビションスペース
※5月18日(土)17:00よりレセプションを予定。(どなたでも参加可能)
主催|京都 蔦屋書店
入場|無料
時間|11:00~20:00 ※最終日のみ18:00まで
会場|京都 蔦屋書店 5F エキシビションスペース
※5月18日(土)17:00よりレセプションを予定。(どなたでも参加可能)
主催|京都 蔦屋書店
入場|無料
お問い合わせ|075-606-4525(営業時間内) kyoto.info@ttclifestyle.co.jp
- 会期 2024年5月18日(土)~6月10日(月)
- 時間 11:00~20:00 ※最終日のみ18:00まで
- 会場 京都 蔦屋書店 5F エキシビションスペース
- 主催 京都 蔦屋書店
- 入場 無料
- お問い合わせ 075-606-4525(営業時間内) kyoto.info@ttclifestyle.co.jp