第2回も開催決定! 『東大教授が語り合う10の未来予測』トークイベントに見る、インタラクティブな場と語りの可能性

六本木 蔦屋書店SHARE LOUNGEのコンセプトは「発想が生まれ、シェアする場所」。オフィスの機能性とラウンジの居心地のよさを併せ持つカフェ&ワークスペースとして、トークショーも多数開催してきました。そんな中、2024年1月にこの場所で開催された『東大教授が語り合う10の未来予測』(瀧口友里奈編著・大和書房刊)のトークイベントでは、六本木という街やSHARE LOUNGEの特徴にも言及されるなど、「場」や「人」とのインタラクティブな空間が実現する、改めて意義深いひとときになりました。
 
この日登壇したのは、ともに東京大学で教えている、暦本純一教授と江崎浩教授。暦本教授は、人間とAIのテクノロジーを融合させる“人間拡張”という分野の第一人者であり、江崎教授はインターネットの最初期を支え、デジタル庁のチーフアーキテクトも務められました。そんな科学の最前線にいる2人を相手に司会を務めたのは、書籍の編著者である瀧口友里奈さん。10代から50代以上まで実に幅広い年齢層のオーディエンスを前に、未来予測のトークライブがスタートしました。
 
 
トーク序盤では、書籍同様「能力をアプリのようにダウンロードできる世界が、すでに一部現実化している」という話が展開。勉強や楽器の練習時間をAIの補助により短縮し、効率化していく未来がすでに見えていると話す暦本教授に対し、江崎教授は、効率化とは異なる視点を示します。その時に江崎教授が指差したのは、SHARE LOUNGEの特徴のひとつであるアートウォール。様々なアーティストの作品が壁に展示され、目で見て楽しむだけでなく購入もできるこの空間を指差して、江崎教授は次のように語ったのでした。
 
AIって、効率化だけではないですよね。たとえばアートなどもAIによって新しい可能性が出てくるでしょう。昔は、絵を描くには筆を持つしかなかった。でも、今時の芸術ってそれ以外にもさまざまな方法がありますよね。それによって新しいメディアが出てきたり、新しい方法論が(クリエイターに)自然とダウンロードされている時代になっています。
それに対して暦本教授は、そうですね。自分の得意・不得意と、コンピューターの得意・不得意をうまく組み合わせて能力拡張ができるからこそ、そういう時代になっていますよね。
 
と返答。従来的な作曲・演奏によらないアーティストとして世界的な人気を博すYOASOBIなども例に挙げて、未来のアートについて示唆的なトークを繰り広げます。
それを受けて、次に瀧口さんが問題提起したのは、「教育」。
 
ほかに能力拡張によって大きく変わりそうなのが教育ではないでしょうか。とくに、言語学習などはどうですか。
「それは大問題で……」と暦本教授。すでに機械翻訳が高度に発達している現在、英語の勉強などはいらないのでは? と問われて、絶対に必要だとは言い切れない現実があるといいます。ただし、意思疎通としての国語能力は今後も必要であるそう。ただし教育のやり方にはAIを一部導入すべきで、そうすることで従来式の教室型から生徒ひとりひとりの進捗に合わせた教え方が可能になるといいます。
 
一方の江崎先生が語ったのは、書店や図書館のようなリアルな場。自由に本が読めて、雑談ができて、目的とは違う本との出会いを担保する場こそが重要とみなされているといいます。ただし、若い層にとってはオンラインを使った学びがイノベーションにつながる発見をもたらすことも多いとも指摘。

(それでいて、本イベントの質疑応答では、10代のお客様から教授陣も唸るほどの鋭い質問が飛び出し「ぜひ研究者を目指してください」という激励の言葉が飛ぶなど、リアルな場ならではの世代を超えた交流が見られたことも、本イベントの意義深さを象徴していました)
続いてのトークテーマは、都市の未来像について。単一の機能に最適化された都市は持続しない、という話から多様性の大切さに話がつながり、瀧口さんから「このイベントをやっている六本木という街はどう見えていますか?」という質問がなされると、暦本教授はこう答えます。
 
 
僕は歴史オタクなので、昭和の時代において、226事件という信じられない出来事において、その決起将校がこの地域から出ていたという時代感をまず感じますよね。2月26日に何かしらのイベントをしてもいいと思うくらいです。だから、現在の華やかな六本木もあれば、戦時中の六本木も感じることができる。面白くてすごい歴史がある都市なのです。メガシティや1極集中といった単一のKPIではなく、東京には本質的に多様性があるので、もっとその多様性を活かしていった方がいいのではないかと思いますね。
 
江崎教授は、最近同じ形のビルがいっぱいできているからね。あれはダメかなと。やっぱり特徴をもって作っていく。みんなが話をできる、コミュニケーションができるという部分に注力するべきかなと。
 
くしくも、六本木 蔦屋書店という場のあり方を示唆する方向に話が展開していきました。
最終的には、デジタル化が進むことによってあらゆる輸送コストが低下し、都市同士の移動スピードも超高速化した結果、世界最大の経済圏ができる未来もありうるという大きなスケールの予測も飛び出し、現実世界でも開通が待たれるリニア新幹線の裏話が出るか……? というエンディングへと向かったのですが、どうなったかは、ご来場した皆様のみ知るところとさせていただければと思います。
というのも、5/11(土)に本イベントの第二弾が開催決定したからです! 
 
今回の登壇者は、研究におけるセレンディピティ(偶然がもたらす幸運)を専門とされている合田圭介教授と、腸内環境を研究する新藏礼子教授、認知症を研究する富田泰輔教授。そしてもちろん司会は瀧口友里奈さん。果たして今度はどのような驚きの未来予測が飛び出すのか、必見です。科学の最前線で未来を創造する知の巨人たちのトークライブ第二弾、皆様のお越しをお待ちしております。
 
 
 

 

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