【六本木ホラーショーケース -ARTICLE-】#020   『ザ・ウォッチャーズ』はシャマラン家に流れる血の濃さを表すのか?

“活きのよいホラー映画、ご紹介いたします”

【六本木ホラーショーケース】
六本木 蔦屋書店映像フロアがお贈りするホラー映画紹介プログラム。
ホラー映画を広義でとらえ、劇場公開作品を中心にご紹介し、そこから広がる映画人のコネクションや文脈を紐解いていきます。
 
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今回ご紹介するのは、『ザ・ウォッチャーズ』です。
 
ポスター画像
(C)2024 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED
 
『ザ・ウォッチャーズ』
2024 | 監督:イシャナ・ナイト・シャマラン
 
 
今作は『シックス・センス』『ヴィジット』などで知られるM・ナイト・シャマラン監督の娘イシャナ・ナイト・シャマランの長編監督デビュー作品です。
製作に父シャマランの名も入っており、全面的なバックアップ体制で作られたことが想像できます。
シャマランといえば、奇想天外な脚本が特徴でジャンル映画を語る上では外せない監督の一人です。
そのキャリアを振り返ると、意外と家族やその繋がりをテーマとした作品が多く、彼自身のパーソナリティをうかがい知れます。
一方で、ここ最近は新作映画を撮る度に自宅を抵当に入れて自ら制作費を捻出するというイカれたスタンスで臨んでいます。
一時期のキャリア低迷を経験したからこそ、他人に口出しをされて作品が無茶苦茶になるのを防ぐ為の措置ということは理解できますが、家族にとってはたまったものではないでしょう。
 
そんな家庭で育った娘イシャナが、父と同じ映画監督の道を進んだということは、血は争えないということでしょうか。
しかも、父が得意とするジャンル映画をデビュー作として手掛けたということにその覚悟をみて取れます。
 
宣伝などでも“驚きの結末”というようなフレーズが飛び交い、父シャマランを彷彿とさせる呼び込みがなされています。
もちろん、それは嘘ではなく本作の魅力の一つではありますが、鑑賞後に感じる印象としてはファンタジックな世界観への挑戦という部分が一番大きな割合を占めているように思えます。
監督がインタビューで、インスピレーションの源泉となっているのがジブリの宮崎駿であるという旨を答えていることにとても合点がいきました。
 
親子で映画監督をやっている人たちは結構存在します。
フランシス・フォード・コッポラは、妻エレノアと息子ロマン、娘ソフィア、孫娘ジアと家族総出で映画監督を行っていることでも有名です。
親が偉大であれば、子はどうしても比べて語られがちです。
世界の巨匠、宮崎駿を父に持つ宮崎吾朗は『ゲド戦記』でアニメ監督デビューをしましたが、その呪縛から抜け出すのに苦労した存在と言えます。
ただ、最近は『アーヤと魔女』でCG作品を手掛け、おそらく宮崎駿が絶対に踏み込まない領域での活躍が期待されます。
一方、ジェイソン・ライトマンは父アイヴァン・ライトマンのスプラスティックなコメディとは異なる、ビターさを滲ませたドラマで評価されました。
その路線を進むかと思いきや、『ゴーストバスターズ/アフターライフ』で父の代表作を引き継ぎました。
作品の引き継ぎで言えば『バトル・ロワイアルII 鎮魂歌』では、製作途中で深作欣二が亡くなり、息子の深作健太が引き継ぐという例も。
 
そんな中、クローネンバーグ家は面白いほど同じジャンルを志向しています。
父デヴィッドは言わずと知れたボディホラーの名手です。
ジャンル自体にも大きな影響を与えてきた巨匠で、彼のチルドレンと呼べるフォロワー監督たちも大勢います。
そして、リアルな息子ブランドンはその直系のような作品を発表しています。
近頃はボディホラーから離れた作風に落ち着いていたデヴィッドも、息子の活躍に感化されてか『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』などで再びこのジャンルに戻ってきました。
彼らの作品が同時期に公開される状況は、ジャンルファンとしてはたまらないものがあります。
 
イシャナ・ナイト・シャマランがこの先、父シャマランと同様のジャンル映画を撮り続けるかは分かりませんが、『ザ・ウォッチャーズ』間違いなく同じ血が流れていることを示したのではないでしょうか。
 
【六本木 蔦屋書店のオススメ:鑑賞前後に観たい作品】
『ミスター・ガラス』
2019 | 監督: M・ナイト・シャマラン
 
父シャマランが『アンブレイカブル』『スプリット』の続編として撮った作品です。
『アンブレイカブル』から16年後に撮られた『スプリット』で驚きの繋がりが示され、満を持して両作のキャラクターが一堂に介しました。
あまり書くとネタバレに繋がってしまいそうですが、『ザ・ウォッチャーズ』の世界認識は今作に近いような気がします。
父シャマランは毎度ドンデン返しが注目される作家ではありますがそれはレトリックの一つに過ぎず、この世界認識こそが彼を特異な作家にしていると感じます。
そして、その才能はイシャナにも受け継がれています。

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