【ダイレクターズ】『お母さんが一緒』
【ダイレクターズ】
六本木 蔦屋書店 WATCH PLANがお送りする日本映画紹介プログラム。
2024年に公開される日本映画の中から、映画監督という切り口で厳選したオススメ作品を紹介していきます。
六本木 蔦屋書店 WATCH PLANがお送りする日本映画紹介プログラム。
2024年に公開される日本映画の中から、映画監督という切り口で厳選したオススメ作品を紹介していきます。
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ダイレクターズ第十弾は、7/12㈮公開の橋口亮輔監督『お母さんが一緒』です。
(C)2024 松竹ブロードキャスティング
『お母さんが一緒』
2024 | 監督:橋口亮輔
2024 | 監督:橋口亮輔
2024/7/12(金)より
新宿ピカデリーほか
全国公開
新宿ピカデリーほか
全国公開
寡作の映画作家
映画界には寡作の映画作家と呼ばれる人たちがいます。
キャリアの長さに対して発表している作品の少ない映画監督を指す言葉です。
ただ少ないというだけでなく、その少ない作品が特別な輝きを放ち、映画史を語る上でも重要であり、いつまでもその新作を待ち望まれるような才能に向けた尊敬の呼称と言えます。
『ミツバチのささやき』『エル・スール』で知られるスペインのビクトル・エリセは、50年以上のキャリアの中で長編はたった4本という寡作っぷりです。
昨年久々に発表された『瞳をとじて』は実に30年以上のぶりの長編映画で、世界中の映画ファンに驚きを持って迎えられました。
アレハンドロ・ホドロフスキーやテレンス・マリックも一時期は寡作と言われていましたが、近年は比較的精力的に作品を発表しています。
日本における寡作の映画作家代表と言えば、長谷川和彦監督でしょう。
70年代に『青春の殺人者』と『太陽を盗んだ男』という傑作を撮って以降、新作はありません。
企画の噂は度々流れてくるのですが、なかなか成就しないようで、もはや成立しないモノの代名詞が“長谷川監督の信作”というような風潮まであります。
エリセの新作が公開された今、長谷川監督にも期待したいところです。
映画界には寡作の映画作家と呼ばれる人たちがいます。
キャリアの長さに対して発表している作品の少ない映画監督を指す言葉です。
ただ少ないというだけでなく、その少ない作品が特別な輝きを放ち、映画史を語る上でも重要であり、いつまでもその新作を待ち望まれるような才能に向けた尊敬の呼称と言えます。
『ミツバチのささやき』『エル・スール』で知られるスペインのビクトル・エリセは、50年以上のキャリアの中で長編はたった4本という寡作っぷりです。
昨年久々に発表された『瞳をとじて』は実に30年以上のぶりの長編映画で、世界中の映画ファンに驚きを持って迎えられました。
アレハンドロ・ホドロフスキーやテレンス・マリックも一時期は寡作と言われていましたが、近年は比較的精力的に作品を発表しています。
日本における寡作の映画作家代表と言えば、長谷川和彦監督でしょう。
70年代に『青春の殺人者』と『太陽を盗んだ男』という傑作を撮って以降、新作はありません。
企画の噂は度々流れてくるのですが、なかなか成就しないようで、もはや成立しないモノの代名詞が“長谷川監督の信作”というような風潮まであります。
エリセの新作が公開された今、長谷川監督にも期待したいところです。
で、ようやく本題の橋口亮輔監督です。
上記の監督たちに比べれば作品数は多いですが、それでも1993年の長編監督デビュー作『二十才の微熱』から数えて6作品というのは寡作と言えるでしょう。
特に重要な要素としては、今ほどジェンダーやセクシャリティについて議論されていなかった時代に『二十才の微熱』『渚のシンドバッド』『ハッシュ!』といった作品で、同性愛というテーマを真正面から扱い、世間に知らしめたという功績があります。
そして、『ぐるりのこと。』は00年代を、『恋人たち』は10年代を代表する作品という評価を受けています。
ここに挙げたどの映画も、単体の作品としてだけでなく、時代を通した文脈でも重要とされている稀有な監督だと言えるでしょう。
上記の監督たちに比べれば作品数は多いですが、それでも1993年の長編監督デビュー作『二十才の微熱』から数えて6作品というのは寡作と言えるでしょう。
特に重要な要素としては、今ほどジェンダーやセクシャリティについて議論されていなかった時代に『二十才の微熱』『渚のシンドバッド』『ハッシュ!』といった作品で、同性愛というテーマを真正面から扱い、世間に知らしめたという功績があります。
そして、『ぐるりのこと。』は00年代を、『恋人たち』は10年代を代表する作品という評価を受けています。
ここに挙げたどの映画も、単体の作品としてだけでなく、時代を通した文脈でも重要とされている稀有な監督だと言えるでしょう。
根拠の置き場
橋口監督作品の素晴らしさは、オリジナル脚本から溢れ出す監督自身の圧倒的な根拠の在り方だと感じています。
登場人物たちに当事者としての切実さを重ね合わせ、そこから生まれる説得力が可笑しさや悲しみのような感情の揺れに繋がっていきます。
作品で多用される長回しも、キャストたちとのセッションを経た末のキャラクターのリアリティとして受け取れます。
それだけ自らの中に根拠を持った物語やキャラクターを生み出すということは、命を削る行為とも言え、寡作となるのにも納得がいきます。
橋口監督作品の素晴らしさは、オリジナル脚本から溢れ出す監督自身の圧倒的な根拠の在り方だと感じています。
登場人物たちに当事者としての切実さを重ね合わせ、そこから生まれる説得力が可笑しさや悲しみのような感情の揺れに繋がっていきます。
作品で多用される長回しも、キャストたちとのセッションを経た末のキャラクターのリアリティとして受け取れます。
それだけ自らの中に根拠を持った物語やキャラクターを生み出すということは、命を削る行為とも言え、寡作となるのにも納得がいきます。
一方、最新作である『お母さんが一緒』は原作のある作品です。
ペヤンヌマキさんが手掛けた同名の舞台戯曲を元にしており、橋口監督が映像化のために脚色をしています。
監督の言葉を借りると「自分の中に根拠がない」ということです。
しかし、これはネガティブな意味ではなく、ペヤンヌマキさんという他者の中にある根拠を信じるということでもあります。
故に、これまでの橋口監督作品、特に近年のモノとは少し肌触りの異なった作品となっています。
元々ホームドラマチャンネルの開局25周年記念で企画されたドラマ作品としてスタートしたという成り立ちも影響しているかもしれませんが、終始ライトなタッチが貫かれています。
ですが、間違いなく橋口監督作品であるという刻印は至るところに確認できます。
それは、一面的でないキャラクターや修羅場にも潜むユーモアなど。
この作品は、橋口監督の作風に新たな幅が加わった記念碑的なモノなのかもしれません。
ペヤンヌマキさんが手掛けた同名の舞台戯曲を元にしており、橋口監督が映像化のために脚色をしています。
監督の言葉を借りると「自分の中に根拠がない」ということです。
しかし、これはネガティブな意味ではなく、ペヤンヌマキさんという他者の中にある根拠を信じるということでもあります。
故に、これまでの橋口監督作品、特に近年のモノとは少し肌触りの異なった作品となっています。
元々ホームドラマチャンネルの開局25周年記念で企画されたドラマ作品としてスタートしたという成り立ちも影響しているかもしれませんが、終始ライトなタッチが貫かれています。
ですが、間違いなく橋口監督作品であるという刻印は至るところに確認できます。
それは、一面的でないキャラクターや修羅場にも潜むユーモアなど。
この作品は、橋口監督の作風に新たな幅が加わった記念碑的なモノなのかもしれません。
【六本木 蔦屋書店のオススメ:鑑賞前後に観たい作品】
(C)「阿修羅のごとく」製作委員会
『阿修羅のごとく』
2003 | 監督:森田芳光
2003 | 監督:森田芳光
姉妹モノとして思い浮かべるのは、向田邦子さんではないでしょうか?
四姉妹と三姉妹という違いはありますが、母親を巡るやり取りなどもホームドラマの伝統を継承しようとする気概を感じ取ります。
同じぴあフィルムフェスティバル出身の森田芳光監督と橋口監督がここで交わるというのも感慨深いものがあります。
四姉妹と三姉妹という違いはありますが、母親を巡るやり取りなどもホームドラマの伝統を継承しようとする気概を感じ取ります。
同じぴあフィルムフェスティバル出身の森田芳光監督と橋口監督がここで交わるというのも感慨深いものがあります。