【ダイレクターズ】『サユリ』

【ダイレクターズ】
六本木 蔦屋書店 WATCH PLANがお送りする日本映画紹介プログラム。
2024年に公開される日本映画の中から、映画監督という切り口で厳選したオススメ作品を紹介していきます。
 
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ダイレクターズ第十四弾は、8/23㈮公開の白石晃士監督『サユリ』です。
 
ポスター画像
(C)2024「サユリ」製作委員会/押切蓮介/幻冬舎コミックス
 
『サユリ』
2024 | 監督:白石晃士
 
2024/8/23(金)より
全国公開
 
 
フェイクドキュメンタリーの第一人者
日本のホラー映画界を引っ張っている一人、白石晃士監督の新作です。
白石監督と言えば、やはりフェイクドキュメンタリーというイメージが強いかと思います。
『ノロイ』や『オカルト』そして『戦慄怪奇ファイル コワすぎ!』シリーズで日本にフェイクドキュメンタリーというジャンルを根付かせたと言っても過言ではありません。
ご自身も「フェイクドキュメンタリーの教科書: リアリティのある“嘘”を描く映画表現その歴史と撮影テクニック」という書籍を書かれており、ジャンルを体系立てることに意識的なのではと思われます。
 
ただ、ここ最近ネットでのホラー界隈で注目を集めているフェイクドキュメンタリーとは方向性が異なります。
YouTubeチャンネルの「フェイクドキュメンタリーQ」や背筋さんによる書籍「近畿地方のある場所について」などはリアリティを極限まで高めて、虚実の境目をボヤかせ日常に怪異の恐怖を侵食させる試みがなされています。
一方、白石監督が推し進める表現は、ドキュメンタリーの体を取りながらフィクションであることを強調し、それをリアリティからの飛躍の推進力としています。
そして、飛躍の表現手段としてアクションというジャンルを横断的に導入しているのです。
 
ホラーとアクションの横断
今作『サユリ』はフェイクドキュメンタリーではなく純然たるフィクションですが、このホラーとアクションを横断的に一作品の中で扱うという試みの最前線ではと考えます。
原作コミックを手掛けた押切蓮介さんは『ミスミソウ』などでも有名な漫画家です。
幽霊などに対して物理的に攻撃を仕掛けるという作風は白石監督の進めるホラーのあり方とバッチリと合うもので、まさに打ってつけのコラボレーションが成立したと言えるでしょう。
 
Jホラーと言えば、90年代に日本特有のホラー表現を用いた作品群を指し、2000年代にはハリウッドを始めとして世界中を席巻したサブジャンルです。
その始祖だと言われている石井てるよし監督の『邪願霊』はフェイクドキュメンタリーでした。
この作品にも参加した脚本家、小中千昭さんによる“小中理論”は、ボンヤリと映る幽霊の姿などJホラーにおける恐怖表現のイデオロギーとなり、その後の作品群に大きな影響を与えました。
『ザ・リング』『THE JUON/呪怨』などのハリウッドリメイクや中田秀夫監督、清水崇監督のハリウッドデビューのような人材の交流だけでなく、ジェームズ・ワンのように自身の作品にJホラー的な表現を取り入れる作家たちも現れました。
 
しかし、急速に広まったトレンドはいつしか収束するのも運命。
『リング』や『呪怨』のようなエポックメイキングな作品が定期的に生まれるわけではなく、近年では一時の勢いは収まったように感じます。
停滞するJホラーの新たな形として、白石監督の方向性は起爆剤の効果があるのか?
とても注目すべき動きであり、まずは『サユリ』のハチャメチャさを体験して下さい。
 
【六本木 蔦屋書店のオススメ:鑑賞前後に観たい作品】
 
ポスター画像
(C)2022「ザ・ミソジニー」フィルムパートナーズ
 
『ザ・ミソジニー』
2022 | 監督:高橋洋
 
『リング』脚本家でも知られ、Jホラーを最初期から牽引してきた高橋洋監督作品です。
作品前半は、Jホラーというよりクラシカルな洋館ホラーの佇まいを見せます。
後半ガラリとテイストが変わり、アクションを中心とした展開を迎えます。
この流れも『サユリ』との近似性を感じる事ができます。

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