【六本木ホラーショーケース -ARTICLE-】#032 『哭戦 オペレーション・アンデッド』では心もアンデッド、故に地獄
“活きのよいホラー映画、ご紹介いたします”
【六本木ホラーショーケース】
六本木 蔦屋書店映像フロアがお贈りするホラー映画紹介プログラム。
ホラー映画を広義でとらえ、劇場公開作品を中心にご紹介し、そこから広がる映画人のコネクションや文脈を紐解いていきます。
ホラー映画を広義でとらえ、劇場公開作品を中心にご紹介し、そこから広がる映画人のコネクションや文脈を紐解いていきます。
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今回ご紹介するのは、『哭戦 オペレーション・アンデッド』です。

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『哭戦 オペレーション・アンデッド』
2024 | 監督:コム・コンキアート・コムシリ
2024 | 監督:コム・コンキアート・コムシリ
ホラーの中でも、定番のサブジャンルとして根付いているのがゾンビ映画です。
その起源は諸説ありますが、現代ゾンビの型を作ったと言えば1968年のジョージ・A・ロメロ監督による『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』でしょう。
そこから続く『ゾンビ』『死霊のえじき』のトリロジーは映画における“ゾンビ”表現やキャラクター設定を決定付けたと言っても過言ではありません。
その後もロメロは生涯ゾンビ映画を撮り続け、更新していきました。
そして、数多のフォロワーを生み出し、一過性のブームではなくサブジャンルとしてしっかりとしたポジションを築いています。
その起源は諸説ありますが、現代ゾンビの型を作ったと言えば1968年のジョージ・A・ロメロ監督による『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』でしょう。
そこから続く『ゾンビ』『死霊のえじき』のトリロジーは映画における“ゾンビ”表現やキャラクター設定を決定付けたと言っても過言ではありません。
その後もロメロは生涯ゾンビ映画を撮り続け、更新していきました。
そして、数多のフォロワーを生み出し、一過性のブームではなくサブジャンルとしてしっかりとしたポジションを築いています。
ジャンルとしての広がりを見せる中で、その設定も様々なアレンジがなされてきました。
その一つに、意志や心の問題があります。
ロメロゾンビをはじめとする基本的な設定として、ゾンビは意志や自我のようなものは持たないことが多いです。
動物的な本能や生前の習慣といったものは見られますが、心があるというレベルではありません。
故に、この心を失わないゾンビというのが後発作品ではアレンジとして使用されます。
その一つに、意志や心の問題があります。
ロメロゾンビをはじめとする基本的な設定として、ゾンビは意志や自我のようなものは持たないことが多いです。
動物的な本能や生前の習慣といったものは見られますが、心があるというレベルではありません。
故に、この心を失わないゾンビというのが後発作品ではアレンジとして使用されます。
例えば、『ウォーム・ボディーズ』はラブストーリーとの掛け合わせを行っています。
ゾンビとなった主人公は、ある時通常の人間の女性に一目惚れをします。
ゾンビ後の出会いなので生前の記憶ではなく、ゾンビ自体の自我を認めることができます。
『CURED キュアード』は日本での公開タイミングも相まって、真に迫るゾンビ映画です。
というのも、制作は2017年の作品ですが、日本公開日が2020年3月20日。
そう、あのコロナ禍が始まった時期と重なります。
最初の非常事態宣言が発出されたのが4/7だったので、モロに興行的影響を受けた作品です。
内容なのですが、ゾンビウィルスによるパンデミックが治療法の発見によって収束した後の世界を描いています。
一度ゾンビ化しても治療によって人間に戻ることができるようになり、彼らは“回復者”と呼ばれ社会復帰を果たします。
しかし、通常の人間たちとの分断が起き、社会は新たな混沌と向き合うことになります。
ここでミソとなるのが、“回復者”はゾンビ化していた時の記憶を有しているということです。
ウィルスにより凶暴化していたとはいえ、人を食べていた“回復者”たちと共に生活をしていけるのか?
そして“回復者”自身も、悪夢のような記憶を持ったまま普通の人間に戻れるのか?
コロナのワクチンなどで起きていた現実の騒ぎを先取るような形で描いており、映画が偶然持ってしまった先見性に只々恐ろしくなります。
ゾンビとなった主人公は、ある時通常の人間の女性に一目惚れをします。
ゾンビ後の出会いなので生前の記憶ではなく、ゾンビ自体の自我を認めることができます。
『CURED キュアード』は日本での公開タイミングも相まって、真に迫るゾンビ映画です。
というのも、制作は2017年の作品ですが、日本公開日が2020年3月20日。
そう、あのコロナ禍が始まった時期と重なります。
最初の非常事態宣言が発出されたのが4/7だったので、モロに興行的影響を受けた作品です。
内容なのですが、ゾンビウィルスによるパンデミックが治療法の発見によって収束した後の世界を描いています。
一度ゾンビ化しても治療によって人間に戻ることができるようになり、彼らは“回復者”と呼ばれ社会復帰を果たします。
しかし、通常の人間たちとの分断が起き、社会は新たな混沌と向き合うことになります。
ここでミソとなるのが、“回復者”はゾンビ化していた時の記憶を有しているということです。
ウィルスにより凶暴化していたとはいえ、人を食べていた“回復者”たちと共に生活をしていけるのか?
そして“回復者”自身も、悪夢のような記憶を持ったまま普通の人間に戻れるのか?
コロナのワクチンなどで起きていた現実の騒ぎを先取るような形で描いており、映画が偶然持ってしまった先見性に只々恐ろしくなります。
そして、『哭戦 オペレーション・アンデッド』も自我を有するタイプのゾンビ映画です。
第二次世界大戦中のタイに日本軍によって持ち込まれた“ある生物兵器”が引き起こすパンデミックを描いています。
この生物兵器に殺されると不滅の兵、いわゆるゾンビと化してしまうのですが、彼らはかなり強く自我を残しています。
被害者となるのは戦場に駆り出された少年兵が多く、ウィルスのせいで増してしまった凶暴性と家族への愛情で心が引き裂かれる様が描かれます。
物語前半の無邪気なトーンと後半の容赦ない残酷描写のギャップが激しく、それでいて葛藤する心情を描いたエモーショナルなドラマがゾンビ映画に新たな風を吹かせています。
第二次世界大戦中のタイに日本軍によって持ち込まれた“ある生物兵器”が引き起こすパンデミックを描いています。
この生物兵器に殺されると不滅の兵、いわゆるゾンビと化してしまうのですが、彼らはかなり強く自我を残しています。
被害者となるのは戦場に駆り出された少年兵が多く、ウィルスのせいで増してしまった凶暴性と家族への愛情で心が引き裂かれる様が描かれます。
物語前半の無邪気なトーンと後半の容赦ない残酷描写のギャップが激しく、それでいて葛藤する心情を描いたエモーショナルなドラマがゾンビ映画に新たな風を吹かせています。
【六本木 蔦屋書店のオススメ:鑑賞前後に観たい作品】

『CURED キュアード』
2017 | 監督:デビッド・フレイン
2017 | 監督:デビッド・フレイン
やはりこの作品の焦点となっているゾンビとなってしまった人の心情は興味深いものがあります。
いっそ心や記憶がなくなってしまえば楽なのかもしれないという気にさえさせます。
いっそ心や記憶がなくなってしまえば楽なのかもしれないという気にさえさせます。