【六本木ホラーショーケース -ARTICLE-】#033  『異端者の家』監督コンビはホラーコネクションが交わる点

“活きのよいホラー映画、ご紹介いたします”

【六本木ホラーショーケース】
六本木 蔦屋書店映像フロアがお贈りするホラー映画紹介プログラム。
ホラー映画を広義でとらえ、劇場公開作品を中心にご紹介し、そこから広がる映画人のコネクションや文脈を紐解いていきます。
 
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今回ご紹介するのは、『異端者の家』です。
 
ポスター画像
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『異端者の家』
2024 | 監督:スコット・ベック&ブライアン・ウッズ
 
 
『異端者の家』を手掛けたのはスコット・ベックとブライアン・ウッズの監督コンビ。
単独でもそれぞれ短編などを撮っていた時期はあるようですが、少なくとも日本で紹介されているキャリアではコンビでの活動がほとんどです。
邦題が付いている監督作として2015年に『ナイトライト-死霊灯-』があります。
こちらはPOVの手法を用いて森を彷徨う作品で『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』の影響下にある一本です。
『パラノーマル・アクティビティ』シリーズで編集を手掛け、6作目である『パラノーマル・アクティビティ5』では監督を務めたグレゴリー・プロトキンが製作総指揮で参加していることも注目点です。
 
やはり彼らが世界的に注目を浴びたのは、2018年の『クワイエット・プレイス』でしょう。
原案・脚本として参加しており、“音を立てたら即死”の宣伝文句も手伝いヒットを飛ばしました。
ホラー映画界における二大ヒットメーカーである製作会社ブラムハウスとプラチナム・デューンズのタッグ作品でもあり、続編や前日譚などシリーズとして成功しています。
1作目以降はキャラクター創造としてだけのクレジットで、大きく関わっている訳ではないようですが、あの世界観を生み出したという功績は特筆すべきものがあります。
 
その後、監督作品として『ホーンテッド 世界一怖いお化け屋敷』を発表しました。
イーライ・ロスがプロデューサーとして参加しています。
殺人鬼が作ったお化け屋敷に大学生たちが迷い込むという設定は、それだけで興味がそそられるモノで脚本家としての彼らの手腕が遺憾なく発揮されています。
 
ホラーではありませんが『65/シックスティ・ファイブ』も監督しています。
こちらは白亜紀の地球で恐竜から逃げるというSFアクションです。
意外な方向性にもみえますが、『クワイエット・プレイス』が純粋なホラー作品を匂わせておいて、蓋を開ければ怪獣パニックものだったことを考えると、監督たちの作家性も見えてくる気がします。
なんとこちらにはサム・ライミがプロデューサーとして関わっています。
 
そして、最新作『異端者の家』です。
現代ホラー映画界で有力な勢力とはほとんど仕事をしてきている彼らが、遂にA24とタッグを組みました。
やはり今回も抜群に脚本が面白い作品となっています。
いつまでもニヒルな役を続けられるヒュー・グラントを、シチュエーション次第ではこんなにも恐ろしい存在として見せられるのかと驚きます。
宗教勧誘で一軒家に訪れた二人の若い女性と家の主である男性とのやり取りは、現代的なイシューを感じさせつつも、より普遍的な宗教的問答へと誘われていきます。
もう一つの主人公ともいうべき“家”の造形は、違和感を含めて見事に観客を世界観へと引き込んでいき、恐怖や絶望を駆り立ててくれます。
 
ホラー映画界の様々な勢力とコネクションを持ち、その時々で確かな実績を作ってきたスコット・ベックとブライアン・ウッズは、中心点となる存在なのかもしれません。
 
【六本木 蔦屋書店のオススメ:鑑賞前後に観たい作品】
 
 
『マーターズ』
2008 | 監督:パスカル・ロジェ
 
2000年代に盛り上がったムーヴメント、フレンチ・スプラッターの中心的作品です。
二転三転する物語展開が『異端者の家』と共通する部分ではありますが、それ以上に神や死後の世界など宗教を語る上で必ず突き当たる問いを、究極の方法で解き明かそうとする姿勢を両作品から感じられます。
あまり書きすぎるとネタバレに触れてしまうので、どちらも鑑賞してから、改めて問いの答えを考えてみて下さい。

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