【本のBATON Vol.6】本棚からひとつかみ|文学コンシェルジュ 北村

 本棚からひとつかみ
 
いま、この世界で暮らすすべての人と同じように、不安な日々を過ごしている一人の読書好きとして、家の本棚から気分のままに手に取った本を紹介します。テーマは、ラジオ「山下達郎のサンデー・ソングブック」の名物プログラムから拝借。それぞれの気持ちに寄り添うタイミングで、いつかは読んでいただきたい本ばかりです。
 
『神戸 続神戸』 西東三鬼/著 新潮社文庫
 
戦時下の混乱の中、人種も、性別も、属性も異なる住人が集い、交錯したある奇妙なホテルの物語。死と隣り合わせの時代、完全無欠のその日暮らし日々。それでも人生を謳歌しようとする登場人物たちの溢れる生命力に驚く。とにかくめちゃくちゃおもしろい。文句なしの名著。変な元気が出ます。
 
『ドーナツを穴だけ残して食べる方法』 日経ビジネス人文庫
 
さまざまな研究者が「ドーナツを穴だけ残して食べるには?」という矛盾を孕んだテーマへ、それぞれの専門分野でアプローチ。経済学、哲学、数学、美学など、各々の正義をかけて行われる知の実験。有意義な結果だけを求めるのではなく、「考える」というその行為、過程こそを楽しむこと。
家で過ごす時間の使い方のヒントに。
『ひと月9000円の快適食生活』 魚柄仁之助/著  飛鳥新社
 
健康面、経済面、そして精神面の理由から、台所に立つことが増えているひとも多いのではないでしょうか。美味しい食事ができる、そんな当たり前のことが最高の気分転換になります。シンプルで実用的、かつ小気味いい語り口で、読み物としてもおもしろいレシピ集。
 
『佐藤さとる童話集』 ハルキ文庫
 
たくさんの情報に接することに疲れた時、文庫で読める詩集はもちろん、童話集もおすすめ。みずみずしい感性と、素直な疑問を抱えた、子どものころにだけ出会えた不思議の世界。大人になると忘れてしまって、もう二度と感じることのできない、あのころの心の景色を思い出します。
 
『神様のいる街』 吉田篤弘/著 夏葉社
 
神戸と神保町という二つの街を舞台に、自らの青春を回想したエッセイ集。街を歩き、本屋を巡り、本を読む。どこにも繋がらず、誰とも共感しない孤独な日々の中で、かけがえのない一冊を手にしているという実感が、自分の存在を肯定してくれる。読書という一人の時間の大切さに気づきます。
 
 
プロフィール:文学コンシェルジュ 北村
1980年神戸市生まれ。ナショナルチェーンの大型書店、駅前にある町の本屋、創業100年の老舗書店、雑貨併売・カフェを併設のセレクトショップと、さまざな業態の書店勤務を経て、2018年に梅田 蔦屋書店へ。好きな作家は、チェーホフ、山田稔、藤沢周平。影響を受けた作家は、安田謙一と荻原魚雷。好物はコーヒーと豚汁。好きな野球選手は、クリス・ジョンソン(広島カープ)。最近うれしかったことは、マメイケダのキュウリの絵を買ったこと。『Meets Regional』『暮しの手帖』『神戸新聞』『図書新聞』などに時々書評を寄稿。定年したら自分で本屋を開業したいと思っています。
 
コンシェルジュをもっと知りたい方はこちら:梅田 蔦屋書店のコンシェルジュたち

「本のBATON」は梅田 蔦屋書店コンシェルジュによる書籍・雑貨の紹介リレーです!
6個目のバトンは文学コンシェルジュがお送りしました。
次のバトンもお楽しみにお待ちください。
 
 
ご感想はこちらまで:umeda_event@ccc.co.jp

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