彼の魅力的なモンスターシリーズは、日々の出会いや人生の旅路を形作る出来事の展開の中で、個人の奥底に潜む「モンスター」に直接インスピレーションを受けています。交わる人々のテンションや周囲の環境など、様々な要素が彼の心の中に、恐ろしい生き物のイメージを鮮明に描き出します。ガラスの半透明な性質を活かし、砂や色材、糸など様々な 素材をガラスの器に詰め込み、それぞれの内面を自由に表現しています。色ガラスで作られたモンスターは、他のメディアでは表現できない質感や顔料を持ち、鑑賞者に特別な演 出を与えてくれます。

本展は、植物の成長を人の人生の複雑な旅に例えることで、存在の本質を表現しています。彼が「人生は時に穏やかで、時に荒々しい」と表現したように、生涯を通じて些細な出来事と重要な出来事の集合体であるのです。

ガラスの繊細な性質は、人生の儚さを思い起こさせ、一瞬一瞬を大切にし、自分の旅を構 成する儚い瞬間に感謝するよう促してくれます。時が止まったような繊細な花びらや、ガラス容器を満たす色とりどりの液体や糸など、どの彫刻も人生の複雑さを異なる側面で表現しています。彼は、この展覧会が、人々が自分の人生を回想し、目まぐるしく変化する 世界の中で、しばしば問われることのないより深い問いを掘り下げるきっかけになればと願っています。

【プロフィール】
三平硝子 (みひら・しょうこ)

自身の内なる感情や日常生活での経験を反映させ、ユニークで魅惑的なモンスターの世界を創り出す日本のガラスアーティストである。彼の作品の一つ一つは、共感的なアプローチでユニークな物語を語り、個人的な出会いや彼の身の回りの環境、芸術の旅の中で出会った様々な人々をモデルにしている。
バーナーワークの技法を用い、ガラス管を炎の上で溶かしてから、複雑で魅惑的なデザインに巧みに成形する。彼のガラス作品は、正確さと技術によって液体や糸で満たされ、感情から内臓に至るまで、体内世界を見事に表現している。滑らかでありながら硬質なガラス容器の中で、流れる液体のダイナミックな相互作用は、光の屈折をさらに高めると同時に、空虚と固体の概念を探求し、彼の作品に深みと興味を加えている。
彼は、色ガラスが比類のないテクスチャーと色彩の数々を提供し、日常生活における出来事や社会現象、会話を客観化することを可能にすると信じている。彼の不気味な怪物たちは、荒々しい美学と遊び心のある要素を難なく融合させた独特のスタイルを持っており、ダークトーンやミュートトーンを効果的に使いながら、描かれた生き物の愛らしくも謎めいた性質を明らかにしている。こうした要素の調和が、生き物の気まぐれな性質と、感情、素材、形の相互作用に対する深い理解を無理なく見せる、彼独特のスタイルを生み出している。
三平硝子は1979年に東京で生まれ、2016年にアメリカのガラスアーティストZiiに師事した。「モンスター展2020」優秀賞、「IAGアワード2021」入選、「インディペンデント東京2021」審査員特別賞など、ここ数年で多くの賞を受賞している。「5つのいきものがたり」(ギャラリーFace to face、東京、2021年)、「SICF22」(スパイラル、東京、2021年)、「Power of Art」(伊勢丹新宿店、東京、2022年)、「Kowaii Exhibition」(新井画廊、東京、2022年)、「Group Exhibition」(ギャラリーDalston、東京、2022年)、「Monster」(四季彩舎、東京、2022年)、「Real? (銀座蔦屋書店、東京、2022年)