【菅原敏 詩集『かのひと 超訳 世界恋愛詩集』×五人の陶芸家】鈴木環×フリードリヒ・ニーチェ「さよなら、たまねぎ」編
5人の陶芸家が、詩集『かのひと 超訳 世界恋愛詩集』から一遍の詩を選び、その詩にインスパイアされ制作した作品を、銀座 蔦屋書店BOOK(文具)にて展示販売いたします。(3月20日(火)~)
発売を記念し、フリードリヒ・ニーチェの「さよなら、たまねぎ」を選んだ鈴木環さんにインタビューを行いました。
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どこにでもあるなんの変哲もないたまねぎが、その質感を変えただけで、突如として不思議な違和感をもたらします。姿かたちはリアルなたまねぎが、鈴木さんの手によって、とろみのあるつるりとした陶のオブジェに生まれ変わりました。当たり前にあって、普段気にも留めないものの形やつくりが、実はとても美しいものだと改めて気付かせてくれる作品でもあります。たまねぎと一人向き合い続けた作家の様々な思い、葛藤が詰まった本作は、いわばたまねぎの「超訳」とも言えるのではないでしょうか。
-なぜこの詩を選んだのですか?
鈴木:なんといっても「さよなら、たまねぎ」というタイトルに魅かれました。読んでいて、「待つ」ということが、モノを作っている仕事柄、作ったモノが、作品が、誰かに見ていただく機会を「待っている」という、また私も、誰かを待っているという、なんか似たような感じがしました。
-この詩をどのようにイメージ(器)に転換されたのか教えてください。その際に、ポイントとなったワードやフレーズがあれば教えてください。
鈴木:タイトルの「さよなら、たまねぎ」というところから着想しました。「彼女が来るのを待っている」というのもいいのでしょうが(本題なのでしょうが)、私は初めの「わらのベッドに横たわり…みんな楽しく踊ってるんだ」というところが、自由業という仕事柄、重く感じました。「さよなら、たまねぎ」というタイトルが最後まで頭に残って、たまねぎを作ってみたくなりました。
-ニーチェの詩からどんな印象を受けましたか?
鈴木:この詩から、やきもち、嫉妬、また、隣の芝生みたいなものを感じました。なんか、ちっちゃいですね。でも、そのちっちゃさが、人間らしくて、好きだし、私にも、思い当たることばかりです。やっぱり、私も、ちっちゃな…。
-今回、詩から器を作ってみて、いかがでしたか?率直な感想を教えてください。
鈴木:一日中、こんなに、たまねぎを見続けたこと、初めてでした。モノを作るという眼で、たまねぎを分解していく過程で、段々、たまねぎが野菜というのではなく、生き物というか、一つの彫刻のように感じました。「たまねぎの形は何でこんなに綺麗なのか」って。感動でした。少しだけ、梶井基次郎の『檸檬』を思い出しました。一生懸命な「たまねぎ」です。
-ありがとうございました。
【プロフィール】
鈴木 環 (すずき かん)
1963年茨城県生まれ。1986年に文化学院陶磁科卒業。茨城県桜川市で開窯。まるで琺瑯のようなとろみのある白が最大の魅力。この独特の白はフランス産の化粧土によるもの。ところどころ下地の黒土が透けることで、独特の凛とした白い世界感を生む。
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構成:銀座 蔦屋書店 石谷