【展覧会】荒井颯子 個展「Further Explorations」

FOAM CONTEMPORARY|アート
FOAM CONTEMPORARY 2026年01月17日(土) - 02月04日(水)
韓国ソウルでの個展に続き、国内では約1年半ぶりとなる荒井颯子の個展「Further Explorations」を1月17日(土)より開催。

荒井颯子の個展「Further Explorations」を、2026年1月17日(土)~2月4日(水)の期間に店内FOAM CONTEMPORARYにて開催します。
 
荒井颯子は1999年京都府生まれ、2025年春に多摩美術大学大学院日本画研究領域を修了。伝統的な日本画の技法で映画のワンシーンのような場面を描くアーティストです。
2025年春から初夏にかけて韓国で滞在制作を行った荒井は、自然と人工物、無機質な建築と有機的な曲線など、異なる要素を組み合わせる自身の特徴を、より意識的に探究しました。また、初めての海外生活を通じて言語的距離が人との関係に影響を与えた経験から、これまでバストアップが中心だった人物表現が全体像を描くように変化しています。一方で、作品の根底にあるテーマは揺るがず、一貫して映画や小説の中のようなどこか遠くにある世界の物語を描いています。今ここにある世界が、自分自身のことも含めて何一つ確信できるものでは構成されていないと考え、同時に遠くの世界の存在に希望を見出し作品上に表現しています。
夏の韓国ソウルでの個展に続く国内では約1年半ぶりの個展となる本展では、十数点の新作に加え、学部卒業制作として手掛けた200号超の大作《飛び込むには寒すぎる》を3年ぶりに公開します。
 
[アーティストステートメント]
Further Explorations 何をしていても確信を持てない。自分が何をやっているのかもいまいちわかっていない。だから美容院で最近何をしているのかと聞かれてもうまく答えられない。相手は気を遣って、仕事ではなく最近していることを聞いてくれているのに。韓国で知り合った人に「あなた自身でさえあなたを信用していないのに、どうやってあなたを信じればいいの」と言われたとき(確か梅干しの作り方について話していた)、この短期間でなぜそんなに私のことがわかるのか、と驚いた。
 
私という存在は、私の想像を超えてはくれないのに、私自身にとって誰よりも信用ならない。確信を持てるものが一つもないから、絵を描くときもなかなかこれだと思うものを見つけられず時間がかかる。本当は現実の世界や自分の現在に反応して作品を制作できたらよいのだけれど、世界も自分自身も問題は多いはずなのに、それのどれをとっても、些細な一つでさえ、自分がどう感じ、どう考えているのかを確信できない。時間だけかかって結局いつも通りではないかと不安に思いながら、近い過去の記憶を探る。うろうろ迷わずに絵を描くことはできない。
 
絵を考える作業は目的地のわからない探索のようだ。自分の中にまだ自分が思いついていない何かを見つけたくて、描き始めるまでは私はぐるぐると自分の中を散歩する。物理的に外に出て散歩もする。26年間住み続けたこの街には歩いていける距離で知らない道はほとんどないのだけれど。スマホの画像フォルダを何度もスクロールし、音楽アプリを開いて数ヶ月前によく聴いていた曲を聴き返す。本棚を眺め、今まで読んだ本の内容を一つひとつ思い出せるかやってみる。観た映画のタイトルを頭の中で並べ、また床に積んである展覧会の図録をパラパラ見る。けれどまず、私は自分が何を探しているのかがわからない。そのうち、そもそも探している何かなんて最初からなかったと投げやりな気持ちにさえなる。
 
ちょうど一年前、大学院の修了制作について考えていたときに、レイモンド・カーヴァーの「ダンスしないか?」という短編を読んだ。妻に出ていかれて、自分も引っ越すためガレージセールをする中年の男性のところに、若いカップルがやってきて家具を買う。そして一緒にお酒を飲み、その若い娘と男性はダンスをする。彼女はあとでそのことをみんなに話そうとするのだが、そこには事実だけではうまく語ることのできない何かがあった、という話。それを読んで、その感覚を私は知っているような気がするし、その言葉にできないような感覚を絵にしたいと思った。今回個展をするにあたって、なんとなく最近読んだ本や映画を見返していたら、もう一度その短編にたどり着き、そしてまたあの感覚を思い出した。私が一年間ずっと探していたのはこれだった。一年かけてやっと少しは遠くに行けたのかと思ったら、ぐるっと円を描いてまた元に戻ったような気もしたが。
 
絵の中で私は知らない世界を作り、良い物語を読み終えたときのような感覚を表現したいと思っている。空や山、それらに続く道の奥には私の知らない場所がある。この感覚が伝わってくれたら嬉しいし、言葉にできるなら言葉にしてほしい。それが私が思っていたところと違っていても、そういうのって大体においてそうだと思うから、それでいいと思っている。
 
この個展のタイトルは実家で夕食を食べていたときに父がかけていたレコードのタイトルから取った。誰のどんなレコードなのかもう思い出せないけれど(詳しい人ならきっとわかるだろう)、タイトルだけ憶えていて、なんとなく気分に合うような気がしてつけてみた。思ったよりも大仰になってしまっていたら少し恥ずかしい。ただ、自分の絵画の世界がより遠くまで行ければいいと思う気持ちに(少なくとも今は)寄り添ってくれている。
 
[プロフィール]
荒井 颯子(あらい さっこ)
1999年生まれ、神奈川県出身。2025年多摩美術大学大学院日本画研究領域修了。他者の物語を描くことで、人間同士の心の距離について考える。
主な個展に「黄色い壁、その他の短い話」(横浜マリンタワー2Fアートギャラリー、神奈川、2023)、「絵のある部屋」(京都 蔦屋書店 6F ギャラリーウォール、京都、2024)、「The Silent Encounter」(PG gallery、ソウル、2025)
 
[販売について]
展示作品は、会場にて1月17日(土)11:00より販売します。
※プレセールスの状況により会期開始前に販売が終了することがあります。
 
  • 会期 2026年1月17日(土)~2月4日(水)
  • 時間 11:00~19:00 ※最終日は18:00までとなります。
  • 定休日 月曜日
  • 場所 FOAM CONTEMPORARY
  • 協力 株式会社Art Republic
  • 主催 銀座 蔦屋書店
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