【コンシェルジュ文庫2024】コンシェルジュ座談会
「16Personalities」を読書のきっかけに

蔦屋書店では2019年から毎秋、コンシェルジュたちが一つのテーマに沿って選び抜いた文庫本を提案する「コンシェルジュ文庫」を開催しています。6回目となる今年は「あなたにぴったりの本」をテーマに、今話題の16タイプの性格診断「16Personalities」と掛け合わせて、タイプ別におすすめの文庫本を選びました。10月25日(金)からのフェア開催を記念して、普段は異なるお店で働く3人のコンシェルジュが集まってオンライン座談会を実施。今回の「コンシェルジュ文庫」について語り合いました。
 

座談会参加者

松本泰尭(まつもと・やすたか)

【自身のタイプ】仲介者 →【選書したタイプ】建築家 
二子玉川 蔦屋家電 文学コンシェルジュ。大学で映像を勉強後、広告代理店勤務を経て、2015年の二子玉川 蔦屋家電のオープニングスタッフとして勤務開始。海外文学と映画とファッションとMLBが好き。好きな作家は絲山秋子、長嶋有、ジョナサン・フランゼン、J.M.クッツェーなど。

桑田伊古奈(くわた・いこな) 

【自身のタイプ】仲介者 →【選書したタイプ】提唱者

名古屋みなと 蔦屋書店 くらしコンシェルジュ。AD、雑貨屋店長を経て代官山 蔦屋書店でコンシェルジュという仕事に出会う。本の専門家ではないが、今まで経験してきた仕事や趣味のすべてが、本を通してライフスタイルを提案することにつながり、現在は主にイベント企画・雑貨フェアを担当している。

 

田辺真弓(たなべ・まゆみ) 

【自身のタイプ】提唱者 → 【選書したタイプ】仲介者

京都岡崎 蔦屋書店 アートコンシェルジュ。2016年に京都岡崎 蔦屋書店のオープニングスタッフとして入社。現在はアートコンシェルジュとして勤務している。好きなアーティストはコンザレス・トレス。夏はホラー小説を読むのが習慣で、芦花公園、貴志祐介などの作家を好む。鳥を観察し愛でることが生きがい。

 

普段は本を読まない方にも届けたい

――2024年の「コンシェルジュ文庫」のテーマは、16Personalitiesのタイプで選ぶ「あなたにぴったりの本」です。テーマは、どのように決めましたか?

 

松本:「コンシェルジュ文庫」はこれまで“本好き”に向けた企画になっていたとの思いから、まずは普段、本を読まない方たちにも興味を持ってもらえるようなものにしたいと思いました。以前、同僚が大学で講義をした際に、16タイプの性格診断に興味がある学生が多かったという話を聞いたことを思い出し、性格診断と結びつけて選書したら手に取ってもらいやすいのではないかと考えました。

桑田:今回のテーマはスタッフに好評で、最初に共有したときはすごく盛り上がりました。「コンシェルジュ文庫」はこれまで一部のメンバーしか関わっていませんでしたが、今回はスタッフみんなが興味を持ってくれたように思います。私自身も性格診断は以前から馴染みがあり、今までで一番、ウキウキして選びました。「あの人は〇〇〇タイプだから、この本を」といったように、贈り物の参考にもできておもしろいと思いました。

田辺:私も最初にテーマを聞いたときは、すごくワクワクしました。私は性格診断をするたびに違うタイプになるのですが、そのように同じ一人の人間でも、そのときどきのライフステージによって少しずつタイプが変わるのがおもしろいなと思っていました。誰しも、複数タイプの性質を持ち合わせることを思うと、私が担当する「仲介者」に向けた選書は、より幅広い方への選書になるなと。「仲介者のように共感力を高めたいときはこの本がおすすめ」といった提案ができると思いました。

 

――選書を担当したタイプへのおすすめ本は、どのように選びましたか?

 

松本:私は著者や登場人物の考え方に共感できるかどうかで、その本の好き嫌いが決まるので、担当した「建築家」タイプには、著者や登場人物が同じ「建築家」タイプであると思われるものを選びました。あとは、普段、本を読まない方にも手に取っていただきやすいように、できるだけ“薄くて読みやすい本”にしています。

桑田:自分の“推し”が担当タイプの「提唱者」だったので、“推し”に向けて贈るイメージで選んでいます。『虹の戦士』はもともと読んでいたものですが、その他は自分が好きな作家作品のなかから「提唱者」に贈るならどれがいいだろうと新たに読んで決めました。なるべく短く、また全編というよりはその本の言葉を心に刻み、後で思い出してもらえるようなものを意識して選びました。疲れたときに心に刻んだ言葉を思い出して元気を出してもらえたら嬉しいです。

田辺:私は周りに「仲介者」が多かったので、その人たちを思い浮かべながら選びました。「仲介者」の特徴のなかでも「感情的に疲れやすい」点が気になったので、そんな「仲介者」に寄り添う本として、繭を包むような優しさを持った文章を書く作家の本や、小動物に心が温まる本などをおすすめしています。薄めのものだったり、長くても短編集だったりと、通学・通勤時間に読める本であることにも気を付けました。

120%共感。ぴったりな選書

――自身のタイプへの選書は、どのように感じましたか?

松本:「仲介者」におすすめしてもらった『ここはとても速い川』は、読もう読もうと思いながらまだ読めていなかった本だったので、これを機にぜひ読んでみようと思います。他の2タイトルも知ってはいましたが、自分一人では手に取ろうとは思わなかったので、手に取るきっかけになっていいですね。読んでみて共感できたら、自分にはないと思っていた「仲介者」の性質が自分にもあったんだと気付けそうです。

桑田:私もずっと欲しかったタイトルや、語りかけてくれるような文体が好きだなと思っていた作家のタイトルが「仲介者」へのおすすめ本にあったので、ぴったりな選書だと思いました。早速、読んでみた他のタイトルも、妄想癖があり耽美的なものが好きな「仲介者」に合っていると思いました。田辺さん、おすすめ、ありがとうございました。

田辺:そんな風に言っていただいて嬉しいです。ありがとうございます。桑田さんが選ばれた「提唱者」向けの3タイトルは、どれも読んだことがなかったのですが、実際、読んでみて出会えてよかったと思いました。『虹の戦士』は、自分が貫こうと思ったことを大きな声で言うわけではないけれど、心の中に小さな灯をともしながら生きていこうと思わせてくれる、勇気をもらえる温かさがある本だと感じました。また、もう1冊の今までなんとなく手を出せないまま来てしまっていた作家の本も、これを機に読んでみたら、表紙裏にも書いてある通り120%共感しかなくて、なんで今まで読まなかったんだろうと思いました。登場人物の一人が折に触れて発する言葉がすっと心に入ってきて、読んで本当によかったと思いました。

――各店でのお客様の反応はいかがですか?

松本:二子玉川では、足を止めて冊子を手に取ってくださっている方が多いように思います。また、今回は若者を意識して考えた企画でしたが、16タイプの性格診断を知らなかったと思われる年配の方にも見ていただいており、幅広い層に興味を持っていただいていると感じます。

桑田:名古屋みなとでは、中学生くらいのお子様と、その親御さんが、家族それぞれの本はどれかなと、楽しそうに見てくださっていた姿がありました。薄くて読みやすい本を入れておいてよかったです。年齢問わず幅広い方に手に取っていただけるきっかけになっていると思います。

田辺:京都岡崎も立ち止まり率が高くて、興味を持ってもらっている実感があります。その場で自分のタイプは何かを知るために16タイプの性格診断をしている人もお見かけします。今回の「16Personalities」は、種類の多さが魅力だと思ったので、今後、例えばですが、星座別などで提案してもおもしろいのではないかと思いました。

桑田:確かに今回のように、誰もが興味のある共通言語のようなテーマだと良さそうですね。過去に「ブラインドブック」(本のタイトルや著者名を伏せて紹介文言を頼りに選んでもらう企画)のフェアをしたことがあるのですが、お客様の反応がよかったので、私たちらしくそういったことができると、また違った方面から興味を持ってもらえるのかなとも思います。

松本:今回のように、本ではないものと掛け合わせるのはフェアとしておもしろいですよね。来年までに、またいい企画を考えたいと思います。ぜひ楽しみにしていてください。

 
 

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