【コラム】蔦屋書店のコンシェルジュが選んだ 秋の夜長に楽しむ、最高に贅沢な一冊
だんだんと夜が長くなるこの季節は、スマホを手放し、本の世界へ旅しましょう。
蔦屋書店 感謝祭 2025秋のテーマ「おとなの贅沢時間 」にちなんで、蔦屋書店のコンシェルジュが選ぶ<秋の夜長に楽しむ、最高に贅沢な一冊>をご紹介。
読んだ人だけが得られる“心満たされるひととき”をお約束します。

追いつめられる主人公。救いはどこに。
浦和 蔦屋書店 人文コンシェルジュ
久野 隆司
おすすめを読む久野 隆司

罪と罰(上下)
著者:ドストエフスキー訳:工藤精一郎
出版社:新潮社 1886年発表のロシアの文豪ドストエフスキーの代表作です。主人公は独自の犯罪理論を持つ孤独な青年。練りに練った殺人計画だったが、ふとした計算違いから主人公の苦悩が始まる。主人公の追いつめられてく心理描写に深く引き込まれていきます。サスペンスであり、思想小説であり、愛の物語でもある本書はとても贅沢な一冊であり、秋の夜長にじっくりと読みたい一冊でもあります。

いつもなにかを読んでいたい
京都 蔦屋書店 写真コンシェルジュ
濱崎 崇
おすすめを読む濱崎 崇

オン・リーディング
著者:スティーブ・マッカリー出版社:ファイドン 人がなにかを読んでいる姿って、なぜか魅力的。この写真集は、世界中のそんな姿を集めています。この人はどんな本を読んでいて、生活をして、人生を過ごしてきたのかを想像しはじめると、あっという間に時間が過ぎてしまいます。本を読むこともそうですが、本を読む人を読むことも、きっと贅沢な時間に違いありません。

季節を慈しむ贅沢な時間
京都岡崎 蔦屋書店 日本文化コンシェルジュ
安藤 万利恵
おすすめを読む安藤 万利恵

続・三春タイムズ
著者:長谷川ちえ画:shunshun
出版社:信陽堂 〈in-kyo〉を営む長谷川ちえさんの二十四節気と共に進むエッセイ集。四季を想い、日々のほんの小さな移ろいを感じ生きることは何より贅沢な気がします。あたたかいshunshunさんの挿画や、サイトヲヒデユキさんの造本装幀も目に美しい。自然を感じながら丁寧に暮らすことの豊かさに気づかせてくれる1冊です。

何かのために、の日々から離れて
代官山 蔦屋書店 人文コンシェルジュ
宮台 由美子
おすすめを読む宮台 由美子

瞬間に生きる:活動するための哲学
著者:アダム・サンデル 訳:鬼澤忍出版社:早川書房 何かのために努力し目的を達成したものの、気づけば心は満たされずまた新しい目標を志向する。いつまでも心が満たされないサイクルから抜け出すための瞬間を生きる美徳について語る一冊。古代哲学の知見を参照しながら、日々あわただしく現代を生きる私たちの幸福について考える贅沢なひとときを。

ページをめくるたびに、幻と記憶が交差する。
代官山 蔦屋書店 デザインコンシェルジュ
相原 絢子
おすすめを読む相原 絢子

僕とY字路 Photograph / 僕のY字路 Painting
著者:横尾忠則出版社:トゥーヴァージンズ 横尾忠則の「Y字路」シリーズは、ただの風景画ではなく、人生の分岐点を象徴する作品です。懐かしくも幻想的な光景は、見る者の記憶や迷いを静かに呼び覚まし、現実と心の狭間にある深い内面へと誘います。その静けさは、不安でありながら安らぎでもあり、自分と向き合う贅沢なひとときを与えてくれます。

人類が繰り返す希望と絶望 その円環に何を見るか
二子玉川 蔦屋家電 コミックコンシェルジュ
山本 仁
おすすめを読む山本 仁

火の鳥 全14巻セット
著者:手塚治虫出版社:KADOKAWA その生き血を飲むと永遠の命を手に入れられるという、“火の鳥”をめぐって織りなされる人々の業を描いた、未完ながらも壮大な連作。AIや戦争など、現代でも最も切実なテーマを当時から扱い、実験的表現で漫画の可能性にも挑むという、漫画の神が世界に残した贅沢過ぎる一滴。ワインのようにじっくりと堪能してください。

白は、一つではない。
梅田 蔦屋書店 文学コンシェルジュ
河出 真美
おすすめを読む河出 真美

すべての、白いものたちの
著者:ハン・ガン 著 訳:斎藤真理子出版社:河出書房新社 ハン・ガンは、今生きている作家の中で一番好きな作家です。この本は白という色をテーマにしているのですが、それを表現するため、本文に五種類の紙が使用されています。白という一つの色が、実は一つではなく、さまざまな顔を見せることを、物理的にも表したところが贅沢。触ってみたくなる美しい本です。

大人になっても宵っ張りの子どものままで
函館 蔦屋書店 アートコンシェルジュ
上倉 未来
おすすめを読む上倉 未来

はてしない物語(上下)
著者:ミヒャエル・エンデ訳:上田真而子/佐藤真理子
出版社:岩波書店 「早く寝なさい」と怒られるまで本を読みふけった子ども時代。大人になって誰に怒られることもなく、夜遅くまで物語に没頭できることが、この上なく贅沢な時間となりました。『はてしない物語』は子どものころに夜更かししてでも一気読みをしたかった本のうちのひとつ。ぜひ、秋の夜長の1冊にいかがでしょうか。

感覚が研ぎ澄まされ、心を静めてくれる1冊。
枚方 蔦屋書店 絵本コンシェルジュ
河本 真由美
おすすめを読む河本 真由美

愛蔵版 宮沢賢治童話集
著者:宮沢賢治絵:日下明
監修:小埜裕二
出版社:世界文化社 宮沢賢治の代表作17選に、日下明の幻想的で温かみのあるカラー画がふんだんに添えられた1冊。箱や見返し、ページの紙の手触りを確かめたら、金の三日月が描かれた表紙を開きましょう。その瞬間から、賢治の世界にどっぷりとはまる、贅沢な時間のはじまりです。そこには生きることへの喜びや悲しみ、生命を燃やす美しさが、豊かな言葉によって紡がれています。特別収録のオリジナル音楽を聴きながら、秋の夜長の大人の読書時間はいかがでしょうか。

この小説こそ不老不死。格調高い冒険小説の白眉。
六本松 蔦屋書店 旅コンシェルジュ
森 卓也
おすすめを読む森 卓也

失われた地平線
著者:ジェイムズ・ヒルトン訳:池央耿
出版社:河出書房新社 アームチェアに身を沈めて、ウィスキーや濃い紅茶を用意して読みたい本。1933年に発売されたベストセラーで、チベットの奥地にあるとされる不老不死の楽園シャングリラをめぐる冒険小説の古典です。発表から90年経っても奇抜な着想や端正なストーリーテリングは全く古びません。時を越えて支持される小説に没入する時間は、無上の贅沢です。