【広島 蔦屋書店】「記憶の解凍」フェア

フェア・展示
1号館1F マガジンストリート 2024年07月24日(水) - 09月04日(水)
写真提供/高橋久 カラー化/庭田杏珠
 
 
戦争の記憶、それは写真として、映像として、文章として、記録として大量に残されてはいる。
しかし、ただ記録するだけでは、それを保存し仕舞っておくだけでは、次世代へ引き継げないこともある。なにより同じことを繰り返さないためには、それら記録をきちんと引き継いで、何があったのかを伝えていかなければならない。無機質な記録を、私達自身の記憶として解凍し、温度感があり手触りのあるものとして知り、そして引き継ぐことこそが重要であると思う。実際に体験していない私たちには、丁寧にその解凍をしていくべき義務があるのではないだろうか。
それこそが、私たちが次世代にしてあげられる大事な役割だと考える。

広島 蔦屋書店 文学コンシェルジュ 江藤宏樹
 
 
 
 
 

今回のフェアでは、庭田杏珠さんが進めている取り組み「記憶の解凍」から、タイトルをお借りしました。
 
「記憶の解凍」とは、原爆投下前の広島の日常を捉えた白黒写真を、AI(人工知能)技術や当時の資料、戦争体験者との対話でよみがえる「記憶の色」をもとに、カラー化する取り組みです。
 
取り組みの始まりは、2017年、庭田さんが高校1年生だった夏に、広島平和公園での濵井德三さんとの偶然の出会いからです。濵井さんが疎開先に持参していたアルバムには戦前のご家族との幸せな日常を写した貴重な白黒写真が約250枚収められていました。
 
その出会いの1週間後、庭田さんの母校で、東京大学大学院の渡邉英徳先生からAIによる自動色付け技術を学ばれて、「カラー化した写真をアルバムにしてプレゼントして、大好きなご家族をいつも近くに感じてほしい」という想いから、カラー化が始まりました。
 
AIでカラー化するだけでなく、当時の資料や、戦争体験者と直接対話する中でよみがえる「記憶の色」をもとに、手作業で補正を繰り返します。鎮魂の想いを込めて、一枚一枚丁寧にカラー化するため、完成するのに最低でも1か月、中には1年以上かかる写真もあるそうです。
 
カラー化写真をご覧になった濵井さんは、「家族がまだ生きているようだ」と喜ばれました。桜の名所・長寿園での花見の写真では、青々とした杉並木から「杉鉄砲でよく遊んだなあ」と、白黒写真では思い出せなかった新たな記憶がよみがえったといいます。凍りついていた家族との悲しい記憶が、カラー化写真をもとに対話することで、戦前の幸せな日常の記憶へと変わっていく。その様子から「記憶の解凍」と名付けられました。
 
今回のフェアでは、庭田杏珠さんが選書してくださった本も展示しています。
また、このフェアに連動した写真パネルの展示と庭田杏珠さんのトークイベントも開催します。
 
2024年07月27日(土) - 07月28日(日)
2号館2F SQUARE GALLERY 
詳しくはこちら
 
 
広テレで発信している広島発のドキュメンタリー「WATCH」で庭田さんの取り組みが取り上げられています。HPはこちらです。
YouTubeでご覧いただけるようになりました。
https://youtu.be/DD-YbYR30aE?si=e6_IRMtHO7g8jMdZ
 
 
2024年7月広島テレビで特集が放送されました。 
広島テレビ【つなぐヒロシマ】
 
このフェアと展示によって、みなさまの平和への思いがより一層強くなることを願っています。
 
 
【プロフィール】
庭田杏珠(にわたあんじゅ)
 

2001年、広島県生まれ。peace artist.
2024年東京大学卒業後、広島テレビ放送株式会社に入社。報道制作局の記者として勤め、「記憶の解凍」にも取り組む。
2017年、中島地区(現在の広島平和記念公園)に生家のあった濵井德三氏と出会い、「記憶の解凍」の取り組みを開始。これまでに展覧会、映像制作、アプリ開発など、アートやテクノロジーを通した戦争体験者の「想い・記憶」の継承に取り組む。
国際平和映像祭(UFPFF)学生部門賞(2018年)、「国際理解・国際協力のための高校生の主張コンクール」外務大臣賞(2019年)、令和2年度学生表彰「東京大学総長賞」などを受賞。
東京大学渡邉英徳氏との共著「AIとカラー化した写真でよみがえる戦前・戦争」(光文社新書、2020年)で「広島本大賞」(2021年)を受賞。2021年8月、HIPPY氏、はらかなこ氏と楽曲「Color of Memory〜記憶の色〜」、達富航平氏とMVを制作。音楽とカラー化写真のコラボレーションにも挑戦。2025年公開予定の映画「記憶の解凍」制作中。
愛読書は、日野原重明先生『十歳のきみへ   九十五歳の私から』(2006年、冨山房インターナショナル)。

 
  • 期間 7月24日(水) - 9月4日(水)
  • 場所 1号館1F マガジンストリート

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