【アート展示】松本千里「フク運ぶツタ」

 
広島市を拠点にアート活動をする松本千里さん。松本さんは布を染めるための伝統的な染織技法のひとつである「絞り」の技法を使って作品を制作しています。染める前の糸で縛った状態の布でかたちを作り出し、空間を使うインスタレーションを生み出しています。糸で布を巻いて絞りの粒が作られていく。ひとつひとつの粒の細かさと、それが集合することによるダイナミックさ。その力強い造形が松本さんの作品の魅力のひとつです。
 
 
広島 蔦屋書店には、高さ8.7メートル、幅16メートルの吹き抜けがあります。壁面の全体には本が陳列されている広島 蔦屋書店の象徴的な場所といえます。そこに、松本さんのインスタレーションが展示されています。書店という空間を変容させ、見る角度によって様々に印象を変える作品の生命力を感じてください。
 
 
photo / 仁科勝介
 
 
「フク運ぶツタ」
2022年
ポリエステル布・ニット用ミシン糸・風船
 
 
「フク運ぶツタ」は、天井から生えている植物のツタのような絞りの粒に大きな実がなっている作品です。私はこの絞りの粒を人に見立てており、絞りの粒ひとつひとつが繋がりを持ちながら実をつけている様子から、人のつながりで大きなフクがやってくることを抽象的に表現しています。
ツタは自らだけでは自立できない存在ですが、何本も絡まることでお互いを補うことができます。そのような支え合いによる集積が大きなフクへと結実していくのです。フクは人によって様々なかたちであるように、絞りの粒の集積のバランスや大きさによって個々の違いを映し出しています。見た人の気持ちを楽しく弾ませ、作品から誰かとの結び付きを想っていただければ幸いです。
松本千里
 
 

 
【プロフィール】
 
 
松本千里(まつもとちさと)
1994年広島市生まれ。広島市立大学芸術学研究科博士後期課程在籍中。
伝統的な絞り染め技法を用いてインスタレーションやパフォーマンスなど、素材と技法に根差しながら、模様ではない立体的な表現を展開している。失われつつある日本古来の伝統的な技法から別の価値を創造することを目標に、新たな解釈を広げるアート活動をしている。立体的な絞りの粒を人に見立てた「個と群衆」をテーマに、抽象的な空間造形を通して現代社会に息巻くエネルギーを作品に込めている。
「Tokyo Midtown Award」(2017年)で優秀賞受賞、「第4回金沢・世界工芸コンペティション」(2019年)で入選、「六甲ミーツ・アート芸術散歩」(2020年)で準グランプリ獲得、「FUTURE ARTISTS TOKYO」(2019年、2021年)に出展するなど活躍を続けている。

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