へいじつのよみきかせ~親と子の時間~「好き嫌いを克服する!」

 
Kidsコンシェルジュ宮本が提案する絵本を軸とした親と子の過ごし方。
今回は「好き嫌いを克服する!」をテーマにお送りします
 
好き嫌いが始まるのは1歳半を過ぎたころからといわれています。
それを克服するには5歳までがタイムリミット…なんていう説もあるのです。
 
そもそもなぜ好き嫌いが出てくるのでしょうか?
その答えには離乳期が大きく関わってきます。
・離乳食のすすみ具合と食材の形状が合っていなくて、食べにくい経験をした
・メニューがワンパターンになってしまい、色々な食材を経験できていない
・苦い、酸っぱいなどの味覚が不快だった
・食感が不快だった
など理由は様々でしょう。
 
子どもの月齢が小さいほど、一度不快な思いをすると二度目は絶対といっていいほど食べてくれないと思います。しかし諦めないでほしいのです。
味覚だけでなく、人は色々な物事に合う合わないがあって当然です。それは個性といえます。しかし、食べ物は体をつくるための栄養なので摂取しないとなると健康が阻害されてしまいますから「個性だから食べなくていい」というわけにはいきませんね。なので、何でも好き嫌いなく食べてほしいなぁと誰もが思うこと。
かといって、子どもの好き嫌いを全部なくすことはできません。大人だって1つや2つは嫌いな食べ物はあるのですから。
 
そこでまずは、1つ嫌いな食べ物を克服してもらえるように、工夫してみませんか?
例えばピーマンなら「ハンバーグに混ぜ込む」「みじん切りにしてチャーハンに」というように、見えないように調理をしてみる。どんな形であれ食べることができたら、それは「嫌いな食べ物」ではないということにします(勝手に)。これでいくつか「好き嫌い」が少なくなったでしょう?子どもがいくら「キライ!」と言っても、「食べられるんだから嫌いじゃないよ」と笑顔で言ってあげましょう。
 
次に、子どもが1度口にして嫌がったり吐き出したりしたものは「嫌いなんだね」と認めてあげましょう。そしてここからが大切です!
嫌いでも、食卓に並べます。
嫌いで食べない野菜を「食べないから」と食卓に出さなくなると、見ることもなくなり、存在すら記憶から消えてしまいます。
食べなくても食卓に出し続けます。子どもがそれを食べなくても、親御さんや兄弟、おじいちゃんおばあちゃんが食べているところを自然な雰囲気で見せてあげてください。何日か後にもまた食卓に出します。存在を消してはいけないんですね。
そうしていると、いつか成長してふとした時に友達が食べているのを見ると、「あ、これ家族もよく食べてたな、食べてみようかな」と自然に意識できるようになるのです。
しかし「出してもどうせ食べないなら、もったいない」と思われるかもしれません。「もったいない」を優先されても、もちろん良いと思います。食品ロスは、世界が抱える解決すべき大きな問題なのですから…しかし、「もったいない」の問題は、好き嫌いを減らすことでも解決につながるということを知ってほしいと思います。
そして、「嫌いなものは1口だけ食べることができたら良しとする!」ということ。
「1口食べたらごちそうさましよう」
保育園では、子どもが嫌いな物を食べてほしいと思ったときはこんなふうに声かけをします。もしくは「1口食べたらデザート食べよう」。決して「嫌いなら食べなくていいよ」とは言いません。もしそこで吐き出してしまったとしても、味を知ることや体が大きくなるために食べたほうがいいということ、そして嫌いな食べ物に立ち向かうことを学んでほしいからです。「食育」ですね。
そして頑張ったら嬉しいご褒美があるということも、これから社会に揉まれ頑張っていくための大切な考え方の1つだと思います。
1口食べることができたら、しっかり褒めてあげてください!
 
我が家の天敵はというと、「ねぎ」でした。お味噌汁にちょこんと乗せたねぎの切り方がまずかったのでしょう。もっと丁寧に細かく切れば良かった、そもそも小口ねぎにすればよかったと後悔しても後のまつり…息子はどんなにちょびっとのねぎでも、チャーハンやお味噌汁に混ぜ入れても、絶対に残していました。でも私は入れ続けました。
ある日(といっても中学生になっていたでしょうか)、一緒にラーメン屋さんに行った時のことです。彼は「ネギ抜きで」とラーメンを注文しました。本通りにある某有名なとんこつラーメン店です。「ねぎ無しのとんこつラーメンはおいしくないよ?」とアドバイスはしましたが、彼は強行しました。食べながらしばらくして、「母さん、ネギトッピングしていい?」と…
ネギのないラーメンは想像していた味と違ったのでしょう。そしてネギの大切さも気づいたのです。
彼はそこで、幼いころから食べられなかったネギを克服しました。親としてはとても嬉しかったですし、びっくりしました。
こんな風に成長とともに、味覚は変わってきます。苦いものや辛い物、嗜好品などが口にできるようになってくるので、5歳を過ぎてもぜひ諦めないでほしいと思います!
ラーメンの話は、ネギトッピングしたことで普通に注文するより高くつきました。
というオチがつくのですが…
 
いつか食べられるようになってほしいな…それくらいの長い目で寄り添ってあげましょう。気が付けば「食べとるじゃん」と思えた方が、子育ての間は親御さんの気持ちが楽になります。そしてそのくらいのほうが、意外と早く効果が出てきたりもするのです。
 
これを機に、お家の方もお子さんと一緒に好き嫌いを克服してみては?
励まし合いながら、一緒に頑張れる気がしてきますよ!
 

【今月のおすすめ絵本】
『サラダでげんき』
角野栄子 作/長 新太 絵/福音館書店
 
 
[あらすじ]
りっちゃんは病気のお母さんのためにサラダを作ることを思いつきます。
すると、驚いたことに「これを入れると美味しいよ」とたくさんの動物たちがりっちゃんの家にアドバイスにやって来ます。さあ、どんな美味しいサラダができたのでしょうか?
サラダを食べたお母さんは、病気なんかふっとんで元気もりもりになります!
 
[読み方アドバイス]
繰り返しの絵本なので4歳くらいから楽しめますが、小学校1年生の国語の教科書に掲載されているお話ですので、一人読みにも楽しいお話です。りっちゃんのサラダを実際に作って食べてみるのはどうでしょう。野菜が苦手でも、お家の人と一緒に自分で作ったサラダはきっと美味しく食べてくれると思いますよ。(広島市の小学校では給食の献立にもなっていますね)
4歳~
 
 

 

宮本 陽子(みやもと ようこ)
KIDSコンシェルジュ
保育科卒業。保育士として広島市の保育園に勤務。
21年勤続の後、保育士時代に毎日読み聞かせをして培った絵本の知識を、リアルタイムに子どもたちそして親たちへ伝えられたらと思い、2017年広島 蔦屋書店に入社。入社してからも「へいじつのよみきかせ」で平日は毎日1日2回、ほぼ毎日絵本を読んでいる。
「0歳から就学前の子どもたちの好きな絵本」、「親が子どもにぜひ読んであげてほしい絵本」、「おとなの気持ちを癒す絵本等」等、多様な児童書というジャンルのなかでも特に「絵本」が持つ魅力を提案し続けている。

 

SHARE

一覧に戻る