へいじつのよみきかせ~親と子の時間~「プラスの声かけ」

 
Kidsコンシェルジュ宮本が提案する絵本を軸とした親と子の過ごし方。
今回は「プラスの声かけ」をテーマにお送りします。
 
家事、育児、仕事に追われ毎日忙しい日々を過ごし、ついつい子どもに心にもないことを言ってしまったり、イライラして突き放すようなことを言ってしまったりしていませんか。
自分がいけないとわかっていても、照れくさくてごめんねとなかなか謝ることができないのもよくわかります……
今月は「プラスの声かけ」と題しています。それは、双方が嫌な思いをしなくてすむ方法。発想の転換です。
 
子どもに「帰ろう」と声をかけたとします。
子どもは、遊んでいるときに時間だからと片付けをして帰るということがなかなかむつかしいですね。2歳ころのイヤイヤ期がピークでしょう。なんでも「イヤ」なんですね。
子どもは帰りたくないから「イヤだ」といいます。ではどんなふうに声かけしたらいいのでしょうか。
例えば「手をつないで帰る?」それとも「抱っこして帰る?」そんなふうに言ってみるとどちらかを選択したくなりませんか?これがプラスの声かけです。子どもの「わかっていても譲れない」という気持ちを上手く誘導しています。気持ちよく家に帰ってほしい親御さんと、自分で楽しく帰ることを選んだ子どもはWinWinの関係になりました。
最後は怒りながら泣く子どもを連れて帰る…なんていうのは、しんどいですから(抱っこも重たくてしんどいかもしれないけど)。
「帰る?帰らんの?」では、当然「帰らん」になってしまいます。
「じゃあ置いて帰るよ」も今の時代あまりよろしくない言葉なのでおすすめできません。
 
それでは、「これ買う!」はどうでしょう。
おもちゃ屋さんで、「これ買う!」とダダをこねて泣き叫んでしまったらどうしますか?
そもそも、「それ買わんよ」とこちらがそっけなく言ってしまうからなのですが……
買い物に連れて行くとき、私はいつも「1個だけね」と約束していました。もし、他のものもほしいと言ってきたときに「1個って約束したよ」と言えるから。これはプラスの声かけです。買い物に連れて行くから1つくらいは何かほしい物を買ってあげようかなと予定していれば、それぞれの家庭のルールに従って買ってあげるのもいいと思うのです。
こんな方法もあります。
ほしいといったものを画像で残しておきます。泣き叫んでしまったら聞く耳を持たないのでこの方法は使えないのですが、ひと休みにフードコートで美味しいものを食べながら画像を見せ「これとどっちにする?」と問いかけることができますね。自分で選んだり決めたりする自我が芽生える頃のお子さんには、泣き叫ぶ前にぜひ試してもらえたらと思います。これもプラスの声かけですね。
しかしながら、買い物に連れていくけどいつも買ってるから今日は買わない!と強い意志を持ってお出かけするのも大事なこと。そんな時は、泣き叫んでしまうかもしれない場所にはあまり近寄らず、絵本の読み聞かせに行って絵本を楽しんだり(平日毎日開催しています!)、子どもが喜ぶイベントに足を止めてみたり、大好きなアイスクリームを食べたりしながら、付き添いではなく子どもも満足できるお買い物を家族で一緒に楽しんでほしいなと思います。
 
「歯医者さん」や「注射に行こう」はどうでしょう?
これはプラスの声かけをしても難しいかもしれませんね。でもあきらめないで。無理やり連れていくよりも子どもがイヤがったとしても「頑張る気持ち」を持って前向きでいられることが「プラス」なのですから。
私が経験したことです。子どもが1歳半くらいの時でしょうか、初めて連れて行った歯医者さんで、押さえつけられた歯科助手さんの指を噛んでしまい、嵐のような治療が行われ、すっかり歯医者さん嫌いになって困ったことがありました。子どもはどこの歯医者さんでもイヤよねと諦めながら、私が通院していた歯医者さんに連れて行きました。状況を相談したところ、すごいことが起こったんですね。
2歳過ぎの子どもを診察台の横に立たせ、治療のために口に入れる器具を子どもに見せ、「シュッ」と顔や手に風をあててくれたり、歯を削る器具を「ちょっと大きい音がするけど痛くないんよ」と優しく説明してくれたのです。何をされるのかわからないまま不安だったから、イヤだったのですね。私はそれがわかって良かったと思いました。だって溜息をついてしまうことなく、「すごいね、できたじゃん」と笑顔で褒めてあげることができたのです。
子どもは、そこの歯医者さんでちゃんと治療を受けることができました。
 
こんなふうに、「プラスの声かけ」になるように言葉を選ぶ、または誘導することができれば、親も子もしんどくならずにすむかもしれません。
しかし、「プラスの声かけ」ですべてがうまくいくわけではありません。子どもは1人ひとり違いますからうまくいくことも、うまくいかないこともあります。
親も子どもも気持ちよく乗り切れるようにプラスの声かけを見つけてみませんか?
 

【今月のおすすめ絵本】
『あなたのすてきなところはね』
玉置永吉 作 /えがしらみちこ 絵 /KADOKAWA
 
 
この絵本は、お家の方へ、ぜひ読んでいただきたいです。
そして、わが子が成長しながらつまずいたり悩んだりしたときに手渡してあげてほしいのです。
「あなたのすてきなところは…」なんて、面と向かって子どもに伝えることができる親御さんはきっと少ないでしょう。恥ずかしさもありますね。でも心の中ではそう思いながら子どもと接することが、大事なんじゃないかなと思うのです。子どもは親御さんの表情をよく見ています。幸せオーラや不安な心の動きなんかを子どもはすぐに察します。
「あなたは私にとって大切な人なんだよ」ということを、子どもたちにはいつも感じていてもらいたい、そう思うからです。
 

 

宮本 陽子(みやもと ようこ)
KIDSコンシェルジュ
保育科卒業。保育士として広島市の保育園に勤務。
21年勤続の後、保育士時代に毎日読み聞かせをして培った絵本の知識を、リアルタイムに子どもたちそして親たちへ伝えられたらと思い、2017年広島 蔦屋書店に入社。入社してからも「へいじつのよみきかせ」で平日は毎日1日2回、ほぼ毎日絵本を読んでいる。
「0歳から就学前の子どもたちの好きな絵本」、「親が子どもにぜひ読んであげてほしい絵本」、「おとなの気持ちを癒す絵本等」等、多様な児童書というジャンルのなかでも特に「絵本」が持つ魅力を提案し続けている。
 
 

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