へいじつのよみきかせ〜親と子の時間〜「スムーズに箸へ移行するためには?」

 
Kidsコンシェルジュが提案する絵本を軸とした親と子の過ごし方。
今回は「スムーズに箸へ移行するためには?」をテーマにお送りします。
 
食欲の秋がやってきました。秋は美味しい旬の食材がたくさん揃いますね。夏は食欲が落ち気味だった子どもたち。食欲が戻るこの季節に美味しいごはんをたくさん食べて元気に大きくなってもらいましょう!
さて、今月は箸についてお話ししようと思います。
 
「箸っていつから持たせたらいいのかな」
「箸の持ち方ってどうやって教えたらいいの?」
 
日本食を食べる時、私たちは箸を使います。
子どもがスプーンを使って上手に食事ができるようになったら、次のステップアップとして箸への移行を考えなければいけません。
子どもは大人に使い方を教えてもらいながら試行錯誤と練習を繰り返し、使い方を習得していきます。習得までには個人差がありますが、子どもが「こうかな?」「こうやってみよう」と自分で色々やってみる。そうすることで指先が器用になり、箸をうまく操ることができるようになります。周りの過剰な応援や叱咤激励はあまり必要ないのかもしれません。集中力がある子どもに関していえば、根気よくずっとチャレンジしようとするので、そういう時は周りの声なんて耳に入ってこないのですから。
かといって、子どもが1人でうまく箸を使いこなせるようになるまでは、大人は根気よく付き合っていかなければいけません。口は出さなくても目を離してはいけないからです。実はこれが一番難しい子どもへの接し方なんじゃないかなあと最近思うんですよ。過剰でもなく放任でもなく、その子どもにとってのちょうどいいところ。
これは、相当意識しないとなかなかできることじゃないんです。どんな場面でも、これがうまくできる親御さんには本当に頭が下がります。
意識して、我慢して、でも言いたくて、ついいらぬ助け船を出してしまう。そして後悔。子育てってたいていその繰り返しです。子どもが成人に近づいてきた私の子育てでさえ、まだそんな感じのところがありますから…。
少し話がそれてしまったので、本題に戻りましょう。
 

〇スプーンから箸へ移行するタイミングはいつ?

スプーンから箸への移行は、一般的には3歳頃といわれています。
しかし、まだまだ上手に使うことができないためチャレンジ期間と捉えてあげましょう。
移行というよりは、親御さんには「スプーンと平行して使っていく」という意識でいてほしいなと思います。
「スプーンがいいと言って、後戻りしてしまうんじゃないか?」そんな心配もありますね。箸で食事をするということは、子どもにとっても目に見える成長の証であり、大好きな「大人の模倣」です。子どもは、自分のために用意してもらったお気に入りの箸を使って食事をすることが喜びであり、自慢であり、飛び上がるほど嬉しいことなのです。
そんな気持ちを阻害しないように、大人は自然に、励まし見守り、頑張りを褒めてあげ
たいですね。

〇こんな風にスプーンを持てるようになったら、箸の準備を!
 
イラスト①
 
スプーンを握っている子どもの手を見てみてください。お子さんはスプーンを握った時、イラスト①のように親指が出ていますか?このようにスプーンを持つことができ、大人が食事の介助をあまりすることなく1人である程度上手に食事ができていたら、スプーンを下から握って持つように介助しながら、箸も並行して食事をすることをすすめてみましょう。初めは上手く持てなくてもイラスト②のように親指が外に向いているので、箸の3点持ちがムーズにできるようになります。
 
イラスト②
 
反対に3歳を過ぎてもイラスト③のようにスプーンを持っていたら、親指を出して持つようにすすめてみましょう。
 
イラスト③
 
もしこのまま箸を持ってしまうと、イラスト④のように「握り箸」の癖がつき、3点持ちができるようになるまでに時間がかかってしまいます。
 
イラスト④
 
 
○スプーンとの二刀流 箸は短い時間からスタート

お箸で食事をするといっても、カレーやチャーハンなどをお箸で食べるのは難しいですし、果物などはフォークでいただくのがマナーですよね。
そういったことを子どもたちが知って、スプーンやフォークを使うことは「あかちゃんに戻ったわけじゃない」と伝えてあげるとスムーズに箸へ移行できるのではないかなと思います。

 
最初は箸を使って食べはじめ、難しそうにしていたらスプーンに持ち替える。そして慣れてきたら箸の時間を少しずつ伸ばしていきましょう。そしてここでも、「約束」です。箸で遊び始めたら、叱らなくてもいいのですぐにスプーンに持ち替えましょう。遊び始めるということは、箸が難しくなったか、もう食べたくないかのどちらかです。親御さんはそれを見極めて、けじめをもって接してあげてほしいと思います。
チャレンジの段階ですから、見守る側も焦らずイライラも不要です。「できた」か「できない」よりも「頑張り」をしっかり心にとめてあげてほしいと思います。
 
 
〇箸は安全に使いましょう
 
例えば、スプーンやフォークも使い方を間違えると凶器になります。
実際に、それらを口にくわえたまま立ち歩いていて転倒し、痛ましい事故につながるケースはたくさんあります。なおさら箸は先が細くとがって、かつ、2本がバラバラに動きます。子どもがおふざけの延長で箸を人の顔に向ける行為なども本当によくあることなんです。
ですから、箸を持ったらまず「約束」をしましょう。
・箸は必ず片手で1対を持つ(両手で1本ずつばらばらに持たない)
・箸の先を人の顔に向けない
・箸を口にくわえない
箸のマナーでいうとまだまだたくさんありますが、箸を楽しく練習できるように、まずはこの3つを約束してほしいと思います。
 
 
〇トレーニング用箸について
 
箸の持ち方をどうやって教えればいいのかわからない親御さんはたくさんいらっしゃると思います。トレーニング用の箸は指を置く位置が決まっているので、それに指をはめるような感覚で持てばいいのでとてもラクなのですが、この箸に慣れてしまうと通常の箸が扱いにくいということが起こるのです。実際に、家庭でトレーニング用の箸を使っている子どもが、保育園の給食では通常の箸が使えず苦労するという状況をたくさん見てきました。だから、少し難しいけれど初めから通常の箸を練習するほうが案外早く習得できると感じています。
しかし、先にも書きましたが、子どもが新しいことを始める時って不安や心配がたくさんつきまとうし、約束事もしないといけないし…親御さんの気持ちがザワザワしてしまいますよね。基本的には子どもを取り巻く環境や家族の生活スタイルに合ったように選んでいただいていいと思います。ただ、私の経験ではあまりおすすめできないなというところです。
 

〇食材は箸でつかみやすい大きさに配慮を!

初めは1品でいいので、箸でつかみやすいものを意識して用意してあげましょう。成功体験は子どものやる気を高めます。小さすぎてもつかむのが難しいですし、大きいと箸で刺してしまいます。つるつる逃げてしまわないで、しっかりつかめるもの。私の経験では、子どもはサツマイモやカボチャなどのほくほくしたものは上手につかめていたようです。参考にしていただきながら、徐々に形状を変えていってあげましょう。色々経験すると早く上達します。大豆だって上手につかめるようになるんです!
 

箸を使うことで、子ども自身が大きくなった喜びをたくさん感じられるように大人は焦らず見守ってあげましょう。そして、箸で食事をすることは気持ちの面で「お箸でたべたい!」という食欲増進につながります。心も体もしっかりと成長してほしいなと思います。
 
 
【今月のおすすめ絵本】
『おいしいおと』三宮麻由子 文/ふくしまあきえ 絵/福音館書店
 
 
【あらすじ】
ある日の夕食をきりとったようなほっこりした場面から始まります。
一汁三菜のバランスのとれたメニューは健康的で豊かな気持ちになりますね。
それぞれの食材が持つ食感をおいしそうに表現していますから、咀嚼音を楽しみながらぜひ食欲を増進させましょう!
 
【読み方アドバイス】
箸で食べるものがあったり、スプーンで食べるものがあったりすることも気づかせてあげましょう。
ピララルッ リョリュ リョリュ リョリュ・・・何の食べ物の咀嚼音かわかりますか?
こんなふうに、絵を見ないで咀嚼音だけでイメージできるように、読んであげるのも楽しいので、正解が出るように上手に読んであげましょう。
2歳から。
 
 

 
 
宮本 陽子(みやもと ようこ)
Kidsコンシェルジュ
保育科卒業。保育士として広島市の保育園に勤務。
21年勤続の後、保育士時代に毎日読み聞かせをして培った絵本の知識を、リアルタイムに子どもたちそして親たちへ伝えられたらと思い、2017年広島 蔦屋書店に入社。入社してからも「へいじつのよみきかせ」で平日は毎日1日2回、ほぼ毎日絵本を読んでいる。
「0歳から就学前の子どもたちの好きな絵本」、「親が子どもにぜひ読んであげてほしい絵本」、「おとなの気持ちを癒す絵本等」等、多様な児童書というジャンルのなかでも特に「絵本」が持つ魅力を提案し続けている。
 
 

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