へいじつのよみきかせ〜親と子の時間〜「新しい環境にはやく慣れるためには?」

 
Kidsコンシェルジュが提案する絵本を軸とした親と子の過ごし方。
今回は「新しい環境にはやく慣れるためには?」をテーマにお送りします
 
 
ひと雨ごとに温かくなっていくこの時期。春はもうすぐそこに来ています。
入園、入学、進級ともうすぐ忙しくなるわと考えていらっしゃるでしょうか?
環境を整えたり、必要なものを準備したりして物理的にも大変ですが、心の準備という精神的な部分での忙しさも覆いかぶさるようにやってきますね。
お子さんが初めての集団生活に臨むときや、新しいクラスに進級したり習い事を始めたりするとき、子どもの心はどんなふうに揺れ動くのでしょう。期待と喜びでいっぱいでしょうか。不安がいりまじっているかもしれません。
こんなふうに、様々な気持ちで新しいスタートをきる子どもたちですが、第一歩は不安でいっぱいで泣きじゃくる子もいるでしょう。恥ずかしくて1言も声を出すことができない子どももいます。たいていの子どもは少しずつ慣れてきて、笑顔が出はじめるのですが、もしわが子がいつまでも環境に慣れることができないような状態だったとしたら…それは仕事が手につかないほど心配になってしまいますよね。
早いうちに子どもがその壁を乗り越えるために、親ができることって何でしょうか?
手とり足とり、子どもに「こうするんよ」「ああするんよ」と伝えることでしょうか。それとも子ども自身に考えてもらうために、少し突きすのがいいのでしょうか。
子どもが新しい環境に足を踏み入れるときに一番必要なことは、「親子の絆」だと私はいつも思っています。普段お子さんとどんなふうにかかわっておられるでしょうか?
 
保育園では、4月は新入園児さんがたくさん泣きます。いつもならお家の人と一緒にいるのに急に知らないところに連れて来られて、お家の人は帰ってしまうし、知らない保育士に知らない友達に囲まれてそれは不安でしょう。子どもはお家の人に会いたくて泣くのですが、だんだんと何時間かすれば迎えに来てくれることを知ります。そして、次の日もやっぱりまた泣くのですが、待っていたら同じ方向から大好きなお家の人が迎えに来てくれることを、理解して泣きます。それから何日か経つと様子がわかってきて、自分と同じくらいの子どもが園で楽しそうに遊んでいることに気づき、保育士に抱っこされながらも少しずつ泣かないで過ごす時間が増えていくのです。
この過程がスムーズにいけばいいのですが、そんな子どもばかりではありません。ずっと泣き止まなかったり、お部屋に入れなかったり、ありったけの抵抗をしてくれる子どももたくさんいるのです。
子どもにとって気持ちの繋がった存在がいないということは、いつも不安な表情で気持ちが不安定な状態であるということ。どんなに「大丈夫よ」「頑張って」と言われても安心できるわけがないのです。しかし子どもは適応能力に優れていますから、子ども同士ってすぐに仲良くなりますね。本当にうらやましい特技です。だからといって「うちの子は大丈夫」と子どもの気持ちを軽んじてしまってはいけません。子どもが保育園、幼稚園などのお家の人と離れた場所でも頑張ることができるのは、その頑張りを「がんばったね」と抱きしめてくれるお家の人がいるから、親子の絆があるからなのです。「友達がたくさんいて楽しいから」は、新しい環境にすっかり慣れた子どもにとって居心地の良い場所になって初めて感じることなのです。
 
ここで、子どもとの絆を深めるために意識してみるといいと思うことを4つあげてみました。
 
子どもの話をきちんと「聞く」
なんでも容認するということではありません。子どもが、保育園や幼稚園、小学校であったことを伝えたい!ただその気持ちを受け止めてください。アドバイスはいらないのです。だってこちらの思いを子どもの話にかぶせると、子どもは話す気が失せてしまうかもしれません。ただ話を聞いてくれる人というのは、子どもにとってどんな時も味方でいてくれる存在なのです。
 
子どもの「甘えられる場所」になる
親は、子どもに社会性が身につくよう、時には一人でやってみたり、考えられるような課題を与えたり、失敗を経験させることも必要なことと考えます。子どもに何も経験させないまま社会に飛び込んでいきなさいなんて怖いこと、私にはできませんでした。だから、少し?いやだいぶ厳しくしたかなと思います。それが子育ての責任だと勝手に思っていました。それは間違いではなかったと今でも思っていますが、子どもが失敗したり落ち込んだりした時に、抱きしめることができていたかなと振り返って今、思うのです。
子どもが小さいときはぎゅっと抱きしめてあげる機会って多いけれど、中学生、高校生くらいになるとなかなかお互い恥ずかしくなりますからね。でも、気持ちの甘えられる場所は子どもがいくつになっても必要な場所ですから、なくさないでいてあげてほしいのです。
 
子どもに「共感」する
たとえば、子どもが転んで痛くて泣いています。あなたはどんなふうに声をかけますか?
「泣かんのんよ」「痛くない、痛くない」「気を付けんからよ」
これらはどれも不正解です。否定はしないでください。
転んでしまって痛くて泣いているという気持ちを子どもと共感することが大切。
「痛かったね」
最初の声かけはぜひこうであってほしいと思います。どんなに小さい子どもでも気持ちをわかってくれる人がいることで安心できます。けがは痛くても、心の痛みは少し癒されます。
「泣きたいね」「悲しいね」など子どもが感じている気持ちをそのまま言葉にしたり「大丈夫?」「まだ遊べる?少し休憩する?」など意思を確認できるような言葉をかけてあげてほしいと思います。
 
子どもとできるだけ「一緒」に過ごす
大好きなわが子といつもべったりくっついていたいのですが、そういうことではないのです。
普段はお仕事でいそがしいお家の方もいらっしゃいます。休みの日も普段できないことをまとめて片付けてしまいたい気持ちも大いにわかります。じゃあ、子どもとの時間はいつ作ったらいいの?と困ってしまいますね。1日は24時間、誰にでも平等に与えられています。だからそんなに焦らないで。そして忙しいときは、特別な何かをする必要はまったくないのです。普段の生活の中で「子どもが遊んでいる間に」ではなく、一緒に掃除をしたり、一緒に買い出しにでかけたり、一緒に犬の散歩に行ったりそんな他愛もないことを「一緒」にするだけでいいのです。
一緒にいると、子どもが「こんなことができるようになったんだ」「もうこんな言葉が使えるようになったんだ」など発見がたくさんできるでしょう?同時に子どもも親のことをよく見ているんです。子どもは親が自分と一緒にいてくれること、大切に思ってくれていることなどを普段の生活の中で感じとっていますから、親子が同じ気持ちを共有できるような経験がたくさんできるといいなと思います。
こんなふうに、子どもは「大切にされている」ことを感じることではじめて自分に自信を持って一人でも前にすすむことができます。そこに親子の絆があるから、不安なことがあっても勇気を持てる、ぎゅっと抱きしめて受け止めてくれる人がいるから頑張ることができるんです。
常に子どもの気持ちを受け止める姿勢をぜひ忘れないでいてほしいと思います。何度も言うようですが、それはわがままをすべて受け入れることとは違います。そこの部分の見極めも、一緒にいるからこそできることだと思うのです。
 
子どもを「大丈夫だよ」と安心して新しい環境へ送り出してあげるためにも、ぜひ今日から日ごろの親子のかかわり方について振り返ってみていただけたら嬉しいです。
 
 
【おすすめ絵本】
『パパとママのたからもの』
マクブラットニィ 作、アニタ ジェラーム  絵、小川仁央 訳/評論社
4歳~
 
 
[あらすじ]
同じ日にうまれた3匹のこぐまたちは、パパとママに「誰がいちばんかわいいの?」と質問します。パパとママはそれぞれのこぐまたちに、とびきりの言葉で愛を伝えるのです。
安心したこぐまたちの表情を見ていると、親子の絆の深さがひしひしと伝わってくるようです。

 
 
 

 
 
宮本 陽子(みやもと ようこ)
Kidsコンシェルジュ
保育科卒業。保育士として広島市の保育園に勤務。
21年勤続の後、保育士時代に毎日読み聞かせをして培った絵本の知識を、リアルタイムに子どもたちそして親たちへ伝えられたらと思い、2017年広島 蔦屋書店に入社。入社してからも「へいじつのよみきかせ」で平日は毎日1日2回、ほぼ毎日絵本を読んでいる。
「0歳から就学前の子どもたちの好きな絵本」、「親が子どもにぜひ読んであげてほしい絵本」、「おとなの気持ちを癒す絵本等」等、多様な児童書というジャンルのなかでも特に「絵本」が持つ魅力を提案し続けている。
 
 
 
 

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