へいじつのよみきかせ〜親と子の時間〜「子どもの主体性って?」

 
Kidsコンシェルジュが提案する絵本を軸とした親と子の過ごし方。
今回は「子どもの主体性って?」をテーマにお送りします。
 
 
桜が開花し、つくしや虫たちが土から顔を出しはじめました。春の陽気がとても気持ちよく、お出かけするにもよい季節となりましたね。
さて、今回は、「子どもの主体性」についてお話したいと思います。
 
子どもには人権があります。私たちと同じように1人の人間ですからもちろんです。
しかし、同時に子どもは大人が守るべき存在でもあります。大人に比べると身体的にも社会的にも未熟なところがまだたくさんあるからです。
ひと昔前、子どもは大人の思うように愛情深く育てられていました。悪く言えば子どもは自分の意思で決められることが今ほど多くはなかったでしょう。しかし、平成が終わり令和の世の中になると大人たちの考え方も少しずつ変わってきました。「子どもの主体性を尊重しよう」という考え方です。子どもはたくさんの取り巻きの中で生きています。子育ては保育園小学校、家庭、地域というコミュニティーの中で行われるのが理想ですから、大人もふくめた色々な人間関係の中で子どもは経験を積んで成長していきます。そういう意味では大人が子どもの主体性に注目し始めたということは、これからの将来を担う子どもたちが尊重される世の中になるためのさらなる1歩を踏み出したといえるでしょう。
しかしそれは、なんでもかんでも子どもが決めるということでも、好きなようにできるということでもありません。子どもの主体性は、大人の見守りもしくは土台の上に成り立つということを忘れてはいけないと思うのです。
 
保育園での5歳児クラスの話です。園庭にあるジャングルジムの遊び方のルールについて、子どもたちの主体性を尊重して決めることになりました。保育園では、これまでは雨上がりなどの滑りやすい状態の日は、長靴でのぼることを禁止していました。理由は、長靴は脱げやすいので足を滑らせてけがをしないようにと安全性を考えてのことです。しかし、いったんすべてをフラットにして、1からジャングルジムで遊ぶ時のルールを子どもたちで決めていくことになりました。その結果、たくさんの良い意見が出てきましたが長靴を履いていてもジャングルジムで遊べることになったのです。しかし、安全性の面でいうと疑問がのこりませんか?その園はいったん子どもたちの決めたことを尊重しようと、そのルールでスタートすることになったのです。
みなさんは、このことについてどんなふうに思われるでしょうか?
けがをしなければいいような気もします。人数制限もお互いが譲り合えば問題がないようにも感じます。
色々なご意見があると思いますが…
私はこんなふうに思いました。
万が一けがをした場合、どこに原因と責任を追及すればいいのでしょうか?子どもにそれを追うことはできないのです。
子どもの主体性を大事にすることは間違っていません。しかし先にも話しましたが、子どもの主体性は、大人の見守りもしくは土台の上に成り立つということ。大人の経験と知識を土台としたルールを基本としながら、なおかつ子どもの意見も取り入れるということが理想だと思うのです。それでいうと、
・ジャングルジムは長靴ではのぼらない
・人を押したり蹴ったりしない
などの安全面の配慮を前提にして子どもから出た意見を採用すればいいと思うのです。
なんでもかんでもYESになることが主体性を大切にすることと勘違いをしてはいけません。
子どもにも小さな責任(謝罪やけがの手当てなど)は負うことができますが、例えば命にかかわることのような大きなことはやはり大人の力が必要なのですから。
 
ご家庭ではどうでしょうか。
生活習慣や遊びのルールなど、自分のテリトリーでのルールは子どもの思いを優先してあげるといいと思います。1日の生活のスケジュールだったり、自分の部屋の模様替えだったり、宿題をする時間や方法だったりなど。お金がかかるようなことや家族の生活の基盤がゆらぐようなこと、健康が阻害されるようなことなどは自分のことであっても主体性をもって決めることはできません。
好きな物を好きなだけ食べられる、ほしいものは全部買ってもらえるなんてことを容認すると、大変なことになってしましますよね…
子どもが社会性を身につけながら大人へと成長していけるように、子どもが自分で考え判断し行動するための手助けを私たちはしていかなくてはいけません。そのために親である私たちは子どもに何を経験させることが必要なのか(みんなそれぞれ違いますが)を判断することがとても重要になってきます。
私たち大人も、ここぞというときに子どもと接するときには、よく考え言葉を選ばなくてはいけません。子どもは、安心材料を得るために些細なことでも大人に支持を仰ぎたくなるのですが、そこは少し我慢して、「あなたはどう思うの?」と聞き返してあげましょう。すぐに答えを提示して、その通りにしてもらうのが一番ラクで簡単な方法です。でも、いったん立ち止まって自分で考えたことを誰かに伝えることを習慣にしてみませんか?そういったことからも子どもの主体性は家庭の中でも十分高めることができるのです。
 
自分で決めたことは最後までやり遂げる力を、子どもは誰でも持っています。
大人は放任するのではなくぜひそれを手助けをする側にまわってください。何度も言いますが、大人の見守りと土台の上に子どもの主体性は成り立っています。子どもは何歳になってもその瞬間の悩みや感じ方、思いなどがありますから、「〇歳になったからもう大丈夫」ということではないのです。
その瞬間の子どもの心に合った土台を私たち大人は築いてあげる必要があります。
子どもたちが主体性を持った大人へと成長できるように、いろいろな方向から見守っていきましょう。

 
 
【おすすめ絵本】
『こどもかいぎ』
北村 裕花 作/フレーベル館
 
 
 
[あらすじ]
「お母さんにおこられたとき、どうすればいいのか」をテーマに子ども会議がはじまります。子どもたちが主体性をもって話をすすめていくのですが…子どもの発言は自由でおもしろい!みんなが素直に気持ちよく問題を解決していくためには、どうしたらいいのかを考えさせてくれる絵本です。
 
 
 

 
 
宮本 陽子(みやもと ようこ)
Kidsコンシェルジュ
保育科卒業。保育士として広島市の保育園に勤務。
21年勤続の後、保育士時代に毎日読み聞かせをして培った絵本の知識を、リアルタイムに子どもたちそして親たちへ伝えられたらと思い、2017年広島 蔦屋書店に入社。入社してからも「へいじつのよみきかせ」で平日は毎日1日1回、ほぼ毎日絵本を読んでいる。
「0歳から就学前の子どもたちの好きな絵本」、「親が子どもにぜひ読んであげてほしい絵本」、「おとなの気持ちを癒す絵本等」等、多様な児童書というジャンルのなかでも特に「絵本」が持つ魅力を提案し続けている。
 

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